子どもたちが「問題を見出す」ための理科教材の工夫とは 【理科の壺】

連載
理科の壺/進め!理科道~理科エキスパートが教える、小学校理科の指導法とヒント~

國學院大學人間開発学部教授

寺本貴啓
【理科の壺】
子どもたちが「問題を見出す」ための理科教材の工夫とは 【理科の壺】
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理科の導入場面を考える際は、子ども自身で問題が書けるようにするだけではなく、意欲をもたせるという事も重要です。問題が書けることと、意欲をもつことは別の話なのです。意欲をもたせるためには、教材の工夫が重要になります。授業に繋がりかつ、子どもが意欲をもつ教材です。教科書に載っている教材をそのまま使うことが必ずしもいいわけではありません。問題が大きく変わらなければ変えてもいいのです。今回はその教材の工夫について考えてみましょう。優秀な先生たちの、ツボをおさえた指導法や指導アイデア。今回はどのような “ツボ” が見られるでしょうか?

執筆/宇都宮大学共同教育学部附属小学校教諭・津村 純
連載監修/國學院大學人間開発学部教授・寺本貴啓

「問題の見出し」、先生方はどのように取り組まれていますか? 日常経験や体験活動から問題を見出そうとしても気づきが拡散しすぎてしまったり、子どもたちが必要を感じていなかったりということはありませんか? 子どもたちが問題を見出しやすくするために、教材にひと工夫を加えてみるのはどうでしょう?

工夫① 着目点を明確にできる工夫

問題を見いだすためには、子どもたちに気付いて欲しいポイント、「あれ?」「なんで?」と思ってほしいポイントが各単元であります。

4年生「自然のなかの水のすがた」では、水の蒸発や結露を取り扱います。あった水が自然となくなったり、何もなかった場所に水が現れたりするというものです。子どもたちが水や温度、水の行方に着目して問題を見出せるようにするために、体験活動で結露を使って遊ぶ教材の工夫を紹介します。

金属板を保冷剤で冷やす

金属板に文字や絵を描く

子どもたちにとって結露で遊んだ経験と言えば、冬の窓ガラスや雨の日の車の窓ガラスに絵を描いたことなどでしょう。

この学習場面において、教科書ではプラコップを冷蔵庫で冷やして取り出す・保冷剤をパックに入れて結露を起こすというものが一般的です。今回ご紹介するのは、金属板を保冷剤で冷やす、というひと工夫を加えることで、遊びの要素を取り入れることができるというものです。

保冷剤の上に銅板を置くと、空気中の水分が結露して、金属板に文字や絵が描けます。
その中で、「冷えているから描ける」「水がつくから描ける」といった、保冷材に載せた時と載せていない時の温度や表面の状態の差異点に着目した気づきが生まれます。

どうしてかけるのかな?

かけるときとかけないときの違いは何かな?

水滴が付いている。(表面の水滴に着目)

どうして水滴が出てくるの?

冷やしたら出てきた。(温度に着目)

温度と関係があるのかな? 問題を考えてみよう!

そして、「冷やすと付く水はどこから来たのだろうか?」という問題を子どもたちが見いだすことができます。

工夫② 生活経験と学習をつなげる工夫

生活の中にも子どもたちが「なぜ?」「どうして?」と思えるような種はたくさんあります。その種を教材を通してミクロな視点で見てみることで、子どもたちが調べられるような問題を見出すことができます。

3年生の音の学習では、音が出ているものは震えている・音は震えが伝わることで伝わっているということを学習します。その中で登場するのが糸電話です。糸電話で話をする中で糸の震えで音が伝わっているということを子どもたちは体感的に理解することができます。しかしここで子どもから出てくる疑問が、「なぜ糸で繋がっているわけではないのに生活で音が聞こえるの?」というものです。ここで教材にひと工夫です。

チューブで紙コップをつなぐ

糸のかわりにチューブで紙コップをつなぎ実験をします。この時、チューブを割いてつないだものも用意しておくと、2つのチューブ電話に違いが生まれます。

糸電話はピンとしていないと聞こえないけどチューブ電話はピンとしていなくても伝わる。

チューブ電話で実験する様子
聞こえる時と聞こえない時

チューブ電話は割いていると聞こえない。

という気づきから、

どうして割いていると聞こえないの?

音が逃げる・出ていくから。

音は震えだったよね。何が震えてでていくの?

空気かな?

じゃあ調べてみる問題は何だろう?

このように、教材にひと工夫することで日常の疑問を体験し、目を付けてほしいポイントに気付きやすくすることができます。また、既存の教材を使う上でも、上記のような日常とのつながりや着目点を意識することは大切です。時間がある時にひと工夫、考えることから始めてみましょう!

イラスト/難波孝

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<執筆者プロフィール>
津村 純●つむら・じゅん 宇都宮大学共同教育学部附属小学校教諭/栃小教研宇都宮支部理科支部部会教材調査部長
理科を中心に日々実践研究を行いながら、本学の大学生を対象とした教育実習や大学での講義をはじめとした教員養成に携わるとともに、本県の現職教員を対象として自身・部会員が開発・選定した教材の情報を発信するなど、栃木県内の理科教育の振興に力を注いでいる。


寺本貴啓教授

<著者プロフィール>
寺本貴啓●てらもと・たかひろ 國學院大學人間開発学部 教授 博士(教育学)。小学校、中学校教諭を経て、広島大学大学院で学び現職。小学校理科の全国学力・学習状況調査問題作成・分析委員、学習指導要領実施状況調査問題作成委員、教科書の編集委員、NHK理科番組委員などを経験し、小学校理科の教師の指導法と子どもの学習理解、学習評価、ICT端末を活用した指導など、授業者に寄与できるような研究を中心に進めている。


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