外部講師による小6「がん教育 いのちの授業」 実践レポート 【PR】
「がん教育」シリーズ第1回に続き、2回目の今回は、実際に行われている「がん教育」の授業レポートをお届けします。
平成29年・30年改定の小・中・高等学校学習指導要領では、生活習慣病などの予防と回復等について学習する際に、小学校では「がんについて触れること」、中学・高等学校では「がんについても取り扱う」ことが明記され、小学校では、5・6年生の授業で扱うこととされています。文部科学省は、専門知識を持った医療従事者やがん経験者等の外部講師を積極的に活用することが重要だとしていますが、実際には外部講師を招いてのがん教育の授業は、依然として一部の学校に留まっているのが実態です。そこで今回は、保険会社のアフラックが力を注ぐがん教育支援事業の取組のうち、外部講師派遣に着眼し、がん教育の出張授業がどのようなものなのか、見ていきましょう。
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目次
講師は、アフラックのCMにも出演している岸田徹さん
外部講師として登壇するのは、NPO法人がんノートの代表理事・岸田徹さん。アフラックのテレビCMにも出演されていたので、見たことがある方もいることでしょう。岸田さんは25歳のときに胎児性がんで闘病した経験をもとに、がんに関する啓発活動をされています。
<プロフィール>
岸田徹
NPO法人がんノート代表理事。25歳で「胎児性がん」の告知を受ける。3か月の抗がん剤治療、2度の手術を受けるが2年半後に再発。 再度手術を受け、現在は経過観察中。自身の闘病経験から「患者側の情報も医療と同じくらい大切だ」ということを考え、2014年からがん経験者によるインタビューYouTube番組「がんノート」をスタート。“一歩踏み込んだセンシティブな患者情報”をユーモアを交え発信。数多くのメディアにも取り上げられ、多岐にわたり活動を行っている。
授業実践レポート! @涌谷町立箟岳白山小学校
2023年11月、外部講師による授業が行われたのは、宮城県涌谷町立箟岳白山小学校の6年生のクラス。実際に行われた授業を、導入→展開→終末という流れで、授業展開の詳細を紹介します。
①導入 「自己紹介で場を温め、クイズでがんのイメージ共有と自分事化」
冒頭では、事前にアンケートでとっていた、子どもたちの「がんに対するイメージ」を画面に表示させながら、正しいイメージへ少しでも変わればという岸田さんの想いを共有しました。また、がんノートの活動などの動画を子どもたちに見てもらい、岸田さんは子どもたちの関心を高めていました。
岸田さんによる授業解説「話を聞いてもらえる環境づくり」
授業を通じて、子どもたちに「がん」を自分事化してもらうにあたり、まずは子どもたちとのラポール(信頼関係)を築くように心がけています。自己紹介等の冒頭では流行りのアニメやキャラクターに触れて、子どもたちとの共通の話題を探したり、1クラス程度の人数であれば名簿をご用意いただき児童生徒の名前で呼んだりして、“外部”講師でありながら、短時間でもグッと子どもたちとの距離が縮まるよう、コミュニケーションを積極的にとっています。
次に、クイズ形式で出題しながら、「がんは身近なものなんだよ」「がんは治る病気にもなってきたよ」という話へと展開していきます。冒頭でも紹介した事前アンケートにより、がんに対して多くの子どもたちが「死ぬ病気」「怖い」「つらい」というイメージを持っていることを把握していた岸田さんは、子どもたちの様子をうかがいながら、授業に参加してもらいやすい環境をつくっていました。
岸田 「1年間にがんと診断される人は、日本全国で何人くらいいるでしょうか? 1番:約10万人、2番:約25万人、3番:約50万人、4番:約100万人。さあ、どれでしょう?」
答え「実は、1年間で日本全体で約100万人が診断されていると言われています。」(※1)
岸田 「では、その約100万人のがん患者さんのうち、5年生存率は全体でどのくらいでしょうか? 1番:約25パーセント、2番:約45パーセント、3番:約65パーセント、4番:約85パーセント。」
答え「正解は、今は約65パーセントくらい。(※2)ただ、これは5年以上前に治療されている患者さんの数値で、日々治療も進歩してきていて、だんだん上がってきているからね。」
岸田 「一生のうちに自分ががんになる割合は、何人にひとりぐらいの割合でしょうか? 1番:2人にひとり、2番:4人にひとり、3番:6人にひとり、4番:8人にひとり。」
答え「一生のうちにがんになる割合は、2人にひとり。(※3)だから、がんは誰にでも起こりうる病気なんよね。」
岸田さんによる授業解説「目線を合わせた説明」
内容が難しいと子どもたちに感じとられてしまうと、そこで集中力が途切れてしまうこともあるので、資料が難しく見えないようにイラストやクイズ等を取り入れ、文字数を抑えるようにしています。 また、できる限り専門用語を避けたり、聞き手の年齢に合わせた分かりやすい表現を意識したりしています。
②展開 「正しいがんの知識を身に付け、がん患者の気持ちを理解する」
授業が進み、「がん=死」のイメージが緩和され、身近なこととして感じられるようになったところで、がんの基礎知識や、岸田さんの体験談を聞くことによって、がんのことをさらに詳しく学んでいきます。岸田さんはここでも、アニメやキャラクターなどを引き合いに出すなどして、子どもたちが関心を持続できるように配慮して話を進めていきました。
●がんの基礎知識
がんは、細胞がコピーミス(遺伝子の突然変異)から無秩序に増えていくことによって起こる病気であること、原因が分からないがんもあるが、がんになるリスクを少しでも下げるには生活習慣も大事なこと(タバコを吸わない、食生活に気を付ける、適度な運動をするなど)、がんの治療法やがん検診で早期発見できれば、進行したがんと比べて5年生存率が明らかに高くなることなどを説明しました。
●闘病の実体験の話
岸田さん自身の「闘病」の話。スライドで闘病時の写真を見せながら、ご自身のがんの発見から実際の症状まで、ユーモアを交えながら説明していきます。さらに、がん治療の内容にも触れながら、どんな気持ちだったか、友達からのどんな言葉が心の支えになったかなど、具体的なエピソードも紹介していました。
岸田 「最初は首の根元に小さな腫れ物ができたんやけど、それを無視して働いていたんよね。そしたら、体調がどんどん悪くなってきて、数か月後、大きな病院できちんと検査を受けたときには、誰もが分かるこぶし大ぐらいまでに膨らんでいて……。でも痛くなかったから、それが悪いもんやと思わんかったんよね。まさかそれが、がんやったとは……。
そのあと僕は、抗がん剤と手術の治療を受けたんやけど、抗がん剤の副作用で歯が痛くなったり、高熱が出たり、味覚などの異常が発生したり……。薬によっていろいろな副作用があって、今は髪が抜けない抗がん剤もあるけれど、僕が治療で使ったのは髪が抜ける抗がん剤やってん。」
授業の冒頭では、途中で気分が悪くなったときには気軽に知らせてほしいと子どもたちに伝えていました。また、説明の途中で手術跡の写真を提示する際は、「見たくない人は目を伏せていてね」と子どもたちに配慮していました。
③終末 「がんを経験したことで自分の大切なものに気付いた」
岸田さんががんになって気付いた<家族や友人への感謝の気持ち>を語っていきます。その中では、「がん=死」ではないこと、残された時間、同じ時間を過ごすなら、少しでもポジティブな捉え方をすることによって希望を持てることなどが語られていました。
岸田さんの授業でのラストメッセージは、「幸せだから笑うのではなく、笑うから幸せ」でした。
これは、岸田さんがYouTube番組「がんノート」の中でインタビューした女性が語ってくれた想いだそうです。その女性は、高校生のときにがんと診断され、22歳で余命半年と言われていた中でも、前向きに生きる強い心を持っていました。岸田さんはこの言葉を聞いて、「笑うことの大切さ」を再認識させられたそうです。普段の生活の中で、大変なときや辛いときなど思い悩んだときには、この言葉を思い出して「少しでも笑ってほしい」と、岸田さんは子どもたちに伝えます。
子どもたちは岸田さんの体験談に触れることで、「がん」について正しく知り、正しく恐れ、正しく備える第一歩につながったのではないでしょうか。実際に授業後にアンケートをとると、がんに対するイメージが「治る可能性もある」「早期発見が大事」に転じる子どもが多く見られるそうです。
最後に岸田さんは、今日のこの授業で感じたことを家族でも話してみるように伝え、授業を終えました。
岸田さんによる授業解説「恐怖をあおらない」
授業前の事前アンケートでは、「がんは死ぬ病気」だとイメージしている子どもが少なくないため、授業が暗くなり過ぎないよう笑いも所々で交えるようにしています。がん経験者の私がそうすることで、必ずしも「がんは死ぬ病気」ではなく、「治療を経て元気に生きる」こともできるということを「見て」もらうことを通して、正しい知識を身に付けてもらうだけではなく、がんとの向き合い方の理解にもつながっていけばいいなと思っています。
医療の発展により、がんは必ずしも死ぬ病気ではなく、早期に発見し適切に治療することで、今は共生していく世の中になっています。また、がんは感染するものではなく、一人ひとりの健康意識によってリスクを下げることもできますし、ワクチンによって予防できるがんもあります。がんを正しく知り、恐れ、備えることによって、児童生徒本人が将来がんになっても適切に向き合ってほしいですし、周りの人ががんになっても、その児童生徒らしさをもって接してほしいと思っています。
【参考】
※1 全国がん登録罹患データ 2019年:999,075例、
国立がん研究センター がん情報サービス「がん統計」:がん罹患数予測(2023年):1,033,800例
https://ganjoho.jp/reg_stat/index.html
※2 院内がん登録 2014-2015年 5年生存率 全がん ネットサバイバル集計66.2%
地域がん登録 2009-2011年 5年生存率 全がん 64.1%
※3 国立がん研究センター がん情報サービス「がんの基礎知識 がんという病気について」
https://ganjoho.jp/public/knowledge/basic/index.html
がん教育は、なぜ大切なのか?
今回、アフラックの「がん教育支援」を活用して、外部講師による授業を実施した箟岳白山小学校。佐藤昭彦校長先生に、外部講師授業実施の意図をお聞きしました。
「がん」という病名をほとんどの子どもは聞いたことがあると思います。しかし、死につながる怖い病気という認識を持っている子どもが多い。実際、大人でも「がんになったら治らない」「不治の病」という見方をしてしまう人も少なくありません。
今回、本校では初めて外部講師による「がん教育」に取り組みました。講師の岸田さんの明るくポジティブな講義に、子どもたちも教職員も見事に引き込まれてしまいました。「大きく考えろ。長い目で物事を考えよう。人生で起こるすべてのことに意味がある。」岸田さんのその教えこそが、がん教育も含めて子どもたちへの人生への熱いメッセージになりました。それだけで、今回の岸田さんを招いての「がん教育」は大変意味深いものになりました。
岸田さんの前向きな生き方、考え方に、子どもも教職員も心を揺さぶられる思いであったろうと思います。今後も、外部講師を活用した「がん教育」に取り組んでいきたいです。
涌谷町立箟岳白山小学校・佐藤昭彦校長
がん検診の重要性や、がんの様々な啓発活動にも積極的に取り組んでいる、医療ジャーナリストの森まどかさん。民間の果たす力が、これからの「がん教育」には欠かせないと訴えます。その意義と必要性についてお尋ねしました。
学校における保健・医療分野の教育は、生涯を通じた健康医療リテラシーの向上につながり、自分の健康を守るだけでなく、将来的にがん対策として大きな意味を持つと期待しています。しかし、教育現場だけで実施するには限界があることも確かです。民間の多様な人材やノウハウを活用することによって、子どもたちが視野を広げて健康やいのちについて捉える機会につながると考えます。社会全体で「がん」への理解を深めていくためにも、学校と民間の協業が重要だと感じています。
医療ジャーナリスト・森まどかさん。報道・情報番組での解説、WEBメディアでの執筆等に加え、「がん」啓発に関する医療コンテンツの企画・プロデュースは20年を超える。
教育現場では、ハードルが高く感じられるがん教育の授業。しかし、子どもたちの将来に必ず役立つであろう教育の機会を保障することは、学校の責務でもあります。そのハードルを少しでも下げてくれる外部講師による出前授業は、学校の負担を大きく軽減してくれるのではないでしょうか。
アフラックのがん教育支援を活用しよう!
自分の学校でもがん授業をしてみよう!と考えても、「何から始めたらいい?」「外部講師はどうする?」「保護者にどう案内する?」など、学校や現場の先生にとっては初めてのことに疑問が山積となることでしょう。そんな時は、がん教育に関するあらゆるお悩みを生命保険会社のアフラックがサポートします。児童生徒対象の授業、教職員の研修、いずれにも対応していて安心です。
●外部講師の紹介
医療従事者、がん経験者など、授業の内容に最適な外部講師を紹介し、授業の内容を企画・提案します。
●がん啓発ツールの提供
がん学習パネル、肺がん模型、乳がん検診体験模型、がん教育小冊子等の、児童生徒の理解が深まる啓発ツール類を提供します。
がん教育の実施を検討している学校は、問合せフォームからご連絡ください。
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【がん教育シリーズ第1回】 「がん教育」外部講師授業で、がんを身近なものとして理解する教育を実現も併せてお読みください。→https://kyoiku.sho.jp/283739/
文・構成/田口まさ美 撮影/岡本明洋