小3 国語科「ポスターを読もう」全時間の板書&指導アイデア
文部科学省教科調査官の監修のもと、小3 国語科 「ポスターを読もう」(光村図書)の全時間の板書、発問、想定される児童の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。
監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/東京都西東京市立田無小学校校長・前田 元
執筆/東京都練馬区立向山小学校・岡崎智子
目次
1. 単元で身に付けたい資質・能力
本単元では、複数のポスターを読み比べ、受け取る印象の違いについて話し合うことで、読み取った情報を比較、分類する力や、文章を読んで理解したことに基づいて感想や考えをもつ力を育てることを目指します。
2. 単元の評価規準
3. 言語活動とその特徴
「ポスターを読もう」は、複数のポスターを読み比べ、そこから受け取る印象の違いを話し合うことで、相手や目的に応じてポスターが作られていることに気付いていく単元です。
教科書の中の取り扱いは、読むことの中の、「生活の中で読もう」という位置付けになっています。
「生活の中で読もう」は、3年生から6年生までの各学年に設定されています。児童の身の回りにある様々な情報媒体との接し方を系統的に学べるように、教科書には令和2年度より位置付いています。
6年間を通して、文章と図版を組み合わせて読む力や、情報を比較して読む力などを系統的に育てていきます。ポスターやパンフレット、利用案内など、それぞれの特徴や目的に応じた情報の取り出し方を理解することに重点を置き、最終的に複数の媒体から情報を得たり、言葉と図表を結び付けたり、情報と情報を組み合わせて考えたりすることができるようになっています。
3年生では、児童が生活の中で目にする機会の多いポスターが取り上げられています。
ポスターは、言葉や文章と併せて、キャッチコピーが書かれていたり、写真や絵、地図などが掲載されたりしています。同じ内容を伝えるポスターでも、それらによって受ける印象が異なります。使用されている字体や色使いによっても変わります。
本単元では、情報の受け手としてポスターの読み方を学びます。「ポスターの工夫されているところ」や「ポスターから受ける感じ」を話し合う活動を通して、ポスターを読んで理解したことに基づいて感想や考えをもつ力を育てます。
まず、例示されている読書週間のポスターを見ながら、ポスターとはどのようなものなのかを学びます。ここでは、キャッチコピーの役割に気付かせたり、何を伝えたいポスターなのかを考えさせたりしていきます。ポスターの見方を学んだ後に、見る人をひきつける工夫は何かを考えることで、制作者の意図や工夫にも目を向けられるようにします。
その後、「コスモス祭り」を紹介する2枚のポスターを見比べます。
同じ内容を知らせるポスターですが、キャッチコピーや写真、字体などが異なります。ポスターを見比べ、共通点や相違点を探し、整理することで、情報を比較したり分類したりする力を養います。
また、「どちらがお祭りに行きたくなるか」や「それぞれのポスターから受ける感じ」について話し合うことで、相手や目的に応じてポスターが作られていることに気付かせます。
本単元では、情報を受ける側としての在り方を学びますが、話合いの中で制作者の意図や工夫に目を向けさせることで、自然と情報を発信する際に大切なことにも意識が向かいます。
本単元で学んだことは、社会科や総合的な学習の時間のポスター作りや新聞作りなど、他教科他領域の学習で情報を発信する際に活用することができるでしょう。
4. 指導のアイデア
〈主体的な学び〉 児童の興味や関心を引き出す
児童は生活の中で様々なポスターに触れていますが、意識的に細部まで観察した経験をもつ児童は少ないでしょう。そこで、単元の導入でポスターについて知っていることを出し合うことで「あ、そうそう、あそこにあった」と掲示してある場所から思い出したり、「写真が載っているのもあるよね」とポスターごとの特徴を出し合ったりして、興味や関心を高めます。
発表されたポスターについて知っていることを仲間分けして板書しながら、「よく知っているね」と称賛して受け止めたり、「必ず写真が載っているの」「本当かな」などと問い返したりしながらやりとりをし、ポスターをよく見てみたいという思いを育みます。
児童の中に「確かめたいな」「ポスターをもっとよく見てみたいな」という思いが生まれてきたところで、「みんなで調べてみようか」と学習をスタートさせます。
教科書では「ポスターを読もう」という単元名になっていますが、「ポスターたんていになろう」や「ポスターのひみつをさがせ」など、自分たちで単元名を付けさせるのもよいでしょう。ポスターに書かれていることを探したり工夫を見つけたりする学習活動が、子供たちの中で明確になります。
児童が、「知りたいな」「調べたいな」「〇〇にあったと思うけど確かめたいな」という思いをもつことが主体的な学びにつながります。
〈対話的な学び〉 ポスターを見て気付いたことを話し合う
ポスターの工夫や2枚のポスターの共通点と相違点を探したり、そこから感じ取られることの違いを話し合ったりする際には、互いの考えを比較して学級全体で共有したり、ポスターのどの部分に着目した意見なのかを全員が分かるようにしたりすることが大切です。ICT機器を活用して互いの考えを共有することで、視覚的に捉えることができ、話合いがスムーズに進みます。
2時間目の話合いの中で、相手や目的に応じてポスターが作られていることに気付かせる際には、何をしたいかという目的に応じて興味を引く情報が異なることや、子供の目線から選ぶものと大人の目線から選ぶもので違いがあることを意識させます。
どちらのポスターが「コスモス祭り」に行きたくなるか、その理由を話し合うことで、情報の受け手である我々の目的や興味に応じて注目する部分が異なってくることや、多くの人が共通してそのポスターから分かることが明らかになります。
事前に、児童にとっての身近な大人である他の教員などに、「コスモス祭り」のポスターから受ける印象などをインタビューして録画しておき、その動画を見せて児童たちの考えと比較させることで、受け手による相違点と共通点が一層明らかになります。
〈深い学び〉 生活の中で見つけたポスターの意図や工夫を考える
2時間目の終わりに、児童が見つけてきたポスターの写真を見合います。
「何についてのポスターかな」「キャッチコピーはこれだね」「誰向けのポスターかな」など、子供たちとやりとりしながら見ていきます。
「黄色と黒だから注意してほしいっていうことかな」「ゆるキャラやイラストが多いから子供に呼びかけているのかな」などと、これまでの学習を生かして制作者の意図に迫ります。
本単元の学習を振り返るとともに、学習と実生活とのつながりを感じさせ、学級での係活動など、今後の学習につなげていきます。
5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント
(1)気付きを視覚的に共有する
1時間目は、ポスターに載っている内容を確認したり、見る人をひきつける工夫について考えたりします。
「ポスターのれい」を見て工夫を見つける際は、端末にカード化した「ポスターのれい」の画像を送り、工夫していると感じたところを線で囲んで提出させます。提出されたカードを見比べながら話し合うことで、どの部分のことを話しているのかが分かりやすくなります。友達のカードを見ることで、自分の気付きに自信をもったり、新たに気付きを広げたりすることもできます。
(2)共通点と相違点を明確にする
2時間目は、「コスモス祭り」に関する2枚のポスターを見比べて共通点や相違点と、その理由を考えます。教科書と同様2枚のポスターが並んでいる画像をカード化して子供たちの端末に送り、見つけたことを書き込ませていきます。「どちらにもあること」「どちらかだけにあること」「しめされ方がちがうところ」を3色に色分けして、線で囲んだり印を付けたりすることで、共通点と相違点を明確にしていきます。
(3)学習を振り返り、実生活とつなげる
1時間目の学習の終わりに、「どんなところでポスターを見たとことがあるか」「どんなポスターか」等の話題を投げかけ、生活の中でポスターを見つけたら端末で写真を撮ってくるよう呼びかけます。
もちろん、撮影の許可をいただくことや、周囲の安全を確かめて撮影すること、肖像権や著作権などについて触れ、学習以外の目的で利用しないことを徹底するようにします。
2時間目の終わりには、それぞれが見つけてきた写真を見合います。
キャッチコピーや知らせたい内容を確かめたり、知らせたい相手を考えたりすることで、単元で学んだポスターの読み方を振り返ることができます。学習と生活がつながっていることの実感が得られます。
6. 単元の展開(2時間扱い)
単元名: ポスターを読もう
【主な学習活動】
・第一次(1時)
① ポスターについて知っていることを出し合う。
②「ポスターのれい」を見て、かかれている内容を確かめる。
③「ポスターのれい」を見て、工夫していると思うことを探す。〈 端末活用(1)〉
④「ポスターのれい」を見て、見つけた工夫を話し合う。
⑤ 本時の学習を振り返る。
(2時)
①「コスモス祭り」の2枚のポスターを見比べて、気付いたことを出し合う。
②「コスモス祭り」の2枚のポスターを見比べて、共通点や相違点を見つけ、ノートに整理する。〈 端末活用(2)〉
③「コスモス祭り」の2枚のポスターの違いは、何のためにあるのかを考える。
④ 集めてきたポスターの写真を見ながら、単元の学習を振り返る。〈 端末活用(3)〉
全時間の板書例と指導アイデア
イラスト/横井智美