小1国語「たぬきの糸車」板書の技術
今回の教材は、有名な物語文「たぬきの糸車」です。本単元は、「自分の好きなところを見付けて、紹介カードに書いて、発表会を行う」という学習活動です。そのため、人物の行動や様子、気持ちや会話を想像するなど、場面ごとに内容を読み取ることが大切です。それらを捉えやすくするための板書の工夫を紹介します。
監修/京都女子大学附属小学校特命副校長・吉永幸司
執筆/埼玉県公立小学校教諭・須藤由恵(せせらぎの会)
単元名 すきなところを見つけよう
教材名 「たぬきの糸車」(光村図書出版 1年上)
目次
単元の計画(全8時間)
1 学習課題を確認し、学習の見通しをもつ。心に残ったところを見付ける。
2 内容の大体を読み取る。
3~6 場面ごとに内容の大体を読み取る(登場人物の行動や様子・気持ちや会話の想像)。
「2月のきれいなばん、3あるばん、4やがて、5はるになって・たぬきは」などの場面を読み取る。
7 「わたしの1ばんすきなところしょうかいカード」を書く。
8 「わたしの1ばんすきなところはっぴょうかい」を行う。
板書の基本
〇話の順序が分かり、話の大体をつかむ板書
挿絵を活用して、板書で話の順序を確かめます。大まかな話の展開を子供たちに共通理解させるために、順序を入れ換えた6枚の挿絵を貼り、その後、正しい順序に挿絵を並べます。また、話の全体の大体をつかませるために、「いつ、どこで、だれが、何をした」を確かめます。
〇登場人物の気持ちを想像することで工夫した音読につなげる板書
「たぬきの糸車」は、「たぬき」の会話文がなく、行動で話が展開します。そのために、この教材では登場人物の行動や様子に着目させ、「心の言葉(気持ち)」を付け足します。また、子供が好きな登場人物になりきり、共感して読み、想像する力を育てます。挿絵から、登場人物の吹き出しを書き、どのようなことを思っているかを想像させます。ここでは、上段に「おかみさん」下段に「たぬき」と2段に分けて板書することによって、登場人物の行動を捉えやすくしています。
板書を利用した授業の進め方(2/8時間目導入)
1 本時のめあてを確かめ、「たぬきの糸車」の音読をする
本時のめあて「おはなしのじゅんじょをたしかめよう。」と板書し、学習の見通しをもたせます。本文を全員で音読します(一斉読み)。
2 挿絵の順序を確かめる
黒板に順序を入れ換えた挿絵を貼ります。お話はどんな順序なのかを問い、学級全体で話し合います。その後、正しい順序に並べます。
板書を利用した授業の進め方(2/8時間目展開)
1 話の内容を捉える
挿絵に対応して、黒板の上部に場面番号を書き、場面を区切る縦の線を引きます。そして、「いつ」「どこで」「だれがなにをした」と記述し、横線を引きます。子供たちには、教科書で確認させ、線や丸を引かせます。
1の場面では、「むかし」「山おく」と板書します。「たぬき」の絵カードを貼り、「たぬきが いたずらをした。」と記述します。さらに、きこりの頭文字の「き」を書いて、「きこりは わなをしかけた。」を板書します。
他の場面も同様にして、教師は板書します。
ここでは、「誰が」を捉えやすくするために、人物の絵カードを使っています。
2 学習の振り返りをする
本時のめあてが達成できたかどうかを振り返ります。
①お話の順序が分かったか。
②だれが何をしたかが分かったか。
板書を利用した授業の進め方(5/8時間目)
1 前時の学習を振り返り、本時のめあてを確かめる
前時の学習を振り返ります。「冬になって、雪が降り始めると、木こりの夫婦は、村に下りて行った」ことを確認し、「ふゆ」「村」と板書します。そして、「おかみさんが戸を開けて驚いている挿絵」を貼り、「はるになって」と記述します。「木こりの夫婦は、どこに戻ったのか」を確認し、「山おくのこや」と板書します。
そして、本時のめあて「たぬきとおかみさんの気もちをそうぞうしよう。」と板書し、学習の見通しをもたせます。
2 「たぬきの糸車」の音読をする
本時で学習する5の場面(「はるになって、」)を全員で音読します。言葉を丁寧に読み、声を合わせて音読させます(一斉読み)。
3 たぬきとおかみさんの行動に着目させ、そこから気持ちを想像する
①黒板の上下を分ける横線を引き、上段にはおかみさんのしたことを、下段にはたぬきのしたことが分かるようにします。
②まず、1人学びでたぬきとおかみさんの行動に線を引かせます。そして、おかみさんの行動を発表させ、「おかみさんは、あっとおどろきました。」を板書します。さらに、驚いたことやびっくりしたことが多かったことに気付かせ、不思議なことが幾つあるだろうかと声かけし、文章から読み取らせます。全体で確認した後は、たぬきの行動には青色、おかみさんの行動には赤色のサイドラインを引かせます。
③次に、おかみさんが驚いたことを捉えさせます。子供たちの発言を受け、糸の束の挿絵を上段に、巻きかけた糸の挿絵を下段に貼ります。「糸の束が山のように」の叙述から動作化を図り、その量を把握させ、黒板の上段に「たくさん」と板書します。
また、山のようにたくさん紡ぐまで、どのくらいの時間がかかったのかを問いかけます。冬になって、雪が降り始めて、木こりの夫婦が村で過ごしていた間の2~3か月くらいの長い間と考えることができることを確かめて、上段に「ながいあいだ」と板書します。
④その次に、巻きかけた糸の意味を考えさせ、下段に「糸をつむいでいるとちゅう」と板書します。また、不思議なことが2つもあったことにおかみさんが驚いたことを捉えさせ、「ふしぎ①」「ふしぎ②」と青色チョークで板書します。ここでのおかみさんの気持ちを問い、「ふゆのあいだに?」「だれが?」「ふしぎだな。」と板書します。
⑤さらに、おかみさんは何をし始めたのか、どんな音が聞こえてきたのかを問い、「おかみさんは、土間でごはんをたきはじめました。」と板書し、赤色チョークでサイドラインを引きます。また、黄色チョークで「キーカラカラ…」の音と「糸車の音」と記述します。その後も同様に、おかみさんの行動を板書し、赤色でサイドラインを引きます。
⑥茶色のしっぽは、誰のものかを考えさせ、「たぬきが、糸をつむいでいるのでした。」と板書し、そこから、たぬきのしっぽであることを捉えさせ、たぬきの絵を貼ります。たぬきの行動には、青色でサイドラインを引きます。不思議なことがいくつあったかを問い、糸車の音のところに「ふしぎ③」、茶色のしっぽのところに「ふしぎ④」と板書します。
4 気持ちを込めて音読する
たぬきとおかみさんの気持ちを考えながら、工夫して音読する(1人読み)ことを伝えます。今回は、「キーカラカラ…(中略)…たぬきは、…たばねてわきにつみかさねました。」の場所を音読させます。その後、指名音読し、どこをどのように工夫して音読したのかを、子供に発表させます。発表内容から「声の大きさや読む速さ、どのような気持ちで音読したのか」という音読の工夫を緑色チョークで板書します。
5 学習の振り返りをする
①たぬきとおかみさんの気持ちを想像できたか。
②たぬきとおかみさんの気持ちを考えながら、音読できたか。
を振り返ります。
※板書の挿絵は、教科書を基に模写したものです。
構成/浅原孝子