小6家庭科 いためて作ろう! 朝食のおかず
今回は、「いためて作ろう! 朝食のおかず」の授業実践を紹介します。「家族においしい朝食のおかずを作ってあげることができる自分になる」という子供の思いや願いから、いためる調理についての課題を設定し、調理実習とその評価・改善を繰り返し行い、おいしく食べるために、調理計画を考え、調理の仕方を工夫できるようにすることを目指します。
執筆/神奈川県横浜市教育委員会主任指導主事・大平はな(授業者資料提供/神奈川県横浜市公立小学校教諭・大田桃可)
編集委員/神奈川県横浜市公立小学校校長・本庄則子
監修/元文部科学省教科調査官・筒井恭子
目次
年間掲載内容
04月 いためる調理
06月 着方と手入れ
08月 製作 ふくろづくり
10月 1食分のこんだて
12月 共に生きる地域での生活
1 題材名
いためて作ろう! 朝食のおかず
2 題材について
本校では、2学年間の食に関する題材配列を工夫し、各題材で身に付ける知識及び技能を整理しました。限られた調理実習において、何を身に付けなければならないかが明確になり、学習の充実を図ることができると考えたからです。子供の実態から、下図のとおり、第6学年では献立作成に加えて、学校における調理実習で主菜や副菜など2品同時に調理する経験をさせ、中学校への学習につなげていきたいと考えました。
この題材につながる本題材「いためて作ろう!朝食のおかず」は、B「衣食住の生活」の(2)「調理の基礎」のア(ア)、(イ)、(ウ)、(エ)「材料に適したいため方」及びイと、B(1)「食事の役割」のアとの関連を図っています。「家族においしい朝食のおかずを作ってあげることができる自分になる」という思いや願いを子供から引き出し、課題として設定し、いためる調理の実習とその評価・改善を繰り返し行い、いためる調理の調理計画や調理の仕方を身に付けるとともに、よりよい生活の実現に向けて考え、工夫しようとする資質・能力の育成につなげたいと考えました。
3 題材の目標
○食事の役割や食事の仕方、調理に必要な材料の分量や手順が分かるとともに、調理に必要な用具の安全な取扱い、調理に適した切り方、後片付け、材料に適したいため方について理解し、それらに係る技能を身に付ける。
○おいしく食べるためにいためる調理の調理計画や調理の仕方について、問題を見いだして課題を設定し、様々な解決方法を考え、実践を評価・改善し、考えたことを表現するなどして課題を解決する力を身に付ける。
○家族の一員として、生活をよりよくしようと、おいしく食べるためのいためる調理の調理計画や調理の仕方について、課題の解決に向けて主体的に取り組んだり、振り返って改善したりして、生活を工夫し、実践しようとする。
4 題材の評価規準
●知識・技能
・食事の役割や日常の食事の大切さと食事の仕方について理解している。
・調理に必要な材料の分量や手順について理解している。
・調理に必要な用具の安全な取扱いについて理解しているとともに、適切に使用できる。
・調理に適した切り方、後片付けを理解しているとともに、適切にできる。
・材料に適したいため方を理解しているとともに、適切にできる。
●思考・判断・表現
おいしく食べるためにいためる調理の調理計画や調理の仕方について問題を見いだして課題を設定し、様々な解決方法を考え、実践を評価・改善し、考えたことを表現するなどして課題を解決する力を身に付けている。
●主体的に学習に取り組む態度
家族の一員として、生活をよりよくしようと、いためる調理の調理計画や調理の仕方について、課題の解決に向けて主体的に取り組んだり、振り返って改善したりして、生活を工夫し、実践しようとしている。
5 指導のアイデア
本題材は問題解決的な学習過程を大切にし、全10時間扱いで実施します。題材の導入においては、第5学年で学習したゆでる調理と今回扱ういためる調理の特徴を比較し、それぞれの調理方法のよさや違いに気付かせ、いためる調理のよさを実感できるようにします。10時間の題材の中で、2回の調理実習を設定し、1回目は2種類の野菜(キャベツとにんじん)をいためます(1人調理)。2回目は2種類の野菜いための調理を生かして、子供が家庭実践を想定して野菜を選び、3種類の野菜いための調理をすることとしました(1人調理)。題材を通して、「家族においしいと言ってもらうには」という課題を貫くことで、いためる調理のレベルアップを目指すとともに、自分と家族の朝食を見つめ直したり、日常の食事の大切さに気付いたりすることができるようにします。これにより、学校での学びを家庭生活に生かすことができるようにします。
6 題材の指導計画(全10時間)
時間 | 学習内容 |
---|---|
1・2 | ゆでたじゃがいもといためたじゃがいもを食べ比べ、いためる調理のよさを探ろう。朝食の大切さと食事の仕方について理解し、生活を振り返り、課題を設定しよう。 |
3 | 野菜の種類に応じたいため方を理解し、2種類の野菜(キャベツとにんじん)をおいしくいためる調理計画を考えよう。 |
4・5 | 2種類の野菜をいためて調理し、順序や切り方について振り返り、よりよい調理の仕方について考えよう。 |
6・7 | 朝食に合う三色野菜いための材料や調理の仕方や手順について考え、調理計画を工夫しよう。 |
8・9 | 三色野菜いためを調理しよう。 |
10 | いためる調理の学習を振り返り、家庭生活に生かそう。 |
7 学習の流れと子供の様子
1・2時間目
〔ねらい〕
じゃがいも(ゆでたものといためたもの)を食べ比べ、いためる調理のよさを探ろう。朝食の役割や大切さ、食事の仕方について理解し、生活を振り返り課題を設定する。
〔主な学習活動〕
①じゃがいも(ゆでたものといためたもの)を食べ比べ、同じ食材でも調理方法が変わることで、風味や食感などが変わることを確かめる。
②試食を通して感じた「いためる調理のよさや特徴」をまとめる。
③朝食の役割や大切さ、食事の仕方について考える。朝食作りにおいて家族が大切にしていることを知る。
④「家族においしい朝食のおかずを作ってあげることができる自分になる」という課題を設定し、題材を通してできるようになりたいことや考えたいことを話し合う。
A児の姿
いためたじゃがいもはとても風味がよく、おいしかったです。朝食のおかずに取り入れるには、いためる調理をしっかり身に付ける必要があるな。
3時間目
〔ねらい〕
野菜の種類に応じたいため方を理解し、2種類の野菜(キャベツとにんじん)をおいしくいためる調理計画を考える。
〔主な学習活動〕
①教師の示範により、いためる調理の手順や野菜の種類に応じたいため方を確認する。
②2種類の野菜(キャベツとにんじん)をおいしくいためるために、切り方やいためる順序などについて考え、調理計画を立てる。
A児の姿
キャベツとにんじんは、硬さが違うから、ちょうどよくいためるために切り方を変えなくてはいけないな。にんじんを薄く切るのは難しそうだな。野菜いためをおいしく仕上げるポイントの中でも、切り方、火加減の調節を頑張るぞ。
板書
4・5時間目
〔ねらい〕
2種類の野菜をいためて調理し、順序や切り方について振り返り、よりよい調理の仕方について考える。
〔主な学習活動〕
①いためる順序や切り方に気を付けながら、2種類の野菜(キャベツとにんじん)をいためる。
②調理を振り返り、改善点を出し合う。
A児の姿
にんじんの切り方は、ペアの友達からも、「猫の手が上手だね」と言ってもらいました。できるだけ薄く切ったので、キャベツもにんじんもちょうどよい歯ごたえでいためることができたよ。ただ、切るのに時間がかかってしまったので「短時間でおいしく作る」は△かな。朝食のおかずは手早く作ることが大切だと家族も言っていたので、次はもっと時間を意識して調理できるといいな。
学習カード
にんじんを切る様子
6・7時間目
〔ねらい〕
朝食に合う三色野菜いための材料や調理の仕方や手順について考え、調理計画を工夫する。
〔主な学習活動〕
①2種類の野菜(既習の野菜から選ぶ)にプラス1~2種類(自由)の野菜を選び、朝食に合う三色野菜いための材料や調理の仕方、手順について考える。
②家族の好みや野菜に応じて味付けを決める。
③調理台を共に使用するペアでコンロ台や調理台の使い方や順番を話し合い、調理計画を共有する。
④家族とともに朝食を食べる場面を想定し、盛り付けなどを考える。
A児の姿
にんじん、ピーマン、じゃがいもの野菜いためを作ります。もう一度、にんじんを手早く切ることができるようになりたいから、にんじんを選びました。いためたじゃがいもは風味がよく、家族も好みそうだったので、選びました。にんじんやじゃがいもの歯ごたえに合わせて、ピーマンにしました。切るのに時間がかかってしまうので、自分が切り終わるまで、ペアの友達には先に配膳や後片付けを進めてもらい、いため始めるのを待っていてもらうようにします。試食の場面では家庭で実践することを考えて、おいしそうに盛り付けたいです。
デジタル学習カード
8・9時間目
〔ねらい〕
三色野菜いためを調理する。
〔主な学習活動〕
①三色野菜いためを調理する。
A児:にんじん、ピーマン、じゃがいも
B児:にんじん、ピーマン、キャベツ
②家庭実践に向けて、調理計画や調理の仕方について振り返るとともに、ペアやグループでアドバイスし合う。
A児の姿
「手早く、短時間で」を意識したので、この調子で家庭でも実践できるといいなと思いました。ペアのBさんは、配膳や後片付けなどをしながら次の動きを考えていたので、自分もまねしたいです。いためるとピーマンのかさが思っていたよりも減ってしまったので、家庭実践に向けて、もう一度分量を考えたいです。
A児が調理した三色野菜いため
10時間目
〔ねらい〕
いためる調理の学習を振り返り、家庭生活に生かす。
〔主な学習活動〕
①これまでの調理を振り返るとともに、調理計画と調理実習の結果を見比べて、家庭実践に向けて大切にしたいことを考え、話し合う。
②学習全体を通して、食事の役割や食事の大切さについて、考えたことやこれからに生かしたいことを発表する。
A児の姿
家族4人分の材料を考えました。ピーマンはかさが減るので3つ使おうと思います。切り方、火加減の調節など、学校でできるようになったことをしっかり生かしていきたいです。家族みんなが1日を元気に、笑顔で活動することができるといいな、という思いを込めて、家庭での実践にチャレンジしたいです。
8 学習を振り返って
①家族の一員として朝食のおかずを作れるようになりたい、という思いを題材を通して高め、2回目の調理実習を課題解決の場として位置付けました。よりよい生活の実現に向けて考え、工夫しようとする資質・能力の育成につなげるために、問題意識をもち、家庭生活を見つめ直して課題を設定し、調理実習等の実践的・体験的な活動を行い、評価・改善するといった問題解決的な学習の一連のプロセスを今後も大切にしたいと感じました。
②1つの題材の中に、1人調理を複数回位置付けたことで、調理に臨む子供の目的意識の明確化につながりました。年間計画を立てる際には、指導内容や指導事項の漏れや重複がないよう確認するとともに、食の題材における2学年間の系統性を踏まえて、この題材では何に重点を置くのかを教師が明確にもつことが大切であると改めて感じました。
構成/浅原孝子 イラスト/畠山きょうこ