「自動タイムスタンプ授業記録」で授業の腕を上げる|子供たちの可能性を引き出す!学級経営&授業アイデア#7
自ら考え、活動したり学習したりする子供たちの可能性は無限大。そうした子供の内に秘めている可能性を引き出すための「学級経営&授業アイデア」を紹介する連載です。『教室ギア56』(東洋館出版社)などの著書をもつ鈴木優太先生が、学級活動、教室環境、授業アイデアなどの中から、毎月1本厳選して解説します。第7回は、「自動タイムスタンプ授業記録」を取り上げます。
執筆/宮城県公立小学校教諭・鈴木優太
目次
授業参観時の学びを10倍にする魔法のシート
子供たちの可能性を引き出すために、私たち教員は日々の授業を研究し続けています。特に秋は、実りの秋と言われるように、子供たちの成長を実感できる季節です。そのため、多くの学校では研究授業が活発に行われます。
研究授業参観時の学びを「10倍」にする方法があります。
「自動タイムスタンプ授業記録」です。これを使うことで、効果的なメモを取ることができます。
記録という列に「気付き」を入力すると、自動的に「現在時刻」が入力されます。
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たったこれだけのシンプルなシートです。Googleスプレッドシートで3分程度で作成できます(作成方法は後述)。
研究授業を参観しながら手元の端末でこのシートを開き、「気付き」を短い言葉で入力していきます。研究授業参観時の「気付き」のメモは、次のようにレベル分けができるでしょう。
・レベル1 事実……見聞きしたこと
・レベル2 解釈……よいことや改善したいと思ったこと
・レベル3 疑問……探究したいこと
・レベル4 妙案……思い付いたこと
※授業参観時には、レベル4まで段階的に深めていくことを意識しながらメモを取りましょう。単なる観察から、より能動的で深い学びの場へと昇華させることができます。
「自動タイムスタンプ授業記録」が優れている点は、レベル1の授業中の事実を淡々と入力するだけでも、質の高い授業記録が得られる点です。Enterキーを押すと、自動的に「現在時刻」が打刻されるからです。
「いつ、何が起こったのか」が明確になります。研究授業を参観する際、この視点は非常に重要です。なぜなら、授業がうまくいかない理由の多くがタイムマネジメントだからです。これは、若い先生に限った問題ではありません。「自動タイムスタンプ授業記録」を使って授業を参観するだけで、授業のタイムマネジメントが上達します。
脱・紙メモを目指そう!
私は、初任者研修を担当したことがあります。年間で100以上の授業を参観し、先生方の力になるために授業検討を繰り返してきました。初めはバインダー片手に、学習案やノートにメモを書き込みながら参観していました。しかし、メモをもとに口頭で振り返りを行うと、地に足の着いていない感じで時間だけが過ぎていきました。
そのため、要点を整理した授業記録を作るようになります。ここで、紙に書いたメモは改めて資料を作り直すひと手間が必要でした。他の業務と両立しながら、効果的な授業検討を行う方法を模索する日々が続きました。
そこで、試行錯誤を重ねた結果、授業参観の際には端末を持参するようになりました。思い切って、
紙でメモを取ることをやめました。
なぜなら、紙のメモは二次利用が難しいからです。授業参観中に端末で「気付き」を入力することで、授業が終わると同時にフィードバック用の資料が完成するようになりました。
また、授業中に撮影した写真もその場で挿入可能です。検索が簡単にできて、入力した情報のコピペも自由自在です。資料を印刷して手渡すこともできますが、ドライブ上で誰とでも共有が可能です。デジタルメモは二次利用が可能なので、生産性が高いのです。
授業参観中に端末に入力するため、片手で打つなどの工夫が必要になります。スマホを操作しているみなさんなら、やっているうちに慣れていきます。
初任者や若手への指導にも有効
前述したように、授業がうまくいかなかった理由の多くは「タイムマネジメント」です。授業の「いつ、何が起こったか」をフィードバックするようにしたところ、初任の先生の授業が目に見えて変わっていきました。
「現在時刻」+「気付き」で振り返りの解像度が劇的に向上する
ことに気付いたのです。
ここでいう解像度とは、画像や映像の鮮明さを表す言葉です。つまり、授業中の出来事をより鮮明に、細部までくっきりと捉えることができる状態を指しています。
さらに、以前の連載で紹介した「ナンバリングメモ&なるほどベスト3」という最強の学習法「発散→選択」を取り入れています。「発散」とは、よい選択をするためには、たくさんの気付きをアウトプットすることです。特に成果を感じた3点は赤色で、改善したいと感じた3点は青色でセルの色を変えます(成果は◎、改善は★と印を付けながらメモをしています)。授業者とはこの成果と改善の3点だけを話題にします。悩んで選び抜く3点を「選択」する過程も、非常に勉強になるはずです。
私と授業者の先生が、「いつ、何が起こったのか」と高い解像度で授業を共有できたことで、短い時間でも密度の濃い、実践的な授業検討が可能になりました。
「自動タイムスタンプ授業記録」ができるまで
「自動タイムスタンプ授業記録」が完成する前の話です。時刻の入力は、数字キーを押して手入力していました。気付きを入れるたびに毎回です。その後、ショートカットキー(Chromebookの場合は、「Shift」+「Ctrl」+「;」で現在時刻を表示)を活用するようになりましたが、それでも毎回コマンド入力していました。あるオンライン学習会で、この実践を紹介しました。
すると、「GASで自動タイムスタンプをプログラミングできるのでは?」と、参加者の先生に教えてもらいました。GASとはGoogle Apps Scriptの略で、作業を自動化するためのプログラムです。
そこで、教えていただいた通り「スプレッドシート・自動・タイムスタンプ」でネット検索し、記事で紹介されていたGASのコードをそのままコピペしてみました。すると、あっという間に自動タイムスタンプ機能が完成しました。
ただし、シートをコピーしても自動タイムスタンプ機能が反映されない点が課題でした。「コピーした全てのシートにもGASが反映されるように修正してほしい」と、生成AIに依頼をしたら、わずか5秒で修正プログラムが生成されました。こうして完成したのが、「自動タイムスタンプ授業記録」です。
以下に作成の手順を記しましたので、ぜひお試しください。
「自動タイムスタンプ授業記録」作成手順
①Googoleスプレッドシートを開く。
②A列に「時刻」、B列に「記録」と入力する。
③A列を指定し(Aのセルをクリック)、「表示形式」から「数字」→「時間」を選択する。
④メニューの拡張機能から「Apps Script」を開く。
⑤画面に表示されている「function myFunction() { }」は全て削除し、以下をコピペし、「保存アイコン」を押す。
function autoUpdateDate() {
var spreadsheet = SpreadsheetApp.getActiveSpreadsheet();
var sheets = spreadsheet.getSheets();
var currentCell = spreadsheet.getActiveCell();
var currentRow = currentCell.getRow();
var currentCellValue = currentCell.getValue();
if (currentRow > 1 && currentCellValue) {
var currentSheet = currentCell.getSheet();
var updateRange = currentSheet.getRange("A" + currentRow);
updateRange.setValue(new Date());
}
}
⑥一番左のメニューの「目覚まし時計」の「トリガー」を押し、画面右下の「トリガーを追加」を押す。
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⑦「イベントの種類を選択」で「編集時」を選択し、「保存」を押す。
⑧自身のGoogleアカウントを選択して、[高度な]→[無題のプロジェクトへ]→[許可する]を押す。
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参照:スプレッドシートで自動で更新日付を入れる方法参照https://qiita.com/shoyo0111/items/0adf605c170ef31fd8b4
これで、スプレッドシートを「自動タイムスタンプ授業記録」として使えるようになります。しかし、まだ発展の余地があると考えています。ぜひ一度使ってみていただき、一緒によりよい授業記録法を開発していきましょう。
「自動タイムスタンプ授業記録」は、校内での研究授業参観や教育実習生の指導で非常に役立っています。特に教育実習生を担当された先生方に好評で、いくつもの学校で活用されています。
そのメモ、本当に役立っていますか?
メモの真価は、単に情報を保存するだけでなく、それを二次利用し、新たな価値を生み出すことにあります。「自動タイムスタンプ授業記録」を使って、研究授業参観時の学びを「10倍」にしましょう。
鈴木優太(すずき・ゆうた)●宮城県公立小学校教諭。1985年宮城県生まれ。「縁太(えんた)会」を主宰する。『教室ギア56』『教室ギア55』(共に東洋館出版社)、『「日常アレンジ」大全』(明治図書出版)など、著書多数。
参照/鈴木優太『教室ギア56』(東洋館出版社)、鈴木優太『教室ギア55』(東洋館出版社)、鈴木優太『「日常アレンジ」大全』(明治図書出版)、多賀一郎監修、鈴木優太編、チーム・ロケットスタート著『学級づくり&授業づくりスキル レク&アイスブレイク』(明治図書出版)
【鈴木優太先生 連載】
・自治的な学級をつくる12か月のアイデア(全12回)
・子供同士をつなぐ1年生の特別活動(全12回)
・どの子も安心して学べる1年生の教室環境(全12回)
【鈴木優太先生 ご著書】
教室ギア56(東洋館出版社)
教室ギア55(東洋館出版社)
「日常アレンジ」大全(明治図書出版)
学級づくり&授業づくりスキル レク&アイスブレイク(明治図書出版)