小3理科「身の回りの生物(こん虫)」指導アイデア
執筆/福岡県北九州市立深町小学校指導教諭・鈴木寛人
福岡県北九州市立白野江小学校教諭・竹治祥子
監修/文部科学省教科調査官・有本淳
福岡県北九州市立葛原小学校校長・田邉伸三
福岡県北九州市立青山小学校教頭・中富太一朗
目次
単元目標
本単元では、身の回りの生物について、探したり育てたりする中で、それらの様子や周辺の環境、成長の過程や体のつくりに着目して、それらを比較しながら、生物と環境との関わり、昆虫や植物の成長のきまりや体のつくりを調べる活動を通して、それらについての理解を図り、観察、実験などに関する技能を身に付けるとともに、主に差異点や共通点を基に、問題を見いだす力や生物を愛護する態度、主体的に問題解決しようとする態度を養うことがねらいになります。
学習指導要領では、次のことを理解するようにすることが示されています。
(ア)次の(イ)と(ウ)を理解するとともに、観察、実験などに関する技能を身に付けること。
(イ)こん虫の育ち方には、一定の順序があること。また、成虫の体は頭、胸及び腹からできているこ と。
(ウ)身の回りの生物の様子について追究する中で、差異点や共通点を基に、身の回りの生物と環境との関わり、昆虫や植物の成長のきまりや体のつくりについての問題を見いだし、表現すること。
児童が問題解決の活動を通して、上の(ア)と(イ)を理解するように指導しましょう。また、その過程において、思考力、判断力、表現力等や学びに向かう力、人間性などを育成しましょう。
評価規準
知識・技能
①昆虫の育ち方には、一定の順序があることを理解している。
②昆虫の成虫の体は、頭、胸および腹からできていることを理解している。
③身の回りの生物について、器具や機器などを正しく扱いながら調べ、それらの過程や得られた結果をわかりやすく記録している。
思考・判断・表現
①身の回りの生物について、差異点や共通点を基に、問題を見いだし、表現するなどして問題解決している。
②身の回りの生物について、観察、実験などを行い、得られた結果を基に考察し、表現するなどして問題解決している。
主体的に学習に取り組む態度
①身の回りの生物についての事物・現象に進んで関わり、他者と関わりながら問題解決しようとしている。
②身の回りの生物について学んだことを学習や生活に生かそうとしている。
評価計画
総時数 10時間
児童が生き物を飼育し、継続して観察を行う中で、その活動の中で生き物の成長の様子や体のつくりに気付いていくように指導していきます。前単元の観察の仕方や、前時までの内容といった学習経験が大きく関わってきます。また、成長過程の写真を並べて掲示したり、児童がそれぞれに撮影した写真記録や観察記録をICT端末上で確認したりするなど、振り返りやすい環境づくりも大切です。
第1次 チョウの育ち方
1 キャベツに産みつけられた卵を観察して気付いたことを基に問題を考える。
思考・判断・表現①
身の回りの生物について、器具や機器などを正しく扱いながら調べ、それらの過程や得られた結果を分かりやすく記録している。
2 卵の変化の様子を観察し、飼育の準備をする。(授業の詳細)
知識・技能③
身の回りの生物について、器具や機器などを正しく扱いながら調べ、それらの過程や得られた結果を分かりやすく記録している。
3 幼虫の育つ様子を観察する。
知識・技能③
身の回りの生物について、器具や機器などを正しく扱いながら調べ、それらの過程や得られた結果を分かりやすく記録している。
4 さなぎの変化の様子を観察する。
知識・技能③【記録に残す時間】
身の回りの生物について、器具や機器などを正しく扱いながら調べ、それらの過程や得られた結果を分かりやすく記録している。
5 成虫の様子を観察し、成長のきまりについてまとめる。
知識・技能①
昆虫の育ち方には一定の順序があることを理解している。
思考・判断・表現②
身の回りの生物について、観察、実験などを行い、得られた結果を基に考察し、表現するなどして問題解決している。
第2次 こん虫の体のつくり
6 チョウの体のつくりを観察する。
思考・判断・表現②【記録に残す時間】
身の回りの生物について、観察、実験などを行い、得られた結果を基に考察し、表現するなどして問題解決している。
7 いろいろな虫の体のつくりを調べる。
知識・技能②
昆虫の成虫の体は頭、胸及び腹からできていることを理解している。
主体的に学習に取り組む態度①
身の回りの生物についての事物・現象に進んで関わり、他者と関わりながら問題解決しようとしている。
第3次 こん虫の育ち方
8 幼虫を飼って、育ち方を調べる。
思考・判断・表現①【記録に残す時間】
身の回りの生物について、差異点や共通点を基に、問題を見いだし、表現するなどして問題解決している。
9 チョウの育ち方と比べ、昆虫の成長のきまりについてまとめる。
知識・技能②
昆虫の成虫の体は頭、胸及び腹からできていることを理解している。
主体的に学習に取り組む態度①【記録に残す時間】
身の回りの生物についての事物・現象に進んで関わり、他者と関わりながら問題解決しようとしている。
10 学習のまとめと振り返りを行う。
知識・技能①【記録に残す時間】
昆虫の育ち方には一定の順序があることを理解している。
知識・技能②【記録に残す時間】
昆虫の成虫の体は頭、胸及び腹からできていることを理解している。
主体的に学習に取り組む態度②【次の単元で記録に残す時間】
身の回りの生物について学んだことを学習や生活に生かそうとしている。
授業の詳細
昆虫の成長について調べ、それらの過程や得られた結果をわかりやすく記録する。
第1次 チョウの育ち方
1 キャベツに産みつけられた卵を観察して気付いたことを基に問題を考える。
2 卵の変化の様子を観察し、飼育の準備をする。
3 幼虫の育つ様子を観察する。
4 さなぎの変化の様子を観察する。
5 成虫の様子を観察し、成長のきまりについてまとめる。
①問題を見いだす【自然事象との出会い】
前時の学習でモンシロチョウの卵や育ち方などについて、疑問や気付きをノートに記録しておくと、問題づくりの際に、考えを引き出しやすくなります。また、その際、卵だけでなく、幼虫も一緒に写真を撮っておきます。予想を立てて、根拠を考えるうえで参考になります。
前回、みんなでモンシロチョウの卵を探したけど、そのとき不思議だなと思ったことや、多分こうじゃないかなと気付いたことはありませんでしたか。
あんなに小さな卵が、どうやったらモンシロチョウになるのかな?
どうしてキャベツの葉の裏に卵を産んだんだろう?
それはきっと、モンシロチョウの赤ちゃんが卵から出てきたときに食べ物にこまらないようにじゃないかな?
虫の赤ちゃんや、子どものことを幼虫というよ。
チョウは、たまごからどのように育つのだろうか。
②予想する
これまでの生活経験や学習経験を基に予想することで、根拠があるものとなります。この学習では、これまで虫とりや観察をしてきた生活経験と、前時の学習で撮った卵や幼虫の写真を基に、予想とその根拠を考えることができるようにしましょう。
いろいろな大きさの幼虫がいたから、人間みたいにちょっとずつ大きくなっているのかも。
オタマジャクシがカエルになるときみたいに、突然、羽や足が生えてくるのかもしれないよ。
生き物によっては、成長するときに脱皮したり、さなぎになったりするというのを聞いたことがあるよ。
③解決方法を考える
観察の視点については、4月に自然観察したときのことを想起させ、色や形、大きさなどに着目していたことに触れ、本単元でも同じような視点で観察することをおさえましょう。その際、卵や幼虫を絵で記録することは、対象をよく観察するため有効です。また、ICT端末を用いて、子どもが自分で観察した卵(幼虫)を撮影し、写真記録を続けたり、記入した観察記録をICT端末上で保存したりすることで、変化を手元で確認できるようにすることも大切です。
卵から続けて毎日観察するといいよ。そのとき、ものさしで長さも一緒に測ろう。
長さだけじゃなくて、色や形なんかも一緒に記録しておくといいよね。
飼育方法をみんなで確認し、卵から羽化するまで毎日観察し、色や形、大きさをワークシートに記録する。また、一週間に1枚程度の絵を描いて、成長の様子を確かめていく。
卵や幼虫は非常に小さく、指でつまむと死んでしまう原因になることもあります。キャベツの葉を取りかえる際には、古い葉の幼虫が乗っているところを切り取り、新しい葉の上に乗せるようにしましょう。
④観察・実験をする
かごに、卵がついたキャベツの葉と一緒に入れておき、卵が孵化し幼虫が出てきたら、毎日、新しい葉に取りかえ、ふんの掃除をするなど、お世話をしながら、毎日観察するようにする。(安全指導)
モンシロチョウの幼虫は、アブラナ科の植物の葉を好むため、キャベツ、大根、アブラナ、小松菜などの植物の葉を与えましょう。これらの植物の葉が校庭などにない場合は、市販されているキャベツの葉で代用しましょう。その際、農薬がついている恐れがあるため、いちばん外側の葉は用いず、念のため、1日水にさらしてから与えましょう。
学級の実態に合わせて、個人や班で飼育するようにしましょう。卵は、1つの飼育ケースに2~3個程度にしておきましょう。また、羽化したときに、羽を十分に広げるスペースがない場合でさなぎ化した際は5日ほど経ってから、そっと外し、羽を広げるスペースがとれる場所に移してあげましょう。
⑤結果の処理
●卵から出てくる幼虫は、くり返し皮を脱いで大きくなる
●さなぎの後、成虫になる
⑥結果を基に考察する
幼虫は、皮を脱ぐ度に、体が大きくなっていたよ。
皮を脱ぐことを脱皮というよ。
モンシロチョウは、卵から成虫になるまで約1か月もかかったよ。
さなぎから出てきたときに、羽が生えていたよ。幼虫とは全くちがうね。
ICT端末で記録した幼虫の成長写真や観察記録を子どもたち同士で話し合いながら並べ替えるなどすることで、どの幼虫も同じ成長をたどることを確認することができます。
⑦結論を出す
チョウは、たまごからよう虫になり、くり返しだっ皮して大きくなる。やがて、さなぎになり、さなぎから出てせい虫になる。
⑧振り返る
途中で、幼虫の体の色が緑色に変わったことに驚いた。葉と同じ色になるのは、敵から身を守るためかもしれないと思った。
成長の様子を調べるには、大きさを記録するといいんだね。
ICT端末に写真を残しておくと、後で確認できてよかった。毎日の記録が大事だね。
どのように記録すれば問題が解決できるのかが大切です。今回の記録を次の問題の解決にも生かしていきましょう。
安全指導
安全指導①
生き物の世話をする前と、した後には必ず手を洗うよう指導しましょう。
安全指導②
虫メガネの使用にあたって、次のことを徹底して指導しましょう。
●絶対に太陽を見ないこと
●見たいものが動かせる場合、虫めがねを目に近付けて、見たいものを動かすこと
●見たいものが動かせない場合、虫メガネを目に近付けたまま見たいものに近付いたり遠ざかったりすること
イラスト/難波孝