小六の道徳とオリジナル教材「道しるべ」

大学教員

佐藤幸司

山形県のある小学校で行われた佐藤幸司先生による六年生の道徳授業を紹介します。独自教材を使ったオリジナルの道徳授業には、学級経営にも生かせるヒントがたくさんありました。

執筆/山形県公立小学校校長・佐藤幸司

佐藤幸司先生
佐藤幸司先生

授業指導案(一部抜粋)

1.教材名
「道しるべ」
2.指導目標
C 家族愛、家族生活の充実
これからの人生を歩んでいく中で、その原点は、これまで自分を育ててくれた家族の温かな手のぬくもりの中にあることを考え、家族への敬愛を深める。
3.展開
①ハンドクリームの広告写真を見て、何の仕事をしている手かを考える。
②自分の家族の手を、心に思い浮かべる。
③家族の手は何をしているか。そして、それは誰のためか。
④資料の写真(おばあちゃんの手)を見て、気付いたことを発表する。
⑤資料「祖母の手」を読む。

授業前の板書計画は?
大体の板書の書き方やイメージは、下記のように事前に準備しておきます。

本時の主教材「道しるべ」は、歌手の福山雅治さんの歌「道標」を題材にした朝日新聞のコラム記事です。また、導入では、ユースキン製薬株式会社の企業広告「がんばる手にありがとう」を使用しています。

板書イメージ
※クリックすると別ウィンドウで開きます

教えて!佐藤先生 道徳授業の醍醐味
よりよい授業を生み出すのは、教師の思いです。道徳授業を1回実施したからといって、子供は急には変わりません。でも、週1時間の道徳授業をきちんと行っていくと、学級のある変化に気付く瞬間があります。学級が温かくなってくるのです。それが、道徳授業の最大の手ごたえです。

導入:導入は手早く、一問一答で全員に発言させる

小六道徳の授業風景

事前に用意した写真を見せながら「どんな職業の人か」と、テンポよく問います。

これは何をしている手でしょうか?

クリーニング屋さん!

アイロンをかけています!

順番に指名し、発言と共に写真を黒板に掲示します。写真の職業と子供たちの住む地域や、家族との関わり合いを問うと、少しずつ自分との関連を意識できるようになります。校長として子供たちをよく知っているので、発言が出ない場合はあまり長引かせず、一問一答のように、進行します。

本時の学びに興味をもたせる

8枚の写真が出揃ったところで、子供たちに発問しました。

この手を見て、気付いたことや感じたことを教えてください

最初に指名された子はなかなか答えられませんでしたが、ここはしっかり子供の声を待ちます。

仕事をしている手です

いいところに気付きました! これは遊んでいる手ではありません

機械ではできない、手作業の仕事

お豆腐屋さんや漁師さんは、しわもあってすごそうな手

高学年ということもあり、多くの意見が出ました。

展開:「がんばる手に○○○」の空欄を考えてみる

その手に何を伝えたいか子供たちが黒板に書く様子

すべての写真を貼り終えたあと、それらを「がんばる手」として、その手に何を伝えたいかを発表させました。今回は、子供たちが黒板に直接書く形式にしました。子供が正直な意見を書きやすく、時間の短縮にもなります。

黒板に書かれた言葉を、みんなで読みます。実は、これらはハンドクリームの新聞広告であることを伝えます。

自分との関わりで考える

新聞広告を子供たちに見せながら、子供たちに発問します。

目を閉じて考えてください。みんなのおうちの人で、誰の手を思い浮かべましたか?

ここで、道徳の授業係の子供たちに進行をバトンタッチしました。少しの時間、子供たちで授業を進めさせました。

家族の手がどんなことをしているところを思い浮かべましたか? に対する子どもたちの発言

子供たちの発言は、おじいちゃん、おばあちゃん、お母さんなど・・・。それぞれの手が何をしている手と感じるかを聞き、授業の核心へと迫っていきます。発言を黒板に記し、次の問いを投げかけます。

中心発問
・その手は、誰のためにがんばっているのでしょうか?

子供たちが口々に「家族のため」と答えます。

終末:新聞コラム「祖母の手」からメッセージを感じとる

本時の目的である「家族とのつながり」「支えられていることへの感謝」と関連付け、ある新聞に載ったコラムを読み聞かせて、まとめとします。

まとめ

授業のポイントは?

ハンドクリームの広告で、「働く手」は、誰かのために「がんばる手」であることを意識付けます。そこから、家族の手を思い浮かべさせ、家族のために父母や祖父母がいろいろな家事や仕事を頑張っていることにつなげていきます。さらに、福山雅治さんの家族に関するコラムから、本時のテーマにつなげます。

授業を終えて・・・

袖崎小学校は、8人の6年生と5人の5年生、計13人の複式学級です。家族のような雰囲気の学級ですので、5年生も6年生も自分の思いを安心して発表することができます。今回の授業でも、子供たちは自分の家族のこと(手)を思い浮かべながら、落ち着いた雰囲気の中で熱心に学ぶことができました。

授業を行った学校

山形県村山市立袖崎小学校
山形県村山市立袖崎小学校

山形県村山市立袖崎小学校 創立明治34 年。初代県令・三島通庸が「洗心学校」と命名した歴史がある小学校。全学年が複式学級で学ぶ。

授業の様子を、動画でも紹介しています。くわしくはこちらをご覧ください。
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※視聴には本誌に掲載されているパスワードが必要です。

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