ウェルビーイングを学校でつくる! ~SDGsの授業プラン #16 「Goal 8 働きがいも経済成長も」を学ぶ授業|戸来友美 先生

連載
ウェルビーイングを学校でつくる! ~カリキュラム・マネジメントで進めるSDGsの授業プラン~

北海道公立小学校教諭

藤原友和
リレー連載「ウェルビーイングを学校でつくる!」第16回 「ゴール8 働きがいも経済成長も」

全国各地の気鋭の実践者たちが、SDGsの目標に沿った授業実践例を公開し、子どもたちの未来のウェルビーイングをつくるための提案を行うリレー連載。今回は「働きがいも経済成長も」を学ぶ授業実践。提案者は、北海道の戸来友美先生です。

執筆/北海道公立小学校教諭・戸来友美
編集委員/北海道公立小学校教諭・藤原友和

1 はじめに

こんにちは、北海道で小学校教員をしております戸来友美(へらいともみ)と申します。今年度は6年生を担任させていただいています。
「WE HAVE A DREAM  201カ国202人の夢×SDGs」では、SDGsについて、山登りに例えて解説しています。
SDGsのゴールは登りたい山に立ててあるゴールの旗のようなもので、期日や数値も、人類が目標を定めて、そこに向かって努力し成長していくためのシンボルであると言っています。そして、夢とはその山頂から見られる景色だとあり、その考え方にとても共感しました。
子どもたちが自分の未来の明るい景色を夢見られるように、授業を計画していきたいと考えました。
そして、自分や自分たちの未来を想像するときに、より考えを深められるよう、SDGsの考え方を取り入れていきたいと思います。

2 SDGsのGoal 8についての解説

日本ユニセフ協会のホームページによると、目標8は「みんなの生活を良くする安定した経済成長を進め、だれもが人間らしく生産的な仕事ができる社会を作ろう」とあります。
達成目標として、それぞれの国の状況に応じて人々が経済的に豊かになること、経済成長が環境を悪化させることにつながらないこと、誰もが安全安心に働ける環境を作ること、働きがいのある人間らしい仕事ができるようにすること、児童の労働をなくすこと、など10の達成目標が掲げられています。
「朝日新聞のSDGs ACTION!」のホームページでは、その目標の達成のために個人でできることとして、「自分自身の働き方や価値観を見直していくこと」が大切な取組の一つとされていました。
この「個人でできること」を授業で取り上げたいと思いました。

3 SDGsのNo.8を扱った授業の実際

●対象学年 小学校第6学年

教科及び領域 学活 

ねらい 「働く」ことの目的を考え、これからの係活動や委員会活動につなげる。

評価
知識・技能…相手を意識して働く人の存在を通して、働くことの目的を考え、自己のよさを生かしながら係活動を充実させるために必要な知識や行動の仕方を理解している。
思考・判断・表現…よりよい係活動について考え、取り組む方法について話し合い、実践している。
主体的に取り組む態度…係の友達と決めたことを実現させるために、自主的に行動しようとしている。

●教材 「お菓子のパッケージの写真とお客様相談室のメール」

お菓子の写真

<本時の展開>

「人は、何のために働くのだろう?」と問いました。子どもたちは思うことを口々に言いました。
生きていくため 生活を良くするため 子供のため 豊かになるため 自分の幸せのため 国を成り立たせるため 家族を養うため   

②北海道のお菓子メーカーに柳月という会社があり、そこのお菓子を買った際、そのパッケージの工夫に驚いたので、それを紹介したいと伝え、上の写真を見せました。
そのように工夫した理由が知りたくなり、お客様サービスに問い合わせたことを伝え、いただいた以下の返信を読み上げました。

お菓子会社に柳月よりの返信

読んだ後、「柳月の社長さんは、何のために働いているのだろう?」と問いかけました。
人のため 利用者のため お客様 人の幸せのため

③働く目的について深めて考えさせるために、「人のためだけに働いているのだろうか? 自分のために働くことはないのかな?」と問い返しました。
自分のために働くことはもちろんあるけど、人のためにやる気持ちもあるということだと思う。
人によって、自分のための度合いと、人のための度合いは違うと思う。 など

④働く目的を係活動につなげるために、
「人のためと自分のための度合いがあるということを、みんなの係活動に生かすと、より良い活動になりそうではないですか? 早速、係で集まって、これからどんなことに取り組みたいか、『人の幸せのために』できそうで『自分も楽しめること』は何か、考えてみてください」
と指示を出し、係ごとに集まり今後の活動で取り組んでみたいことを考える時間を15分間とりました。
その後、これから取り組みたいことを付箋に書いて、教室後方に掲示している係ポスターに貼るようにしました。

⑤今後の学習の広がりの予告として、
「これから、いろいろな学習でみんなの未来を考えていきます。総合的な学習の時間や道徳科の時間で、今の自分について学んで、自分の興味のあることやその周りにあるお仕事や働き方について知りましょう。そして、今の自分が興味のある職業を選び、図工の時間に、未来の自分が働く様子を立体の作品にしましょう」と伝えました。

4 授業の成果と課題、他教科・他領域とのつながり

【成果】
働くということを多面的に考える機会となりました。
また、「人のために活動してみよう。」という考えで活動を見直したり、新しい活動を考えたりしている姿が見られてよかったです。
卒業に向けて、自分の未来について考える見通しを持つ機会となりました。

【課題】
今回の授業は、お菓子メーカーの副社長(現社長)さんの思いを子どもたちの係活動に生かす展開だったので、子どもたちに自然と「人のためになる活動をしたい」という思いをもたせるような授業にはなりませんでした。教師からの「係活動に生かしてみよう」という投げかけが必要でした。
そのつながりに納得できない児童もいたと思います。
また、SDGsについては、今回の授業ではあえて伝えませんでした。
今後、道徳科の「『働く』って、どういうこと?」の授業の際に17の目標を示し、一人一人の一歩が経済成長という大きな一歩につながる、ということを伝えていきたいと考えています。

【他教科・他領域とのつながり】
<道徳>
「『働く』って、どういうこと?」 内容項目:C(14)勤労,公共の精神(「道徳6年 きみがいちばんひかるとき」光村図書)
目標 さまざまな職業に就く人々の姿を描いた1枚の絵や、働く人たちのエピソードとアンケート調査結果を通して、人は何のために働くのか、働くことの意義を考え、公共のために役立とうとする実践意欲と態度を育てる。

<総合的な学習の時間>
「過去、現在、未来から自分を見つめよう」
目標 自らの小学校生活を振り返って、自分の成長について考えたり、さまざまな人の生き方や考え方を知ったりすることを通して、自分の将来について考え、伝え合う。

<図画工作科>
単元名 「未来のわたし」 図画工作5・6年下(日本文教出版)
目標 総合的学習の時間でまとめた自分が興味のある「仕事」や「職業」について、夢や願いを込め、材料や形のつくり方を工夫して、形や色などの造形的な特徴を捉えながら立体に表す。

【参考文献】
「WE HAVE A DREAM 201カ国202人の夢×SDGs」WORLD DREAM PROJECT編 いろは出版
日本ユニセフ協会 ホームページ「SDGs CLUB」
朝日新聞 SDGs ACTION!「SDGs目標8「働きがいも経済成長も」とは? 背景や事例を紹介」


この連載は、毎週木曜日のAM6:00に公開します。どうぞお楽しみに!

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