小1国語「くじらぐも」京女式板書の技術
今回の教材は、物語文の「くじらぐも」です。この単元では、「くじらぐもの上で話したことを考え、想像を広げ、子供自身が考えた言葉をかぎを使って書く」ことをめざします。そのため、好きだと思ったところを話題にし、文章のおもしろさを言葉で説明したり、場面の様子を想像したりします。子供たちのこれらの学習活動を支える板書の工夫を紹介します。
監修/元京都女子大学教授
同附属小学校校長・吉永幸司
執筆/京都女子大学附属小学校教諭・松下祐子
教材名 「くじらぐも」(光村図書出版)
目次
単元の計画(全8時間)
- お話を読み、内容の大体を捉える。
- 「いいな」「すきだな」と思うところを見付け、様子を想像する。
- かぎ(「 」)のところをどのように読めばよいかを考え、様子を想像する。
- (※3と同様)
- (※3と同様)
- みんながくじらぐもの上で話したことを考え、想像を広げる。
- 想像したことを伝え合い、自分が考えた言葉をかぎ(「 」)を使って、書く。
- 学習を振り返り、「たいせつなこと」を確認する。
板書の基本
〇教材「くじらぐも」は、1年生の子にとって「こんなことがあったらいいな」と思う世界をお話にしたものです。そのため、子供たちはすぐにお話の中に入ることができ、このお話が大好きになります。親しみやすく、大好きなお話を国語の授業で指導する上で、大切なことが2つあると考えました。1つ目は、お話の内容を楽しむことです。2つ目は、言葉を手がかりにして、「こんなこともあるのだろう」と想像して、言葉をつくることを楽しむことです。
〇「お話を楽しむ」というのは、文章のおもしろさを言葉にして説明できるということです。学習内容としては、物語の場面を考えます。1年生では、「いいな」「すきだな」と思ったところを話題にして、文章のおもしろさを言葉で説明させます。そして、子供たちが「いいな」「すきだな」と思ったところを、黒板いっぱいに書きます。子供たちの中に驚きや共感が広がっていくことを期待して、板書します。
〇「言葉をつくる」というのは、「だれが、いったのか」「だれが、したのか」(主語)を考え、場面の様子を想像することです。お話の中には、主語を省いている文章があります。くじらぐもでは、「あの くじらは、きっと がっこうが すきなんだね。」が、それに当たります。この文について、言葉を手がかりにして主語を考える学習活動を行いました。この学習が、自分で「言葉をつくる」という楽しさにつながるように板書を工夫しました。
板書のコツ(2/8時間目)
板書のコツ①
最初に日付、題名、めあて〈おはなしの「いいな。」「すきだな。」とおもうところをみつけよう。〉を丁寧に板書します。続いて、全文を音読します。そのときに、「いいな。」「すきだな。」と思うところを後で尋ねることを捕捉しておきます。そして、自分の力で読むことを目的に、1人学習を指示します。1人学習の後、「いいな」「すきだな」の発表の仕方を次のように例を示して、指導します。
「いいな」と思ったところは、8ページです。
「みんなは、大きなこえで、『おうい。』とよびました」のところです。
板書のコツ②
黒板の上段には、「だれが、」「どういった。」という会話文の主語が分かるように板書しました。例えば、「『まわれ、みぎ。』先生が、ごうれいを かけると、くじらも、空で まわれみぎを しました。」のところが「いいな」と思ったという発表があったので、「まわれ、みぎ。」を言ったのが、先生であることを確認して、「先生が、」に赤チョークで印を付けました。その後も同じように、はじめの「おうい。」はみんなが言い、2回目の「おうい。」はくじらが言ったことを確認して、印を付けました。
板書のコツ③
黒板の下段には、「いいな」「すきだな」と思ったところが、どんな様子なのかを板書しました。「いいな」「すきだな」と思ったところは「どんなようすですか」と発問し、「◎どんなようす」のカードを貼ります。具体的には、「おうい。」と呼び合うところは、「くじらとみんなは、仲良し」という発言がありました。また、「天まで とどけ、一、二、三。」のところについては、「丸い輪になって、ジャンプしている」といった子供の発言があり、これらを板書にまとめました。
板書のコツ(3/8時間目前半)
板書のコツ①
日付、題名、めあてを板書した後、次のように問答をします。
みんなが「いいな」「すきだな」と思ったところで、不思議なことがあります。
その不思議なことを考える勉強をします。
子供たちに興味をもたせた上で、次の文を音読します。
(音読) 先生が、ふえを ふいて、とまれの あいずを すると、くじらも とまりました。
だれが、笛を吹きましたか。
先生です。
くじらは、どうしましたか。
止まりました。
「だれが、」「どうした。」が分かりますね。
(音読) 「まわれ、みぎ。」先生が、ごうれいを かけると、くじらも、空で まわれみぎを しました。
「まわれ、みぎ。」は、だれが言いましたか。
先生です。
くじらは、どうしましたか。
回れ右をしました。
このようにして、「だれが、いったのか。」「だれが、何をしたのか。」を確かめます。
板書のコツ②
会話文に着目させるために、「◎だれが、いったのか。」のカードを出し、次の文を音読します。
「おうい。」と よびました。
「おうい。」と、くじらも こたえました。
そして、会話文のカードの2枚(「おうい。」「おうい。」)を貼り、「だれが、いったのか。」を確かめます。「何をしたか。」に当たる「よびました。」「こたえました。」を板書し、「だれが、いったのか。」は絵カードを貼ります(子供たちに示す絵カードは、教科書の挿絵を活用)。このとき、黒板の中央を空けておきます。
同じように、「ここへ おいでよう。」からの文を音読し、「だれが、いったのか。」と「何をしたか。」を確かめます。
板書のコツ(3/8時間目後半)
板書のコツ①
「『だれが、いったのか。』『だれが、何をしたか。』の見付け方を勉強しました。」と、これまでの勉強を確認した後、「では、先生が、もう一度文を読みます」と、次の文を音読します。
先生が ふえを ふいて、とまれの あいずを すると、くじらも とまりました。
「まわれ、みぎ。」 先生が ごうれいを かけると、くじらも、空で まわれみぎを しました。
その後、会話のカード「あの くじらは、きっと がっこうが すきなんだね。」を示し、どこにこの文が入るかを確認します。そして、「だれが、いったのか。」「だれが、何をしたか。」が書かれていないことに気付かせます。
板書のコツ②
黒板の中央が空白であることに気付かせ、「だれが、いったのか。」「だれに、いったのか。」を自由に考えさせます。そして、子供たちの発言を、次のように板書します。
・先生が → みんなに
・みんなが → 先生に
・ひとりの子が → となりの子に
・それぞれの子が → となりの子に
その後、1つ目の「先生が → みんなに」言っている場合は、「あの くじらは、きっと がっこうが すきなんだね。」をどんな声で読むのかを考えさせ、音読させます。次に、「みんなが → 先生に」言っている場合はどんな声で読むのか、音読させます。「ひとりの子が → となりの子に」「それぞれの子が → となりの子に」の場合についても、同じように考えさせます。小さな声、大きな声といったように読み方を変えて、音読を続けさせます。自分の想像したことを音読する活動につなげることにより、「言葉をつくる」楽しい学習へと広げています。
構成/浅原孝子