わたしがつむぎたいもの【国語授業で学級づくり ♯1】 |樋口綾香のすてきやん通信
Instagramでは2万人超えのフォロワーに支持され、多くの女性教師のロールモデルにもなっている樋口綾香先生による人気連載! 今回からは、国語授業を通した学級づくりについてお伝えしていきます。
執筆/大阪府公立小学校教諭・樋口綾香
目次
5年前に書いた作文「わたしがつむぎたいもの」
国語授業を通した学級づくりについてお伝えする第1回として、私が5年前に書いた作文を紹介することから始めたいと思います。この作文は、大阪教育大学附属池田小学校で過ごす最後の年に、学校で出版している「はぐくみ」という雑誌に寄稿したものです。
「わたしがつむぎたいもの」
私が附属池田小学校へ来た初年度の研究テーマは「つむぎあう授業」でした。
『はぐくみ』(大阪教育大学附属池田小学校)より
「つむぐ」という言葉を、みなさんはどれぐらい使ったことがありますか。私は附属池田小学校へ赴任するまで、おそらく数えるほどしかこの言葉を使ったことがありませんでした。知らない言葉というわけではありません。でも、使うにはなんとなく気が引ける、難しい言葉のように感じていました。
「つむぐ」とは、何をつむぐのでしょうか。辞書を引くと、実にたくさんの言葉が並んでいました。
・出会いをつむぐ
・縁をつむぐ
・思いをつむぐ
・言葉をつむぐ
つむぐものに共通点はありますか? 私は、まず、形のないものだと思いました。出会いも縁も思いも言葉も、手でつかめるものではありません。そして、つむぐものはみな素敵なもの、美しいものだと思いました。おそらく、悪い出会い、悪縁、悪意、悪口などに「つむぐ」を使うのはふさわしくありません。蚕がじっくりと時間をかけてつむいだ糸のように、美しいものに使う言葉なのではないかと感じたのです。
話を戻しますが、研究テーマが「つむぎあう授業」だったため、私は何をつむぎあいたいかを考えました。そして、「言葉と絆」を授業の中でつむいでいきたいと考えました。
言葉をつむぐというのはなんとなく想像できますよね。言葉のやり取りです。自分がどう考えるか、周りが何を考えているのか、言葉で伝え合って、互いのことを知り、知識を増やし、考える力を高めていく。「言葉をつむぐ」ことによって、もっとよいクラスをつくっていきたいと考えました。それが「絆をつむぐ」こと(このような言葉はきっとないと思いますが)につながっていきます。
私は今、五年南組の担任です。四月に子どもたちが学級目標を考えたとき、「笑顔・協力・絆」になりました。絆という言葉は、どの学年の子どもたちからもよく出てきます。響きがかっこいいし、何となく素敵な感じや強い感じがするし、みんな好きな言葉なんだな、と思います。しかし、何もしなかったら絆はできません。やはり、言葉をつむぐことで、築き上げられるものなのだと思います。
五年南組の子どもたちは、よく言葉をつむぎます。聞く姿勢が素晴らしいのです。聞いてくれる人がいるから安心して話すことができるのでしょう。これからも、言葉を大切にしながら、地下に広く深く根をはる木が太い幹をもつように、太くて美しい絆をつむいでいってほしいです。
なぜ、国語授業で学級づくりをするのか
当時の私は、豊かな言葉を使う子どもたちに、いつも感心していました。きっと、子どもたちや、先生、保護者の方など、周りの人が言葉を大切にしてきたのでしょう。
言葉をつむぐということは、簡単なことではありません。そもそも言葉の知識が必要であり、さらに、その言葉をどう使うかといった技能やその場その場の判断力・表現力も必要です。一朝一夕に身につけることのできない力であるからこそ、毎日、私自身が言葉を大切にして子どもたちの前に立とうと思いました。
言葉の力は、学ぶ意欲や豊かな学びをデザインする力、良好な人間関係を構築していく力につながります。
学習の基盤である言語能力は、国語科を中心に指導していきます。私は、ただ単に言葉を教えたり、教科書を教えたりするのではなく、どんなときに使う言葉か、正しい使い方は何か、言葉によってどんな感情になるか、なぜその教材を学ぶか、自分と登場人物を重ねてみたらどうか、など、子どもの生活や経験、社会とつなぐことを大事にして国語の授業づくりをしています。
国語科だからこそ、学級経営の軸として、言葉や教材を学ぶことを通して、社会でよりよく生きていくために、大切なことを学ぶことができるのではないでしょうか。
次からは、具体的な国語実践を通した学級づくりの視点をお伝えします。
樋口 綾香
ひぐち・あやか。Instagramでは、@ayaya_tとして、♯折り紙で学級づくり、♯構造的板書、♯国語で学級経営などを発信。著書に、1/14発売の『「自ら学ぶ力」を育てる GIGAスクール時代の学びのデザイン』(東洋館出版)、『子どもの気づきを引き出す! 国語授業の構造的板書』(学陽書房)ほか。編著・共著多数。
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