ウェルビーイングを学校でつくる! ~SDGsの授業プラン #07 「Goal 3 すべての人に健康と福祉を」その2|工藤美希 先生
全国各地の気鋭の実践者たちが、SDGsの目標に沿った授業実践例を公開し、子どもたちの未来のウェルビーイングをつくるための提案を行うリレー連載。今回の提案者は、北海道の工藤美希先生です。
執筆/北海道公立中学校教諭・工藤美希
編集委員/北海道公立小学校教諭・藤原友和
目次
1 はじめに
函館市立中学校で教諭をしております、工藤美希と申します。専門としては保健体育を教えています。
現在勤めている中学校は、今年度から隣接校と統合しました。小規模校ではありますが、新校舎が建ち、これから歴史をつくっていくことがとても楽しみです。
現在は3年生を担任しており、卒業第1期生として歴史を創り上げているところです。
2 SDGsのGoal 3について
SDGsのGoal 3「すべての人に健康と福祉を」では、誰ひとりとして取り残されず、地球上のすべての人々が心身共に健康で社会的にも満たされた生活を送ることを目標としています。
しかし、WHOの2020年の報告では、5歳未満の子どもが年間500万人(推定)も亡くなっていることがわかります。そのうち8割がサハラ以南のアフリカと南アジアの子どもたちで、原因は十分な医療を受けられないこととされています。
他に「予防治療ができず感染症に苦しむ人がいる」という問題もあります。世界三大感染症でもあるエイズ・結核・マラリアは、日本など先進国では大きな問題になっていませんが、発展途上国では未だに年間250万人もの人々が亡くなっています。
2030年までのGoal達成への道のりは遠いですが、私たちにできることは少なからずあることも忘れずに過ごしていきたいと思います。
3 SDGsのGoal 3を扱った授業の実際
⑴学年 中学校3年生
⑵教科及び領域 保健分野「感染症とその予防」
⑶ねらい SGDs Goal3の目標を理解し、「私たちにできることは何か」を考える
⑷教材 「健康な生活と病気の予防」(『中学保健体育』学研)
⑸授業展開
保健の授業では、感染症とその予防について学習します。
その中で、生徒がどのくらい感染症を知っているのかを踏まえ、現在も世界に存在する感染症、日本ではどんな感染症が流行っているかについての理解を深めます。
また、世界三大感染症についても学習します。三大感染症は、日本では感染が広まっていませんが、発展途上国では、ワクチンを接種できないために感染している子どもや人がいることについても理解を広げていきます。
①発問:「感染症」と聞くと、皆さんはどんな感染症を思い浮かべますか?
グループで話し合ったあと、全体で考えを共有しました。
●新型コロナウイルス、インフルエンザ、ペスト、梅毒
●結核、マラリア など
教科書を開き、掲載されている感染症を確認し、世界三大感染症について説明しました。
「エイズ・結核・マラリア」は生徒も耳にしたことがある感染症ですが、日本では現在ほとんど発症が確認されていないことを押さえます。
「じつは、これらの感染症はワクチンが開発されているにもかかわらず、発展途上国ではワクチンを打てず、子どもが感染して亡くなっているのです」。
この話をしたところ、生徒はワクチンを打てないことは理解していましたが、もしワクチンを打つことができていたら感染を防ぐことができた上に、未接種が原因で年間に250万人もが亡くなっているという世界情勢に驚いた様子でした。
このことからSDGsのNo3の2030年までの目標を提示して、本題に繋げました。
②発問:「すべての人に健康と福祉を」を考えるために、世界で起こっている健康・福祉問題について知っていることを交流しましょう。
ここではGoogleJamboardにグループで書き込むこととしました。
●十分な医療を受けることができない国がある。
●国境なき医師団がいても、世界のすべての子どもを見ることはできない。
●医師の数が足りない。
●未だに紛争している国がある。きれいな水が飲めない。
など様々な意見がありました(下の共有画面参照)。
③発問:目標達成のために「私たちにできること」はどんなことですか?
ここではGoal3の内容を改めて確認し、再度GoogleJamboardでグループで書き込む活動を行いました。
●募金活動を行う。
●世界で起こっている問題についてもう少し詳しく知ること。
●自分が健康でいること。
などが出されました。生徒の書き込みで多かったのが募金活動でした。
また、教師側からは、「私たちができること」に補足として、
●自分自身の健康を守ること
●交通事故を起こさない
●アルコールや薬物依存にならない
などを説明しました。
自分が健康であれば、寄付や募金活動などを実践でき、幸福であれば、世界の人々について考えることができます。自分が健康で幸福でいることは、世界の人々の健康と福祉を実現させる第一歩であるだけではないのです。
そして、「私たちができること」を行動に移せるともっとよいと話し、本時の授業を終えました。
4 授業の成果と課題、他教科・他領域との繋がり
学校ではどの授業でもSDGsについて触れているため、世界で起こっている健康・福祉問題について、真摯に考え、答えることができたのは成果です。
また、学校の教育活動で募金を行っているので、「私たちにできることはなんだろう」という発問に対し、多くの生徒が「募金活動」と答えました。
しかし、Goal 3に向かって「私たちにできること」については、実際に世界で起こっていることを動画で見せたり、もっと詳しく世界情勢について授業したりすることで、「健康であれば、世界の人々のことを考えることができる」 「自分が健康で幸福であること」などと、より幅広く生徒の考えを引き出せたのかもしれません。
SDGsについて私自身の知識が乏しかったこと、もっと勉強するべきだったことが反省点です。
今後は、生徒たちが学校教育を通して、様々な場面でSDGsに関して学べる授業を展開していきたいと思います。
さらに、ただ知識を得ただけではなく、考えたことを実行できるようになることを目標にしていきたいです。
【参考文献】
①「朝日新聞 SDGsACTION↑」
②「日本ユニセフ協会(ユニセフ日本委員会)」 (unicef.or.jp)
この連載は、毎週木曜日のAM6:00に公開します。どうぞお楽しみに!