理科の時間で「子どもが授業に集中する」ために必要なたった1つのこと【理科の壺】
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![【理科の壺】理科の時間で「子どもが授業に集中する」ために必要なたった1つのこと
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理科の授業をしていて、子どもが「集中できていないな」と感じたことはないでしょうか。また、子どもに十分に伝えたつもりでも、実験を行う時間になったら指示が伝わっていなかったということはないでしょうか。今回は子どもが理科の授業に集中する指導の工夫についてです。優秀な先生たちの、ツボをおさえた指導法や指導アイデア。今回はどのような “ツボ” が見られるでしょうか?
執筆/北海道公立小学校主幹教諭・加藤久貴
連載監修/國學院大學人間開発学部教授・寺本貴啓
どれだけ十分な授業の準備をしていても、大切なことを話していても、子どもが話を聞いていなければ、十分な資質・能力は育成されません。また、思わぬ事故などの危険性も高まり、安全な学習環境とも言えません。理科の学習において、「子どもが授業に集中する」状態を持続させるにはどのようなことに気をつけたらよいでしょうか。
まずは、理科室の形状を再度確認しましょう。多くの場合、理科室は教室よりも面積が広く、縦長になっていることが多いです。広いということはそれだけ、教師の声が届きにくいということです。だからと言って、声を大きくしたらよいのかというとそうではありません。声が大きくても小さくても話を聞かない子は聞かないからです。
また、理科室は多くの場合、1つの大きな机に数人がまとまって座ります。当然友達との距離が近く、顔を向き合わせやすい状態となります。そうすると、ついつい授業と関係のない話を始めてしまうこともあります。このように理科室は、通常の教室とは違い、集中力の持続が教室よりも難しい環境にあるのです。専科の先生はこの物理的な違いを理解して学習を進める必要があります。
「通常の教室」
「理科室」
それでは、このような状況において子どもが集中できるようにする方法を紹介します。それは、
「子どもの席を移動させる」
ということです。簡単に言うと、物理的に距離を近づけるのです。下の写真をご覧ください。
![授業の様子](https://kyoiku.sho.jp/wp-content/uploads/2025/01/0c7db65fd741f2840d46a48d9be01b1b.jpg)
黒板の前に子どもたちが集まっています。グループの実験結果を交流しながらどのような結果が言えるかを全体で考察しています。子どもから見て教師との距離や実験結果の表との距離がかなり近くなっていることがわかります。距離が近いことから自然と教師や子ども同士の話が耳に入っていくようになります。また、他のグループの実験の結果などをじっくりと見比べたり、全体での話合いでは仲間の意見に耳を傾けたりしやすくなります。
この指導のやり方は簡単です。たった一言、
「椅子をもって集まってください」
と声をかけるだけでいいのです。本当に簡単なことではありますが、指導にはいくつか注意が必要です。
① 椅子を両手で運ぶこと
周囲には、実験器具があったり、移動中友達に椅子が当たってけがをさせたりすることを防ぐためです。細かいことですが、安心・安全に授業を進めるためには徹底させておくことが大切です。
② 素早く集合させること
集まるだけで時間がかかりすぎてしまうことは、肝心な学習時間が短くなるため避けたいものです。筆者の場合は、30秒を目安にしています。それ以上かかる場合はやり直しをしています。教師の指示が通らない状態イコール集中力が欠けている状態では、学習中の事故が起きやすいからと理由を端的に説明します。
③ 集合させる場面を限定させること
1時間の中で何度も集合と解散を繰り返すのは子どもも嫌がってしまいます。また、長時間集合した状態が続くのも、逆に集中力が途切れてしまいます。そこで、いくつかの場面に限定して集合させます。たとえば、
・単元の導入場面における事象の提示
・個々の問題から予想や仮説を発想し、交流する場面
・注意が必要な実験の演示をする場面
・考察場面における全体での話合いをする場面
などです。学習内容に応じて指導の重点を決め、場面を限定させて集合させることで、集中した学習活動につなげます。
前述しましたが、理科室は児童と教師の間隔が広く、全体に指示が行き届きにくいです。今回の指示の他にも、集中を促す方法はあります。教師の立ち位置を変化させながら話す、後ろの子どもにも見える板書や掲示をする、説明や指示の文言を厳選するなどいろいろありますが、日々の授業の中で常に「子どもが集中できているか」を意識しておくとよいでしょう。
まとめ
子どもの目線を教師や子ども同士、あるいは観察、実験の対象に向けることは理科において重要なことです。集中力が途切れやすい理科室の環境においても場の設定を含めた教師の声掛けの工夫次第で、落ち着いた状態で学習を進めることができるようになります。
定着するまでは粘り強く取り組むことが必要ですが、指導を継続することで集合が当たり前になります。
そして、子どもが集中して学習し、学びを深めた際は、「集合してよかった」「学習が深まってよかった」ことを十分に評価し、活動することのよさを実感させてあげられるといいですね。
![黒板前に集合する子供たち](https://kyoiku.sho.jp/wp-content/uploads/2025/01/2dbe063550f613455a4e45b2127fd47e.jpg)
イラスト/難波孝
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![加藤久貴先生](https://kyoiku.sho.jp/wp-content/uploads/2022/06/6d2842d619ec14e3025686d0a3df8124.jpg)
<執筆者プロフィール>
加藤久貴●かとう・ひさき 北海道公立学校主幹教諭
北海道教育委員会の学力向上推進事業による授業改善推進チームとして、市内の全小学校を訪問し、ICT端末を活用した授業づくりを推進している。
共著に「板書でみる全単元・全時間の授業のすべて理科5年」(東洋館出版社)、「これからはじめる “GIGA” 全学年×1人1台端末×活用事例小学校理科3・4年」(日本標準)等
![寺本貴啓教授](https://kyoiku.sho.jp/wp-content/uploads/2023/07/d51bb7b62f0d7f12315125a69d5297a6.jpg)
<著者プロフィール>
寺本貴啓●てらもと・たかひろ 國學院大學人間開発学部 教授 博士(教育学)。小学校、中学校教諭を経て、広島大学大学院で学び現職。小学校理科の全国学力・学習状況調査問題作成・分析委員、学習指導要領実施状況調査問題作成委員、教科書の編集委員、NHK理科番組委員などを経験し、小学校理科の教師の指導法と子どもの学習理解、学習評価、ICT端末を活用した指導など、授業者に寄与できるような研究を中心に進めている。