小5国語「大造じいさんとがん」板書の技術

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見やすく理解しやすい「単元別 板書の技術」元京都女子大学教授・同附属小学校校長 吉永幸司監修
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大阪府公立小学校教諭

岡本美穂
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今回の教材は、「大造じいさんとがん」です。本単元で付けたい力を「今までの学習を生かして、言葉から人物像を具体的に想像しよう」としています。大造じいさんの人物像を考えていけるような板書の工夫を紹介します。

監修/京都女子大学附属小学校特命副校長・吉永幸司
執筆/大阪府公立小学校教諭・岡本美穂

 

教材名 「大造じいさんとがん」(東京書籍)

単元の計画(全12時間)

1 作品の読み聞かせを聞き、感想を書く。
  →これまでの学習で身に付いてきたものなどを把握するためのアンケート的扱いとして感想を見る。
2 音読練習
3 場面ごとの大きな出来事を整理して簡単なあらすじ・登場人物をまとめる。
4 うなぎばりの計略の場面から、大造じいさんの人物像を想像しよう。
5 たにしの計略の場面から、大造じいさんの人物像を想像しよう。
6 おとりの計略の場面から、大造じいさんの人物像を想像しよう。(1)
7 おとりの計略の場面から、大造じいさんの人物像を想像しよう。(2)
8 最後の場面から、大造じいさんの人物像を想像しよう。
9 お話の続きを想像しよう。大造じいさんは残雪をまだ捕る気はあるのかについて考える。
10 感想を文章に書く→初発の感想と比較して書く。
11 俳句でまとめを書く。
12 俳句の交流会。

板書の基本

〇本教材は、狩人である大造じいさんと、がんの頭領である残雪との4年間にわたる知恵比べを通して、残雪の頭領としての姿に感嘆、感動することにより、大造じいさんの残雪に対する心情が変化していく様子が描かれた物語です。初めは、狩人としての知恵と経験がある大造じいさんが「一羽のがんも手に入れることができなくなった」ことから、残雪をいまいましく思っていながらも「たかが鳥」だと考えていました。しかし、最後には「がんの英雄」へと残雪を認めるまでに見方を変えていきます。

作品の組み立ては、時間の流れにそって4つの場面に分かれており、その場面の中にもその年、その年の大造じいさんと残雪との戦いが盛りこまれ、両者の知恵の限りを尽くしての壮絶な戦いがくり広げられています。

その中でも、大造じいさんが「うなぎばりの計略」「たにしの計略」「おとりの計略」と猟銃に頼らない方法を考え、準備し、残雪に向き合う様子からは並々ならぬ意気込みが読み取れます。また、残雪も群れを率いる頭領という立場に違わぬ知恵で、大造じいさんの策略から仲間を守っていきます。この両者の知恵比べが実におもしろく読み手を引き付けていくと考えました。

〇回を重ねるごとに、大造じいさんは、年々、残雪への見方を変えていきます。決定的に大きく変化するのが、おとりのがんを使う場面でしょう。「さあ、今日こそ、あの残雪めに、ひとあわふかせてやるぞ。」という言葉通り、残雪に対して意地になっている大造じいさんが、はやぶさの攻撃から仲間を助けるために命を顧みず向かっていく残雪の姿を見て、再び銃を下ろしてしまうのです。そして、はやぶさとの戦いの場面を見た大造じいさんは「かけつけ」「手をのばす」という行動をします。その間には、残雪の姿をじっと見ており、そこから「大造じいさんが手を伸ばしても、残雪は、もうじたばたさわぎませんでした。」というように、残雪の堂々たる態度をまの当たりにして「ただの鳥」に対しているのではなく、残雪の仲間に対する愛情、頭領らしい威厳に対して「がんの英雄」と尊敬の念を抱くようになるのです。

〇その際、大造じいさんは「獲物としての特別な存在である残雪」から「がんの英雄という特別な存在である残雪」へと変化したと考えました。この「英雄」とは辞書では、「才知、気力、武力に秀で、偉大な事業を成し遂げるひと」という意味があります。またその後の「えらぶつ」「おれたち」という言葉から、「鳥⇔個人」から対等な「個⇔個」へと変化していきます。子供には、この変化を大造じいさんの変化として捉えさせたいと考えました。

そこで、今回、板書では「大造じいさん」「残雪」「はやぶさ」と書かれた短冊を用意しました。そして、毎時間その短冊をいかした板書づくりを行うようにしました。

短冊のよさは、

①何度も使える

国語などの挿絵、写真、図表、地図など教科書に載っているものを拡大コピーして使います。

貼ったり、はがしたりして何度も使うことができます。板書をまとめたものを、模造紙などに書いておけばいつでも何度でも使うことができます。手書きの板書とは違った変化が生まれますので、子供にとってもよい刺激となります。

②どこにでも動かせる

板書では書きにくい上のほうにも表示することができます。貼る位置を移動するだけで子供には刺激になります。子供たちに動かしながら発言してもらうことなどもできます。こういう動く貼り物を教室に貼っておけば、休み時間などに子供たちは遊びながら学ぶこともできます。

板書のコツ(3/12時間目)

3/12時間の板書
3/12時間の板書

板書のコツ①

本教材で付けたい力を「今までの学習を生かして、言葉から人物像を具体的に想像しよう」としています。今回の初発の感想では、大きく5つのことが話題に上がりました。作者のこと、物語の変化、他の作品と似ていることについて、主人公、情景描写について注目していました。作者である椋鳩十さんのテーマや、「きずな」「仲間」といった言葉で表現する子供もいました。また、変化については「大造じいさん」が悪い人から良い人へ変わっている、というような言葉で表現していたり、初めと終わりを比較して書いていたりする子供もいました。

板書のコツ②

第1時の初発の感想交流では、大造じいさんと残雪の関係性に注目しながら、その関係性に変化があることに気が付いている子供もいました。そして、その中で「大造じいさんと残雪」どちらが主人公なのか、という疑問が出てきたので話し合いを行いました。

多くの子供たちは、登場人物に「残雪」はそもそも入らない、題名が「大造じいさんとがん」だから「大造じいさん」が主人公だと考えました。一方で、残雪がきっかけになっていること、本文により出てきているのは「残雪」だから、主人公は「残雪」だと主張している子供もいました。そこで、学習するなかで、主人公も意識しながら進めていくことにしました。

あらすじを捉える際に大事にしていることは、どの子供も「あらすじを理解できている」状態にするということです。一生懸命何時間もかけて、物語文の授業をしたにもかかわらず、最後まで話を理解していなかったということはよくあるものです。そんなことにならないように場面ごとに題名を付けることで読み間違いを減らすようにしました。説明文でも行っていたので、前回学習した内容を今回は短冊にして貼っています。

板書のコツ(6/12時間目)

6/12時間目の板書
6/12時間目の板書

板書のコツ

毎回授業の最初に前回の振り返りを行いました。今回は、「前回の大造じいさんはどうでしたか?」と発問していき、それを板書でまとめるようにしました。そうすることで、前回とつなげて考えられるようになったり、比較したり、変化に注目したりする子供たちが増えました。
めあては「3場面前半の大造じいさんについて考えよう。」です。

子供たちの意見に、大造じいさんが「狩人として」と「意地」になっている混乱について語っていたので、緑のチョークで矢印を書くことで、その心境の変化がすぐに分かるようにしました。

板書のコツ(7/12時間目)

7/6時間目の板書
7/12時間目の板書

板書のコツ①

まず、前回の振り返りを行い、その後ペアで3場面後半の音読を行いました。毎回「この場面の大造じいさんはどうですか?」と発問していましたので、今回もペアで音読を行いながら、子供たちは線を引いたりノートにメモを取ったりするなどして読み深めていました。その後、大造じいさんの変化について全体交流を行いました。

板書のコツ②

子供たちは「銃を下ろす」ことに疑問を抱きながら話し合いを進めていくなかで、尊敬という言葉が出てきたので、黄色で目立つように書きました。そして、深める発問として、「手をのばすとは」と聞きました。すると、「助ける」「守る」「混乱」というキーワードが出てきたので板書しました。その話し合いを行うことによって振り返りは、自分の考えを豊かに書くことができています。

板書のコツ③ 

読みの深さも大切なことですが、子供にとっては「みんなといっしょに読み合えた!」「話し合えた!」「考えて書けた!」という喜びは、学習意欲につながるのでそういう気持ちも大切にしたいと考えています。私自身どうしても国語の授業では、意見を盛んに言う子供にばかり注目してしまう傾向がありますが、めざすべき授業とは意見を言わなかったとしても、友達の意見を聞いたおかげで違う発見をしたり、新たな学びを得たりして思わずノートに意見を書きたくなるような授業ではないでしょうか。そういう授業では、どの子供も意欲あふれるのではないかと信じ、日々授業を行いたいと考えています。

 

構成/浅原孝子

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