小5国語科「複合語」全時間の板書例と指導アイデア

特集
文部科学省教科調査官監修「教科指導のヒントとアイデア」

文部科学省教科調査官の監修のもと、小5国語科「複合語」(光村図書)の全時間の板書例、教師の発問、想定される子供の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。

小五 国語科 教材名:複合語(光村図書・国語 五)

監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/神奈川県横浜市立東汲沢小学校校長・丹羽正昇
執筆/神奈川県横浜市立並木中央小学校 河村悠貴

1. 単元で身に付けたい資質・能力

本単元では、「和語・漢語・外来語」の学習を土台に、言葉の中には、複合してできている語があることを理解し、語彙を豊かにすることをねらいとしています。
高学年の子供たちは、日常の中で出合う言葉の数が増えてきています。5年生の教科書教材の中にも子供たちにとって初めて出合う言葉が多く、辞書を使っても直接掲載されていない言葉がある経験をもつ児童もいることでしょう。
この学習を通して、初めてふれる言葉でも、知っている言葉をもとに意味を類推したり、学習した複合語を自分の文章の中にも使っていこうとしたりする態度が育まれることも期待しています。

2. 単元の評価規準

単元の評価規準

3. 言語活動とその特徴

本単元のような言葉の特徴や使い方に関する単元では、ともすれば教師による講義形式、記憶中心の受け身的な学習になってしまいがちです。
そこで、今回は、活動にゲーム的な要素を取り入れ、複合語クイズを作成することを言語活動として設定しました。学習のめあてを「学級で複合語クイズ大会を開こう」とすることで、自然と相手意識をもつことができ、出題者として問題や解答を示す際、その語句の意味や用例について友達に分かりやすく示す必要感が生まれます。
教科書や辞書、インターネットなどから複合語を探したり、作ったクイズを友達と交流したりする中で、楽しみながら主体的に複合語の構成や変化について理解を深めていくことを願ってこの言語活動を設定しています。

4. 指導のアイデア

〈主体的な学び〉 学習の導入やゴールに、複合語クイズに親しむ時間を設定し、語句に対する興味・関心を高める。

子供たちが、主体性をもって粘り強く言葉を調べたり、表現したりしていくためには活動に見通しがもてて、学習に楽しさを感じることが大切だと考えます。
そこで、単元の導入では、学習のゴールを明確にすること、複合語に対する興味を引きつけることの2点をねらい、教師の作成した複合語クイズを提示します。

今回は、一つの言葉に紐付いてたくさんの複合語があることを実感できるクイズを主に、複合語の発音や略語に関する選択式のクイズなども提示し、単元のゴールに対して具体的なイメージをもてるようにします。

また、導入で興味を引き付ける他の方法として、複合語集めゲームを取り入れてもよいでしょう。
国語の教科書もよいですが、子供新聞や社会科の資料集などにもたくさんの複合語が使われています。制限時間を作ってみたり、ペアと協働させたりする活動を取り入れれば、意欲の向上につながります。このように、多様な複合語に楽しくふれる活動を最初に経験することから、複合語の種類や特徴に目が向くようにしていきましょう。

〈対話的な学び〉 ペアでの協働、グループ間の交流の時間を設定し、自分の語彙の広がりを感じられるようにする。

子供たちは一人一人、語彙力や言語環境、生活経験も異なります。お互いの感覚の中で見つけた言葉を伝え合ったり、用例を検討し合ったりすることは、自身の言葉の数を増やしていく上で大きな刺激になると考えます。

今回は、「クラスの友達に」という相手意識をもってクイズ作りを行います。身の回りで使われている言葉の中からも、ペアと協働し、言葉調べやクイズ作りをすることで、一人では気付くことのできない言葉の広がりを感じることができるでしょう。
また、自分と友達の言語感覚をすり合わせていく中で、子供たちの実生活からかけ離れすぎない、生きてはたらく語彙の習得にもつながると考えます。

作ったクイズは、グループ間で出題し合うことで、さらに語彙を広げることにつながります。
クイズを楽しむだけではなく、子供たちの「自分が普段聞き慣れない言葉だな。」という思いから、「こんな場面は、自分にもあるかもしれない。今度使ってみよう。」という思いを引き出し、日常生活への活用につながるような声かけをしていきたいですね。

5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント

(1)情報を収集、蓄積する場面での活用

情報収集において端末を使うメリットとしては、辞典で調べるよりも、たくさんの語句を素早く調べることができることが挙げられます。
しかし、言葉集めの段階でやみくもに端末を使用することは、一度に大量の情報に触れさせることになり、児童に迷いを生むデメリットにもなりえます。以上の点を踏まえて、端末を使って情報を集める際には、例えば「立つ 複合語」のように、もとになる一つの言葉を決めてから検索をかけたり、「立ち尽くす」「立ちすくむ」のように関心のある複合語を絞った後に意味を調べ、用例の検討に生かしたりすることができるように指導することが大切です。

また「和語・漢語・外来語」の学習で、端末内に蓄積した言葉があるのならば、それをもとに複合語を調べていくこともよいでしょう。
4年生で初めて学習し、6年生ではその成り立ちを学習する「熟語」も本単元に関わる学習です。
端末内に個人の言葉の宝箱を作り、各学習で集めた言葉を構造化していけると、さらに学習がつながり合い、語彙を豊かにしていくことに効果的です。

(2)作ったクイズを表現・共有する場での活用

端末を用いれば、クイズの作成における自由度が上がります。
例えば、数問作ったクイズの順番を変えたり、発音についてのクイズを、録音機能を使って作成したりする活用の方法が考えられます。

また共有場面では、より効率的に幅広い交流ができることが期待されます。限られた時間内で、充実した交流ができるように、一つのペアが作ったクイズを全体で画面共有してみたり、端末を持ったまま自由に移動し、ペア間でクイズを出し合ったり、児童の実態や時間配分に合わせて活用方法を工夫していきましょう。

6. 単元の展開(2時間扱い)

 単元名: 自分の言葉を広げよう。5年〇組 複合語クイズ大会

【主な学習活動】
1時2時
① 教師の作った複合語クイズから学習の見通しをもち、複合語の種類を理解しクイズを作り始める。〈 端末活用(1)〉

② 複合語の特徴について理解し、学習したことをもとに複合語クイズを作り、友達と交流する。 〈 端末活用(2)〉

全時間の板書例と指導アイデア

【1時間目の板書例 】

イラスト/横井智美

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