ウェルビーイングを学校でつくる! ~SDGsの授業プラン #25 「Goal 12 つくる責任 つかう責任」その2|渡邊雄大 先生

連載
ウェルビーイングを学校でつくる! ~カリキュラム・マネジメントで進めるSDGsの授業プラン~

北海道公立小学校教諭

藤原友和
ウェルビーイングを学校でつくる! ~SDGsの授業プラン #25
タイトル

全国各地の気鋭の実践者たちが、SDGsの目標に沿った授業実践例を公開し、子どもたちの未来のウェルビーイングをつくるための提案を行うリレー連載。今回は「つくる責任 つかう責任」を学ぶ授業実践提案の第2回です。ご執筆は、北海道の渡邊雄大先生です。

執筆/北海道公立小学校教諭・渡邊雄大
編集委員/北海道公立小学校教諭・藤原友和

1 はじめに

北海道中富良野町で小学校の教員をしている渡邊雄大と申します。私が勤務する中富良野小学校では、多くのゲストティーチャーにお越しいただき授業を行っています。
授業では講師が話すだけではなく、体験活動を取り入れ、子どもが興味をもって学べる工夫をしています。
今回は、SDGsのGoal 12「つくる責任 つかう責任」を考えるために、不要になった文房具を海外に届ける活動をしている一般社団法人casaと、オフィス関連商社オカモトヤと連携した授業を紹介します。

2 SDGsのGoal 12についての解説

Goal 12「つくる責任  つかう責任」は、もう少し詳しく内容を確認すると、「持続可能な消費と生産のパターンを確保する*1」こととされています。
解決のためには、長寿命、修理可能性、リサイクル性を考慮した製品の設計が必要になります。
個人としては、廃棄物の削減や購入するものについて慎重に検討し、持続可能性のあるものを選択することが挙げられています。*2

3 SDGsのGoal 12を扱った授業の実際

授業その1

・学年 第4学年

・教科 総合的な学習の時間「職業調べ」(キャリア教育)

・ねらい
一般社団法人casaによる不要な文房具を海外に届ける活動、短い鉛筆をつなげるアップサイクル活動を理解する。(知識及び技能)
casaの活動内容や活動している方の思いを整理し、自分の考えをまとめる。(思考・判断・表現)
自分の未来の姿を考えようとする。(主体的に学習に取り組む態度)

・教材 不要になった鉛筆

講師 一般社団法人casa代表理事・小澤真紀さん

授業の展開
まず、小澤さんの活動のきっかけとなったフィリピンの友人からのメッセージを紹介しました。
「私の教え子の中に貧しくて文房具を十分にそろえることができない子どもたちがいて、少しでも彼らの学習環境が良くなるように、力を貸してほしい」
という内容です。このメッセージを紹介した後、以下の発問をしました。

発問 みなさんなら、このようなメッセージを受けた後、どのような行動をしますか?

子どもたちは、自分で集めて送る、友達に協力してもらうという意見を言っていました。
そのメッセージを受けて、小澤さんに、不安の中エンピツプロジェクトを立ち上げたこと、多くの人たちに相談し、協力してもらうことで、活動が広がっていったことを話していただきました。
さらに、短い2本の鉛筆を専用の鉛筆削りを使ってつなぎ合わせ、一本の新しい鉛筆を作る「アップサイクルエンピツ」という企画を紹介していただきました。鉛筆作りに取り組んでいる日本の他学校の子どもたちの写真を見せていただきました。子どもたちが「先生、私たちもやりたい」と反応したので、次時に小澤さん指導の元、アップサイクルエンピツを作りました。(写真は執筆者撮影)

短い2本の鉛筆をつなぎあわせて作った「アップサイクルエンピツ」の写真

・児童の振り返り
困っている人がいたら助ける精神で、大人になったら小澤さんのような活動をしてみたい。
もし自分が小澤さんの立場だったら、エンピツプロジェクトはできなかったと思う。小澤さんの行動力はすごいと思いました。
別なエコ活動もやってみたいと思った。

評価について
小澤さんの活動を理解しているワークシートの記述が約80%でした。小澤さんの思いを自分なりの言葉でまとめる記述は約70%、小澤さんの生き方から自分の未来を考える記述は、約40%でした。
生き方から未来を考えることに課題が残りました。

授業その2

・学年 第4学年

・教科及び領域 社会科

・ねらい 
廃棄される文房具の処理や再利用について関心をもち、本単元の既習事項を生かしながら、主体的に問題を解決しようとする。(主体的に学習に取り組む態度) 

・教材 オカモトヤオリジナルノート、オリジナル鉛筆

・講師 一般社団法人casa代表・小澤真紀さん、株式会社オカモトヤ・園田美公さん

・授業の展開
まず、小澤さんからエンピツプロジェクトを行うために不要な文房具を集めた際、20箱程度集まる予想をしていたが、220箱分も集まったことに驚いたという話をしていただきました。
また、園田さんから、1メーカーあたり、年間トラック数十台分にもなるようなたくさんの文房具の廃棄があるという説明をしていただきました。子どもたちは大きな驚きの声をあげていました。
そこで担任が、「使わない文房具を減らすためにできることを、小澤さん園田さんと一緒に考えよう」と子どもたちに呼びかけました。
次に園田さんから、SDGsに配慮したオリジナルノート、木の端材を使った鉛筆や万年筆の紹介をしていただきました。
子どもたちは、事前に送っていただいたオリジナル鉛筆を実際に手に取りながら、園田さんの説明を聞いていました。子どもたちは、「端材を使っているといっても、まるで1本の木から作られているようだ」と呟いていました。
園田さんから、通常、端材を使った鉛筆は節やつなぎ目などが見えるが、日本のものづくりの技術によって見えないように作られていること、きれいな仕上がりになっているので、大切に使ってもらいたいという話をしていただきました。
さらに、文房具の廃棄を減らすために、廃棄予定の文房具を移動販売車に乗せ、再販売する取組の説明をしていただきました。

・発問と指示
使われない文房具を減らすためにできることは? 作る側・使う側両方の立場に立って考え、ワークシートに書こう。

児童の意見
<使う側としてできること>
「どう工夫をしたらまた再利用できるか?」を考えて、できるだけ再利用する。
使えないなら、リサイクルボックスに入れる。
新しい筆記用具が欲しくても我慢する。
我慢するという意見に対して、担任から「かわいい文房具が欲しくなる時あるよね」という話をすると、その子どもたちも頷き、難しさを感じていました。

<作る側としてできること>
環境に優しく作れるように文房具の新しい形に挑戦すること。
作りすぎないようにする。
子どもが好きそうな文房具を作る。
これらの意見に対して、園田さんから、リサーチや在庫管理にはメーカーとして力を入れていること、生産する数を減らすことによって、価格が上がってしまうという説明をしていただきました。価格が上がると聞いた子どもたちは、「それは、嫌だ。難しい」と反応していました。

・評価について
90%以上の子どもたちが自分でできる取組をワークシートに記述していました。
「買い物をする時に、SDGs 12の言葉を頭の片隅に入れておく」など、具体的な行動として記述されたものもありました。

4 授業の成果と課題、他教科・他領域とのつながり

キャリア教育として、小澤さんの生き方に触れたことが、不要な文房具を探したり、短い鉛筆をつなげたりする社会課題を解決する活動に取り組む意欲につながったと思います。
また、文房具メーカー・オカモトヤさんとの協働により、「作る側の視点」に立って考えることができました。
廃棄量と価格のつながり等、メーカーとして感じている難しさを知り、共に悩む場面がありました。
これはGoal 12の達成が容易ではないことの表れであり、授業の中で、綺麗事ではない本質に迫るために必要なことだと感じました。
今後は深めきれなかった部分に迫っていけるよう、カリキュラムを見直していきたいと思います。

【参考文献】
*1『SDGsってなんだろう? SDGsクラブ』公益財団法人 日本ユニセフ協会
*2 国際連合広報センター ニュース・プレス SDGs(エス・ディー・ジーズ)とは? 17の目標ごとの説明、事実と数字

この連載は、毎週木曜日のAM6:00に公開します。どうぞお楽しみに!

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