小4理科「空気と水の性質」指導アイデア

特集
文部科学省教科調査官監修「教科指導のヒントとアイデア」
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執筆/福岡県北九州市立湯川小学校教諭・入尾康太
   福岡県北九州市立八児小学校教諭・松本祥吾
監修/文部科学省教科調査官・有本淳
   福岡県北九州市立祝町小学校校長・平川信乃
   福岡県北九州市立門司総合特別支援学校教頭・林謙吾

単元目標

体積や圧し返す力の変化に着目して、それらと圧す力とを関係付けて、空気と水の性質を調べる活動を通して、それらについての理解を図り、観察、実験などに関する技能を身に付けるとともに、主に既習の内容や生活経験を基に、根拠のある予想や仮説を発想する力や主体的に問題を解決しようとする態度を育成することがねらいである。

評価規準

知識・技能

①閉じ込めた空気を圧すと、体積は小さくなるが、圧し返す力は大きくなることを理解している。
②閉じ込めた空気は、圧し縮められるが、水は圧し縮められないことを理解している。
③空気と水の性質について、器具や機器などを正しく扱いながら調べ、それらの過程や得られた結果をわかりやすく記録している。


思考・判断・表現

①空気と水の性質について、問題を見いだし、既習の内容や生活経験を基に、根拠のある予想や仮説を発想し、表現するなどして問題解決している。
②空気と水の性質について、観察、実験などを行い、得られた結果を基に考察し、表現するなどして、問題解決している。


主体的に学習に取り組む態度

①空気と水の性質についての事物・現象に進んで関わり、他者と関わりながら問題解決しようとしている。
②空気と水の性質について学んだことを学習や生活に生かそうとしている。

評価計画

総時数 6時間

第1次 閉じ込めた空気と水についての学習問題をつくる。

1~2 閉じ込めた空気と水に力を加えたときの力の大きさと手ごたえについて、気付いたことを出し合い、問題を見いだす。(授業の詳細)

思考・判断・表現①
空気と水の性質について、問題を見いだし、既習の内容や生活経験を基に、根拠のある予想や仮説を発想し、表現するなどして問題解決している。〈発言分析・記述分析〉

第2次 閉じ込めた空気について調べる。

3 閉じ込めた空気に加えた力の大きさと、空気の体積や手ごたえの関係を調べる

思考・判断・表現②
空気と水の性質について、観察、実験などを行い、得られた結果を基に考察し、表現するなどして、問題解決している。〈行動観察・記述分析〉

第3次 閉じ込めた水について調べる。

4 閉じ込めた水に加えた力の大きさと、水の体積や手ごたえの関係を調べる。

思考・判断・表現②
空気と水の性質について、観察、実験などを行い、得られた結果を基に考察し、表現するなどして、問題解決している。〈発言分析・記録分析〉

知識・技能③
空気と水の性質について、器具や機器などを正しく扱いながら調べ、それらの過程や得られた結果をわかりやすく記録している。<行動観察・記録分析>

第4次 学習をまとめる。

5~6 空気と水の性質を利用したおもちゃを作り(もしくは、新たな問題を出し合い)、学習のまとめをする。

知識・技能①
閉じこめた空気を圧すと、体積は小さくなるが、圧し返す力は大きくなることを理解している。<行動観察・記述分析>

知識・技能②
閉じこめた空気は、圧し縮められるが、水は圧し縮められないことを理解している。<発言分析・記述分析>

主体的に学習に取り組む態度②
空気や水の性質について学んだことを学習や生活に生かそうとしている。<行動観察・発言分析・記述分析>

授業の詳細

第1次 閉じ込めた空気や水についての問題を見いだす。

1~2 様々な容器や袋に空気や水を閉じ込めたり、空気や水の鉄砲で遊んだりする体験活動を通して、空気や水に力を加えたときの力の大きさと手ごたえについて、気付いたことを出し合い、問題を見いだす。


閉じ込めた空気や水に力を加えたときの力の大きさと手ごたえについて、気付いたことを出し合い、問題を見いだし、表現している。

板書例の画像
板書例(クリックして拡大)

①自然事象と出合う

今日は、水や空気で、おもいきり遊びましょう!

風船、ペットボトル、空気鉄砲のイラスト

すごい!いろんな容器やおもちゃがあって、楽しそう!

遊ぶ中で気付いたことがあったら、たくさんメモしましょう。

 
子どもたちは、身の回りに空気があることは理解しています。しかし、目には見えず、手で捕らえることもできないため、存在を実感することは難しいものです。そこで、まずは空気を閉じ込めた袋を圧したり、それに乗ったりする活動を通して、空気の存在や手ごたえを体感できるようにします。
他にも、水中の空気を泡として可視化することで、空気の存在を目で確認することもできます。さらに、ペットボトルや風船、ボールなどに空気や水をそれぞれ入れたときの様子や、圧したり触ったりしたときの手ごたえなどを確認したり、比較したりして、気付いたことを出し合う活動を取り入れます。
加えて、空気鉄砲や水鉄砲などで遊び、そのときの手ごたえの違いなどを学級全員で共通体験できる場を作ります。このような多様な体験を基に、本単元の本質に迫る問題を学級全体で見いだすことで、主体的に問題を解決しようとする子どもの意欲を高めたり、実験場面で根拠のある予想や仮説、考察ができるように促したりします。

②気付きを共有する

空気を入れたペットボトルの方が、水を入れたものよりもたくさんへこむよ。

水鉄砲は、空気鉄砲より圧すのが大変だな。力の強い○○君にやってもらったら、私より勢いよく発射できたよ。(安全指導)

楽しんでいますね。メモが進んでいない人は、「手ごたえ」や「圧した感じ」をキーワードに、書いてみましょう。


体験活動が十分に進んできたら、着目させたいポイントへ焦点を当てていくためにキーワードを示し、だんだんと問題に迫っていけるように促します。たくさんの気付きを出していく中で、圧す強さと容器の体積や手ごたえを関係付ける発言が出てきます。子どもの声を整理しながらまとめ、問題の見いだしへとつなげていきましょう。(板書例)

袋を強く圧すと、圧し返してくる感じがしたよ。

袋をぎゅっと圧すと、袋がパンパンになって、少し小さくなった気がするよ。

 
子どもの気付きは、ICT端末に入力するとよいでしょう。カードを用意しておき、子どもが入力したものを教師が内容ごとに分けていけば、整理がはかどります。

③問題を見いだす

閉じ込めた空気は、圧すと体積が小さくなり、手ごたえも感じるのですか?

空気が小さくなることなんてあるのかな?たしかに、圧すと手ごたえは感じたけど…。

水は、どんな感じでしたか?

 
第4学年では、主に既習内容や生活経験を基に、根拠のある予想や仮説を発想するといった問題解決の力の育成を目指します。生活経験の少ない子どもたちでも、共通の体験活動を行うことで、生活経験のかわりとなります。学校外(家庭など)での自然体験や生活経験の差が、学習の差になることがしばしばあります。それをこの活動で保障していくことで、より多くの子どもが、主体的に学習に参加することを促すようにします。

水の方が空気より硬いというか、手ごたえが大きい気がしました。体積はどうなったのかな?


とじこめた空気や水に力を加えたとき、空気や水の体積や手ごたえはどのようになるのだろうか。


問題を見いだす際は、1つの問題や教科書にある問題だけに無理やり収束させる必要はありません(もちろん学習指導要領の内容は押さえておく必要はあります)。子どもたちから出た、多様な気付きや疑問は、単元末で解決する時間をとることも可能です。発展的な内容であることを子どもたちに伝えるだけでも、子どもたちは積極的に解決していこうとするでしょう。

安全指導

丈夫な袋を準備しても、空気が抜けることがあるので、袋の口は2度しばり、しっかり閉じましょう。袋が破れることもあるので、安全に十分留意しながら活動しましょう。また、空気鉄砲や水鉄砲は、人に向けて発射しないよう、徹底して指導しましょう。

袋のしばり方を解説するイラスト

準備物

授業にあたって、以下のものを準備しておきましょう。
●ゴミ袋
●ペットボトル(500mL、2Lなど複数あるのが好ましいです)
●風船
●スパウトパウチ(ゼリー飲料などに使われるキャップ付きフィルム容器)
●水鉄砲
●空気鉄砲
●エアダスター
●水槽
●空気入れ

その他のポイント

単元が始まる2週間ほど前から、体験活動で使う容器やおもちゃを教室に置いておき、休み時間などに子どもたちが遊べるようにしておきます。教師もいっしょになって遊ぶのもよいでしょう。そうするなかで、子どもたちから「先生!これも面白そうだよ!」と家庭や学校にある道具から、本時で活用できる物が提示されることもしばしばあります。

子どもの発想力には目を見張るものがあります。大人が準備したものだけでなく、子ども自身が考えたものを授業に取り入れることで、「学習の主体は子ども自身」ということを伝えることができ、だんだんと学びのコントローラーを子どもに委ねていくことができます。

イラスト/難波孝

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