小5国語科「もう一つの物語」全時間の板書&指導アイデア

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国語科 令和6年度版 新教材を活用した授業づくりー文部科学省教科調査官監修の実践提案ー
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文部科学省教科調査官監修「教科指導のヒントとアイデア」
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文部科学省教科調査官の監修のもと、令和6年度からの新教材、小5国語科「もう一つの物語」(光村図書)の全時間の板書例、教師の発問、想定される児童の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。

小五 国語科 教材名:もう一つの物語(光村図書・国語 五)

監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/東京都西東京市立田無小学校校長・前田 元
執筆/東京都板橋区立志村第四小学校・髙桑美幸

1. 単元で身に付けたい資質・能力

本単元は、読み手を意識しながら表現を工夫し、何を書きたいかを明確に意識しながら、文章構成を考えて書く力を育てることをねらいます。

この学習までに、児童は2年下巻「お話のさくしゃになろう」、3年下巻「四まいの絵を使って」「たから島のぼうけん」において、創作文の構成について基本的なものを学んできています。これらの経験を生かしながら、本単元では、構成の学習に重点を置いた指導を展開していくことが期待されます。
また、創作文を書く活動ながら、既存の物語を活用するというルールを設けることで、物語という文種やその構成面の特徴について理解を深めつつ、楽しみながら取り組むことができます。

相手にどのように感じてほしいのか、目的意識を明確にしたり、どんな相手に読んでほしいのかという相手意識をもったりすることを大切にしながら、創作文を書くことを目指します。

また、創作文を書くだけではなく、完成した創作文を読み合い、効果的だった工夫についての気付きを交流します。これにより、自分の考えが相手に伝わったという達成感を味わうとともに、身に付けた力を自覚することができます。自分の文章のよいところを見つけ、次への書く意欲へとつなげたい学習材です。

2. 単元の評価規準

単元の評価規準

3. 言語活動とその特徴

本単元では、「B書くこと」の言語活動「イ短歌や俳句をつくるなど、感じたことや想像したことを書く活動」として、創作文を書く活動を設定します。創作文を書くとはいっても、前述の通り、既に存在する物語に材を取り、新しく「もう一つの物語」を作ることを目指します。

児童は書き換えの基にする物語を選ぶ際、そのどこに魅力や面白さを感じるのかを分析する必要があります。それから、物語の設定を押さえてどこを変えるかを検討したり、教科書にあるような〔①始まり〕〔②出来事(事件)が起こる〕〔③出来事(事件)が解決する〕〔④結末〕という基本的な構成に整理して捉え直したりして、どのような工夫をすれば読み手がさらに楽しんでくれるかを考えていきます。ここでは既存の物語の設定や展開を生かしつつ、構成について考える過程に注力していくことをねらうのですが、児童の実態によっては新たな発想をもつことが難しい場合があるかもしれません。教師からの適切な支援だけでなく、児童同士の交流を効果的に行うことで、自由で豊かな発想を思い浮かべることができる学習環境が整うことを理想としたいところです。

また、創作文を書き上げたとき、どのように活用するかを児童と一緒に考えておくことも、児童の書く意欲を持続させる上で効果的です。作品として表紙を付けて図書室に置かせてもらったり、他学級や他学年の児童に読んでもらったりする活動を設定しておくことで、単元全体の見通しをもちながら最後まで粘り強く学習することができるようにします。

なお、本単元「もう一つの物語」は、指導事項イ【構成の検討】に重点を置いた学習です。モチーフとする原作の世界観をむやみに否定することのないよう、指導には配慮しながら進めましょう。
また、著作権等の観点から、出来上がった作品を公開する範囲や対象にも十分ご留意ください。

4. 指導のアイデア

創作文を書く学習は、児童の読書習慣や語彙の量によって、能力面だけでなく意欲面においても大きく個人差の出る学習であるといえます。高学年であるという実態も踏まえると、単元との出合いを大切にし、その後の書く意欲につなげていきたいところです。
そこで、本単元では文例を初めに提示することを提案します。これまでの物語を基点に視野を広げ、児童の「面白そう」「書いてみたい」といった思いを引き出すことがねらいです。可能であれば、教師自身が創作文を書き、教材研究をするとよいでしょう。そうすることで、指導事項を確かめたり児童がつまずきそうなところを見つけたりすることができます。文例は拡大して板書に活用できるよう準備しておき、授業の中で確かめたことを書き込んだ上で教室掲示をしておくとよいでしょう。
また、複数の文例を提示することも効果的です。複数の文例と出合うことで、自分はこのパターンで書いてみようかな、と児童が考えをもつことの手がかりとなることもあります。今回は、児童が知っている作品として「ごんぎつね」を取り上げ、設定や構成を変えたものとして活用していきます。

本単元は、どのような創作文であれば読み手がより楽しく読むことができるのか、相手意識や目的意識を常にもちながら学習を進める必要があります。書くことの領域は学習過程が多く、児童の意欲を最後まで維持できるような授業プランを提示できているかが大きな鍵となります。

まずは、単元のゴールを児童と共に設定し、課題解決的な流れを意識した学習計画として学級全体で共有することが重要です。教師が画一的に与えるのではなく、児童自身が柔軟に学び方を選ぶことができるような配慮をすることも大切です。

書くことの学習は、どうしても個の作業となりがちです。しかし、トリオやグループ等、対話を生かすことのできる学習形態を工夫することで、児童は様々な気付きを得ることができます。教師は常に個々の学習状況を把握しておく必要がありますが、適切な場面で交流活動を設定することで、児童の変容を促すことをねらいます。そういった時間や場を設け、児童が安心して書くことのできる雰囲気を醸成することも大切なポイントです。

5. 単元の展開(全6時間扱い)

 単元名:「読む人を意識して構成を考え、物語を書こう」

【主な学習活動】
<単元に入る前>
・学級文庫や図書室を活用し、昔話や物語に親しむ。

・第一次(第1時
① これまでに読んだことのある昔話や物語を想起する。
② 教師の文例を読み、課題を捉える。
③ 単元のめあてを確認し、学習の見通しをもつ。

・第二次(第2時
④ 文例を読み、どこが書き換えられているのかを確かめる。
⑤ 書き換えたい物語を選び、新しい設定を決める。
第3時
⑥ 文例から構成を整理し、そのよさを見つける。
⑦ 自分の物語の構成を考える。
第4時
⑧ 設定や構成を基に、物語の下書きを書く。
第5時
⑨ 友達と読み合ったり自分で読み返したりして、推敲をする。
⑩ 物語を清書する。

・第三次(第6時
⑪ 物語を読んで感想を伝え合い、自分の文章のよさを見つける。
⑫ 単元の学習を振り返る。

6. 全時間の板書例・ワークシート例と指導アイデア

単元に入る前のアイデア

有名な昔話や物語を集めて、教室に学級文庫として用意しておきましょう。あまり長いものではなく、5~10分程度で読めるような短いものが好ましいでしょう。
また、教科書教材で読む機会のある「スイミー」「ごんぎつね」「お手紙」のような物語について再読することができるように、絵本等を用意して環境を整えておくと、本単元への導入がスムーズになります。

【1時間目の板書例 】

1時間目の板書例

イラスト/横井智美

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