小5国語「想像力のスイッチを入れよう」京女式板書の技術
今回の教材は「想像力のスイッチを入れよう」です。この単元の目標は、「『想像力のスイッチ』についての理解を深め、メディアとの関わりについて、友達と考えを伝え合おう」になります。本時は、教科書の「ふかめよう」の段階で「筆者の考える『想像力のスイッチ』とはどのようなことか」について考えます。そのため、文章の叙述の要点をまとめて可視化できるような板書の工夫を紹介します。
監修/元京都女子大学教授
同附属小学校校長・吉永幸司
執筆/京都女子大学附属小学校教頭・砂崎美由紀
教材名 「想像力のスイッチを入れよう」(光村図書出版)
目次
単元の計画(全6時間)
第1次 「想像力のスイッチを入れよう」を読む。
1 「想像力のスイッチを入れよう」を読み、3つのまとまりに分ける。
2 3つのまとまりで、それぞれ述べられている事例と、それに対する筆者の意見を整理する。
3 複数の事例を挙げて説明する効果を考える。
4 筆者の考える「想像力のスイッチ」について考える。
第2次 「もっと読もう」を読む。
5 「もっと読もう」(教科書206ページ)を読んだり、これまでにメディアと関わった経験を思い出したりして、メディアとの関わり方についての自分の考えを文章に書く。
6 書いたものを読み合い、自分の考えに取り入れたい友達の考えを見付ける。
板書の基本
〇授業が始まる前に考えること
教材研究の際に、教科書208ページの「見通しをもとう」を読みます。この単元での目標は「『想像力のスイッチ』についての理解を深め、メディアとの関わりについて、友達と考えを伝え合おう。」です。目標の1つは「事例と筆者の意見との関係を理解すること」。もう1つは「自分の知識や経験と関係付けながら文章を読み、自分の考えをまとめること」です。この2つの目標のそれぞれが、単元の第1次、第2次となります。
第1次では、教材文をしっかり読む力を付けたいと考え、板書を工夫しました。それは、「事例」と「意見」を読み分け、「事例」を挙げて説明することの効果を考えることです。
読み進めるなかで、子供たちは自分の日常によく似た事象があることに気付くことでしょう。それらが第2次と結び付きます。例えば、事実と意見をしっかり区別できなかったことで、トラブルなどに発展したことを思い出す子供もいるでしょう。本文に共感したことや自分の知識や経験をもとに、メディアとの関わりについて考えたことを書きます。そして、その後、共有し合う場を設けます。人間関係を築くことを学ぶ高学年としては「想像力」をもって互いの立場や事実を理解することが求められます。自分の経験と結び付けながら教材文を読むことで、国語で身に付けた力が実生活に生きるようにしたいものです。
紹介する板書は、第4時のものです。各段落の事例、そして文章構成にも目を向け、知りたいことを本文から選び出せるように学習を進めます。題名にもある「想像力のスイッチ」がなぜ必要なのかを、文章の読解と同時に読者に「生きる力として身に付けてほしい」と願う筆者の主張を考えることで、深い学びのある学習へとつながります。
〇板書計画で考えておくこと
板書は、文章の叙述の要点をまとめて可視化できるよう工夫しました。具体的には次の通りです。
1 黒板の上のほうには本文から見付けた言葉を書きます。
2 下のほうには短い言葉や図を書きます。
3 本文には『 』で表されたスイッチとなる言葉が4つあることに着目させ、「4つのスイッチを見つける」という学習の見通しをもてるようにします。
4 学習の終盤には16段落を読みます。スイッチと筆者の意見(主張)を結び付けて考えられるように、後から板書を書き足せるように行間を取りながら書こうと計画しました。
板書のコツ(4/6時間目前半)
板書のコツ①
〇「めあて」を板書し、学習の進め方を確かめる。
「めあて」は〈筆者が考える「想像力のスイッチ」について考える。〉です。ノートに日付とめあてを書いた後、4つのスイッチについて確かめることを伝えます。黒板に、2~3行分ずつ空けて「スイッチ①~④」を板書し、子供たちへも同様に、ノートには3行空けてスイッチ①~④を書くことを指示します。
教科書202~205ページを全員で音読します。そして、「スイッチ①」について全員で考えます。『まだ分からないよね。』の文を見付け、板書します。このように、「文章の中から『 』の言葉を見つける」という学習方法を理解させます。
板書のコツ②
〇1人学習を行う。
本文中に『 』で書かれたところを探す学習を子供たちが理解すると、今度は1人学習です。スイッチ④までを一人一人がノートに書きます。次に、「スイッチ①~④を『〇〇すること』と表すと、どんな言葉になるか」を、文章中の言葉から見付けることを指示します。
スイッチ①では、「結論を急がないこと」という文をみんなで見付けました。同様に、スイッチ②~④では、文中の言葉から見付ける活動に、1人学習やペア学習で取り組みます。見付けた言葉を板書します。
板書のコツ(4/6時間目中盤)
板書のコツ①
〇文章を可視化する。
4つのスイッチについて、さらに可視化することを伝えます。スイッチ①では、「新しい情報」を、数個の〇を描いて表します。スイッチ①を押すと、それらはどう見えるのかを考えさせます。一歩引いて見ると、たくさんの情報があり、まだ分からないことに気付きます。
次に、スイッチ➁を押すと、どう見えるのかを考えさせます。情報が「事実」と「印象」に分けられることに気付きます。「事実」には赤チョークで〇を付け、「印象」は青チョークで×を付けます。色チョークを使うときは、1枚の板書で使う色に統一性をもたせます。
今回は、「事実」や「想像力」といった、「筆者が読者に望むもの」を赤チョークで〇を書くことにしました。反対に、「印象」や「推測」「小さいまど」などは「筆者が選ばないでほしいと考えているもの」として青チョークで×を書きました。
板書のコツ②
〇スイッチ④について可視化する。
スイッチ④では、「明るいスポットライトの周囲」に着目させます。これをノートに図で描くように指示します。メディアがライトを当てたところの周りに暗がりができ、情報の全貌が見えていないことを可視化し、筆者が伝えたい内容を確かめます。
板書のコツ(4/6時間目後半)
板書のコツ①
〇筆者の文章と重ねて読む。
文章の構成を学んだ5年生は、筆者の意見や主張がどこの段落に書かれているかを予想することができます。予想しながら、本文の16段落を読みます。筆者が読者に求めることと求めないことを、選び出すように指示します。ペアで相談してノートにまとめます。
16段落で筆者が書いたことと、スイッチ①~④の中で書かれたことを、重ねて読むことを指示します。ペア学習で取り組みます。ペア学習の後、発表した意見を板書に書きます。この時間には、「小さいまど」とは、「スポットライトで照らされた部分」「新しい情報の〇の一つ一つ」などの考えが出ました。それは、「印象」「推測」などと一緒で、筆者が「筆者が選ばないでほしいと考えているもの」という意見が出ました。子供たちの意見を確かめ、板書しました。
板書のコツ②
〇学習の振り返りは、キーワードを示す。
振り返りは本時の目標である「筆者が考える『想像力のスイッチ』について考える。」をもとに思考過程をまとめることにしました。キーワードの「想像力」「スイッチ」「筆者の主張」をあらためて板書します。キーワードを入れて、自分の学習の振り返りを書くことで、今日、学んだ内容をしっかり意識するように促します。
筆者が挙げた事例に似た経験を少し話し合わせ、自分の経験を筆者のスイッチと結び付けて振り返りを書くとよいことを伝えます。5年生の後半には、学習の振り返りで、今日の学びと自分を重ねて書けるように期待したいものです。
構成/浅原孝子