チームとしての学校:保護者との関係づくりの要諦とは?
これからの学校の在り方として示されている「チームとしての学校」、そして新学習指導要領の理念である「社会に開かれた教育課程」を実現していくには、家庭や地域社会との連携が不可欠です。保護者の思いをどう受け止め、学校経営に生かしていくか。令和時代の保護者との関係づくりを考えます。
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目次
保護者の多様なニーズが学校と教員の負担増になっている
一時期、「モンスターペアレント」という言葉がマスコミで盛んに報じられました。これは学校に対して理不尽な要求、クレームを突きつけてくる保護者のことを指した造語であり、こうした保護者の存在が学校や教員の悩みの種となるケースがあります。
もちろん、こうした保護者は特殊な例ではありますが、現代の保護者が学校に求めるニーズは多様化しており、その対応が教員の負担感につながっているという実態もあります。文部科学省が2014年に実施した「教職員の業務実態調査」では、副校長・教頭の60%以上、教諭では70%以上が、「保護者・地域からの要望・苦情等への対応」に負担感を感じていると回答しています。
一方で学校には、子どもを取り巻く状況の変化や複雑化・困難化した課題に向き合うため、教職員だけでなく、多様な背景をもつ人々がその専門性に応じて学校運営に参画する「チームとしての学校」への転換が求められています。そして、その「チーム学校」を実現するには、保護者や地域住民との連携・協働体制を構築することが不可欠となります。保護者という存在を「負担」ではなく、いかに「サポーター」として活用できるかが、これからの学校経営のカギとなっていくでしょう。
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家庭・地域との連携・協働のもと「チーム学校」の整備を
2015年12月の中央教育審議会答申「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について」では、学校や教員が、子どもと向き合い、必要な資質・能力を育むための教育活動に重点を置いて取り組むことができるよう、学校と家庭や地域との連携・協働によって子どもの成長を支えていく「チームとしての学校」を整備することの必要性を指摘しました。さらにはコミュニティ・スクールや地域学校協働本部等の仕組みにより、学校を核とした地域づくりを推進し、社会総がかりで教育を進めていくことを求めています。
「チームとしての学校」と家庭、地域との関係
中央教育審議会「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について(答申)」より
(学校と家庭、地域の関係の変容)
元来、学校は地域の中にあるものであり、地域の協力や支援のもと、教育活動を展開してきた。その上で、近年は家庭や地域の力を学校に取り入れていくため、学校評議員制度、学校運営協議会や学校支援地域本部等の仕組みや学校の情報公開の取組が進められてきたところであるが、高齢化や過疎化が進展する中、学校と家庭や地域との関係についても従来とは変化が見られる。
学校が抱える課題が複雑化・困難化している状況の中、課題を解決していくためには、学校がより一層地域に開かれ、地域住民や保護者等が学校運営に対する理解を深め、積極的に参画することで、子供の教育に対する責任を学校、家庭、地域と分担していくことが重要である。
(学校と地域との連携・協働)
我が国の学校や教員は、欧米諸国の学校と比較すると、多くの役割を担うことを求められており、そのことには、子供に対して総合的な指導が可能であるという利点がある反面、役割や業務を際限なく担うことにもつながりかねない側面がある。
学校や教員の基本的な役割は、子供に必要な資質・能力を育むことであることから、学校と、家庭や地域との連携・協働によって、共に子供の成長を支えていく体制を作っていくことにより、学校や教員が、学校教育を通じて子供と向き合い、必要な資質・能力を子供に育むための教育活動に重点を置いて、取り組むことができるようにすることが重要である。このため、「チームとしての学校」としての体制を整備するとともに、本審議会の答申「学校と地域の連携・協働の在り方や今後の推進方策に関する答申」も踏まえ、コミュニティ・スクールや地域学校協働本部等の仕組みによって、学校と地域が連携・協働して、学校を核とした地域づくりを推進し、社会総掛かりで教育を進めていくことが求められる。
また、子供の安全を確保する観点からも組織的かつ継続的に子供の安全確保に取り組むなど、地域との連携・協働やボランティア等の地域人材との連携・協働は欠かすことのできないものであり、引き続き取組を進めていく必要がある。
さらに、青少年団体やスポーツ団体、あるいは経済団体、福祉団体など地域で活動している団体は、各種の集団活動を通じて、子供たちに社会性、協調性や積極性を養うための活動等に取り組んでおり、教育委員会や学校は、これらの団体と連携・協働し、子供たちの様々な活動を充実していくことが重要である。
(学校と家庭や地域との連携・協働、PTAの活動)
保護者が子供に対して行う家庭教育は、教育の出発点である。社会全体で子供の成長を支えるためには、学校や地域とともに、家庭との連携・協働により教育活動を充実していくことが重要である。
学校が家庭や地域との連携・協働を進めるに当たっては、PTAの活動が重要となる。PTAは、子供たちの健全育成を目的に、保護者と学校の協力により、学校及び家庭における教育に関し理解を深める様々な事業を行っており、学校の身近な応援団としての役割を果たすことが期待されている。
特に、全国的な傾向によれば、多くの地域で若手の教職員が増加していることもあり、PTA活動を通じて保護者の経験等をいかした様々な協力を得ながら、学校、家庭、地域の連携・協働により子供たちの生きる力を育む必要がある。
また、保護者が子どもに対して行う家庭教育を「教育の出発点」と位置づけた上で、家庭との連携・協働により教育活動を充実していくことが重要であるとし、そうした連携・協働を進めるにあたっては、PTAが学校の身近な応援団としての役割を果たすことを求めています。
新学習指導要領の理念のひとつである「社会に開かれた教育課程」を実現するためにも、保護者との連携は欠かせません。多様な思いをもつ保護者とどうコミュニケーションを図り、その思いをどう受け止めて学校経営に生かしていくか。令和時代の保護者との関係づくりについて考える必要があるでしょう。
構成・文/葛原武史(カラビナ)
『総合教育技術』2019年12月号より
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