メーカーに聞く「学校用ドリルソフト」製品レポート #2|ラインズeライブラリアドバンス(ラインズ株式会社)
1人1台端末の整備により、注目されているデジタルコンテンツ。デジタル教科書は国の施策により配布が始まっている上、採点の手間がないなどのメリットから、教育現場でのドリルソフトの導入率・活用率も高まっている。
では「学校用ドリルソフト」を提供している各社の製品には、どんな特徴があるのか。小学校の教科書が新しくなる2024年度へ向けての対応を含め、自社製品のよさと展望をメーカーの開発担当者に聞いた。今回はその2回目。(取材・文/村岡明)
今回の取材先
ラインズ株式会社 文教グループのみなさん
目次
製品概要
製品名称は「ラインズeライブラリアドバンス」(以下eライブラリ)。2023年11月現在、全国の小中学校9,000校以上で導入されています。問題数は57,000問以上。小中学校・高校・大学・塾など様々な教育機関にサービスを提供している、同社の主力製品の一つです。
高いカバー率と指導資料の充実
「eライブラリ」には、小中学校のほとんどの教科(国語・算数・理科・社会・数学・英語の5教科のほか、中学校では、技術家庭・保健体育・音楽・美術)の教材が収録され、9学年分の教材が全て学習可能です。ドリル教材はもちろん、解説教材、確認問題などが揃っています。このカバー率の高さが特徴の一つです。
さらに先生向けには、各単元の解説教材、図版集、提示用のフラッシュカードなど、教科書ページなどから簡単に検索できる指導資料のデータベースが充実しており、授業の教材準備に役立てることができます。
子供向け機能
子供たちに出される問題は、単に紙のドリルをデジタル化したものではありません。前時や本時の授業内容を確認するような単元の理解度テスト、自分の学習傾向を把握し、次の学習につなげる見通しがもてるような「ふりかえり機能」など、授業で活用しやすくなっています。
また、問題を解く際に試行錯誤しやすいように、学習履歴として残せる「手書きメモ機能」もあります。
また、家庭学習との連携機能を充実させていることも特徴の一つです。家庭のパソコンから使えることはもちろん、家庭にWi-Fi環境がない場合は、先生からの課題や、ドリル・解説教材等をダウンロードして持ち帰りオフラインで学習できる機能もあります。
出題の工夫
子供たちの日々の学習や単元の理解度テストの結果に応じ、一人ひとりの理解度にあわせた課題を自動構成して出題できます。必要に応じて学年・教科をまたいで出題したり、解説教材を提供したりするAI型ドリルも大きな特徴です。たとえば理科の濃度計算でつまずきがある場合、算数・数学のナビゲーションもなされます。
また、「AI型のドリルでは苦手ばかりナビゲートされて、子供たちのやる気がそがれる」や「主体性が損なわれる」という声が聞かれることもあります。eライブラリでは、「得意をのばそう!」「ためしてみよう!」など、子供たちが理解状況や興味関心に応じて学び方を選べる入り口があり、主体的に学べるような工夫がされています。
中学校の定期試験対策
中学校のほとんどの教科をカバーしていることもあり、中学校での活用率も高いのがeライブラリの特徴です。定期テストの範囲は、教科書のページで示されることが多いので、教科書ページや単元名で検索して、その範囲の学習に絞ってすぐに取り組める機能があります。
教科の特性上、一部非対応教科があるものの、簡単に教材を探しだせるため、かなり活用いただいている機能です。
管理者向け機能
自治体で導入いただいている場合は、教育委員会にて各学校の活用状況が把握できる機能があります。先生向けの機能には、子供が学校、家庭それぞれでどれくらい取り組み、正答率がどれくらいかなど、子供たちの理解状況や学びに向かう姿勢を一人ひとり詳細に把握できる成績管理メニューがあります。
また、単元の理解度テストの結果から学年や教科を越えて、一人ひとりの理解度にあわせた課題を自動構成して出題する機能や、先生の目的に応じて子供たちに必要な教材を適切なタイミングで設定して出題する機能もあります。
トータルな学習環境を提供
eライブラリには、追加で活用いただけるオプションコンテンツも用意しています。
学研(Gakken)や小学館の百科事典、印刷して使えるプリント教材コンテンツなどです。中学校向けには、過去3
年間の公立高校入試問題があり、この問題をWordで編集することもできます。加えて最新10年間分の過去問題は、大問ごとにデータベース化して提供しています。
日常の授業で活用いただける豊富な教材、家庭との連携を志向した機能とサービス、様々なオプションコンテンツなどを通じ、トータルな学習環境を提供するのがeライブラリです。
取材を終えて
古くからデジタルドリルに取り組んできた歴史もあり、トータルで学習環境を考えられているという印象のある製品です。お使いになっている先生に筆者が感想をうかがったところ、「解説資料が充実していた」「ノート作りの参考になった」といった声をいただきました。また、今やほとんどの会社の製品に搭載されているAI機能を選択的にしている点は、評価される先生は多いのではないでしょうか。
一方で、学ぶ楽しさという点では課題があるのではないかと感じています。お使いになっている先生からは「紙のドリルと比べて離脱しやすい」「定着しにくい印象」といった意見を聞いています。ただ、このあたりは、どのデジタルドリルにも共通した課題かもしれませんが。
取材・文/村岡明
国語教科書編集者を経て「ジャストスマイル」など教育ソフトを多数企画する。その後教職員向けのネットマガジンを創刊。ソフトウエア開発、Webサービスの開発を20年以上経験している。