【校内研アップデート#04】BGMあり! ◯◯あり!? 笑顔あふれるワイワイ研修

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従来の固定観念を覆す新しい校内研究会「北フェス」で話題となった埼玉県公立小学校の花岡隼佑先生が、教師全員が笑顔になれる楽しい校内研のあり方を提案します。フラットな対話と自発的な参加を重視した実践的なアイデアを、若手からベテランまですべての教師向けにわかりやすく解説します。

執筆/埼玉県公立小学校教諭・花岡隼佑

BGMと対話であふれるワイワイ研修

埼玉県の公立小学校で勤務している花岡隼佑(はなおか・しゅんすけ)です。

さて、連載4回目となった今回のテーマは、「BGMと対話であふれるワイワイ研修」です。今回は研修についての提案となります。

Before:固くてシーン…とした「一方通行型」の研修

学校には、初任者研修や年次研修といった法定研修、市内の先生が一堂に会する一斉研修など、様々な種類の研修があります。ここでは、内容や時間、場所などの決定権が校内に委ねられているもの=校内研修についてお話ししていきます。

さて、みなさんにとって校内研修は、楽しみな時間でしょうか。

今でこそ私は「ワクワクする時間!」と胸を張って答えることができますが、昔は「忙しいときに限って出現する嫌なもの」でした。嫌だった理由はいくつかあるのですが、一番はこの画像に詰まっています。

Canvaの素材検索で『研修』と打ち込んで出てくる上位6つの画像
検索で出てくるイラスト素材『研修』

これ、何かというと「Canvaの素材検索で『研修』と打ち込んで出てくる上位6つの画像」です。どうでしょう、全部似ていますよね。

一人が話している
✔その他の参加者は聞いている
✔お決まりの会場設営

面白いように共通しています。誤解のないように言い加えておきますが、私は素材のラインナップが悪い!と言いたいわけではありません。世の中には「研修とはこういうものだ」というステレオタイプがあまりにも蔓延していることに問題意識をもっているのです。

私が研修に対して良い思いをもっていなかったのは、とにかく「受動的で一方通行の時間」があまりにも長かったからです。また、研修会場というと、全員が同じ方向を向いているというのがお決まりのセッティングで、漂っている空気もどこか固くてシーンとしていました。

拙著『ごく普通の公立小学校が校内研究の常識を変えてみた(明治図書)』をともに書いた葛原さんは、研修について文中でこう語っています。

 私が初任者だった頃のエピソードを紹介します。毎日遅くまで残り、疲労困憊で日々を何とか生き延びていた私にとって、基本的にこのような研修は意識を失わないように全力で耐える場となっていました。初任者の時に、隣の先生に「白目むいてたよ」と笑われることもしばしば…。この「白目をむいても耐える時間」本当にしんどいんです(笑)。

 「研修なんだから寝てはいけない!」という思いとは裏腹に、内容が頭に入っていかず薄れゆく意識…。でも寝てはいけない…。あぁ…(白目)。ある日、勤務校の管理職に連絡が入りました。「葛原が研修で寝ているのでご指導お願いします」。

葛原順也・花岡隼佑著.『ごく普通の公立小学校が、校内研究の常識を変えてみた』明治図書出版(2024年7月)

確かに、私も何度となく研修中に“白目”にならないよう耐えた経験があります。

一方で、言うまでもなく研修は我々教員のスキルアップのためには不可欠なもの——これ、ちょっとした工夫で「眠気なんて生まれない! むしろ、いつもより学びが多かった!」という時間に変えることはできないでしょうか。

有名な話ですが、ラーニングピラミッド(下図参照)によると、従来の研修でよく用いられていた「講義」での学習定着率は、最も低い5%です。

学校に決定権がある研修ならば、もっと多様な場を作ってもよいのではないでしょうか。そして、もっとその場にいる職員がフランクにワイワイ楽しみながら学べる研修の方が、モチベーションとともにスキルも高まるのではないでしょうか。

After:みんなでワイワイ! BGM&お菓子あり! 対話があふれる研修

これは、本校で行われた研修中の様子です。持っているのは、ペンでもノートでもありません。お菓子です。もちろん毎回ではありませんが、本校では外部講師を招かない研修の際には、お菓子や好きな飲み物を率先して持ってきてもらうようにしています。時には、研修担当の方でフリースナックを用意しておくことも。

また、写真では伝わりませんが、会場には必ず季節を感じるようなBGMが流れています

意図的に作られた場

そして注目していただきたいのは、場作りです。本校では、先ほどのイラスト素材のような「全員が同じ方向を向いて一人が前に立って話す」といった一方通行型の研修はゼロです。理由は、以下の3つの思いです。

①参加者全員がインプットとアウトプットができる建付けにしたい!

私がとにかく苦手だった「一方通行型」の研修。もちろん、よさもありますが、本校では年次を問わず、その場にいる全員が自分の考えをシェアできるように「双方型」の研修にシフトしました。新しい情報をゲットするインプットも、自分の情報を聞いてもらうアウトプットも、どちらも大切にしています。

これらの情報共有が活発に行われるためには、場のセッティングにこだわる必要があります。

机はいる? 椅子の距離感は? グループの人数は?……など、その日の内容や目的に合わせて、毎回調整しています。

参加者全員がインプットとアウトプットができる建付けにしたい!

②学年メンバー以外のコミュニティを生みたい!

学校とは、良くも悪くも「学年」というコミュニティで過ごす時間が多いものです。しかし、周りを見渡せば、喉から手が出るほど欲しいお宝(情報)をもった先生はたくさんいます。研修の時間くらい、いつもはなかなか話さない先生からたくさんの情報をゲットできるといいですよね。

そこで、本校ではくじ引きで席を決めることがほとんどです。

また、グループ活動も短い時間で何回もローテーションを回し、とにかく学年メンバー以外とも対話が生まれるように工夫をしています。

学年メンバー以外のコミュニティを生みたい!

③研修を、力を抜いて楽しみながら学べる時間にしたい!

本校の研修では、その日のゴールへとつなげるためのアイスブレイクを必ず取り入れています。「ただ空気が温まればよい」というわけではなく、その日の活動の伏線となるようにしたり、時期を見極めて翌日そのまま教室で使えたりするようなものを選んでいます。

また、メインの活動であっても、力まず学ぶためにゲーミフィケーションの要素を積極的に取り入れています。カードゲームをやったり、サイコロトークを取り入れたり、時にはビンゴ形式で学んだり……。

「教員なんだから、研修に参加するのは当たり前!」という正論を振りかざすのではなく、「先生たちも疲れているし、いろんな事情を抱えて参加しているし……。だから、少しでも楽しみながら学べる時間になればいいな!」という思いで研修をデザインしています。


当初は、とにかく「研修=固くてつまらないもの」というイメージを払拭したい!という担当の願いからスタートしました。そしてこの取り組みには、大きな手応えを感じています。なぜなら、研修会場へと入ってくる先生方の笑顔が増えたからです。「楽しかった!」と言ってもらえる回数も格段に増えました。

「肩の力を抜いて参加していいんだ!」
「カジュアルな空気でも学ぶことができるんだ!」

というポジティブな研修観へと変えることができたと思います。

「静かな空間の中でしか学べない」という固定観念を一度ポイッとして、「飲み物お菓子あり! BGMあり! 笑顔と対話であふれる双方向型の研修」にシフトしてみませんか?


花岡隼佑(はなおか・しゅんすけ)

埼玉県公立小学校教諭。1989年、長野県生まれ。埼玉大学大学院教育学研究科を卒業。現在は蕨市立北小学校に勤務。校内では、研究担当として新たな校内研究の形を推進するとともに、学力向上推進担当としてICTや生成AIの普及に努める。教育コミュニティ「EDUBASE」のクルー。共著に『ごく普通の公立小学校が、校内研究の常識を変えてみた』(明治図書出版)がある。

連載決定! 花岡隼佑先生の「教師みんなが笑顔になる!校内研アップデート」これまでの記事はこちら↓
教師みんなが笑顔になる!校内研アップデート#01|校内研の体質改善
教師みんなが笑顔になる!校内研アップデート#02|校内研究を「自分事」に変える“グループ研究”
●教師みんなが笑顔になる!校内研アップデート#03|まずは実践!試行錯誤から仮説を生み出す「仮説生成型」研究のすすめ

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