学習前後の自己の成長に気付かせるマインドマップの活用 【理科の壺】
子どもたちの学習前後でどのように成長しているか(理解しているか)調べる1つの方法として、マインドマップを使って調べる方法があります。用語や知識、そして知識と知識の関連性について、どんなふうに理解しているのかを視覚化する方法です。子どもたちの評価する方法として様々な方法を知っていることが大切です。優秀な先生たちの、ツボをおさえた指導法や指導アイデア。今回はどのような “ツボ” が見られるでしょうか?
執筆/神奈川県公立小学校教諭・山口俊貴
連載監修/國學院大學人間開発学部教授・寺本貴啓
はじめに
危険性のある器具を確認して除去する
理科の学習では、学習を通して問題解決能力を身に付けたり、理科に関する概念を身に付けたりしていきます。その中でも、子ども自身が理科の知識や概念を獲得したことを自覚することで、理科学習の有用性を感じたり、自己の成長を感じたりすることができます。今回は、そんな獲得した概念を自覚化するためにマインドマップの活用について紹介します。
1.導入時のマインドマップ作り
マインドマップは、情報を視覚的に整理し、関連性をつなげて表現する思考ツールであり、自己の学習や成長を可視化することができます。
学習の導入時にマインドマップを活用することで、自分のすでにもっている知識を整理し、視覚化することができます。例えば、磁石についての学習をする際に、メインテーマ(マインドマップの中心部分)に磁石を据え、思いついたことを自由に書かせることで、既に知っていることを視覚化することができます。
また、前の学年で学習した内容をどの程度理解しているのかを見取ることもできます。例えば、4年生の電気の学習を行う際に、マインドマップを導入時に作成する場合、3年生で学習した「回路」についての理解がマインドマップに表現されているかを見取ることができます。
2.学習終了時のマインドマップ作り
学習を終了するときにも、マインドマップを作る機会を意図的に設定することで、学習後に獲得した知識を視覚化することができます。単元を通して学習してきたことを視覚的に整理し、関連付けて表現する様子が見られます。マインドマップを作る際には、子どもたちに学習したことでわかったことや気付いたことを整理するように促していきます。ここでのマインドマップも導入時と同じメインテーマを設定してマインドマップを作成することが必要です。
学習前後のマインドマップを比較することで、子どもたちは自分の学習状況や理解度を客観的に確認することができます。具体的には、学習前のものと比べて新しく追加された情報や発見がどのように増えたのか、またどのように関連付けたのかを確認することができます。子どもたちは二つのマインドマップの違いから自己の成長に気付くことができます。
また、各自のマインドマップを発表したり、共有したりすることでさらに理解を深めることができます。例えば、知識に関する内容を深く関連付けて表現している子どものマインドマップを意図的に全体で共有し、価値付けることでクラスの子どもたちは学習内容に対する知識理解を深めることができます。さらに知識だけでなく、問題解決に関する思考について学んだことを視覚的に表現している子どものマインドマップを全体で共有すれば、思考に関する気付きを全体で深めることができます。
4.それ以外のマインドマップの活用
今回は、学習前と学習後にマインドマップを作成し、それを比較するということをご提案しましたが、導入時にマインドマップを作成し、学習するたびに書き加えていくという活用方法もあります。子どもたちが学習したことを書き加えていくことを通して、知識が増えていくことを自覚化することができます。
特に6年生の理科の学習では単元間の関連性が強く、学習したことを関連付けて広がっていくことを実感しやすいと考えられます。例えば、燃焼の学習における空気、人の体で学習する呼吸、植物の光合成など、単元間での知識がつながっていくことを視覚化することが考えられます。
また、更新型のマインドマップを作成することで、子どもたちの理解度を把握し、指導に生かすこともできます。単元で学習した内容がマインドマップに反映されている子どもが少なければ、次時で学習内容を確認する必要があるかもしれません。
理科は、理科の見方や考え方を働かせて資質能力を身に付けていくことが求められます。今回は、見方や考え方を働かせていることや、資質能力を身に付けていくことを子ども自身が自覚化するために学習前後にマインドマップを活用する方法について提案しました。
イラスト/難波孝
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<執筆者プロフィール>
山口俊貴●やまぐち・としき 神奈川県公立小学校教諭。総合的な学習の時間の研究校にいながら理科の実践研究も行っている。横浜市理科研究会基礎観察実験部会部長。CST会員(神奈川県理科中核教員)。SSTA横浜支部会員。
<著者プロフィール>
寺本貴啓●てらもと・たかひろ 國學院大學人間開発学部 教授 博士(教育学)。小学校、中学校教諭を経て、広島大学大学院で学び現職。小学校理科の全国学力・学習状況調査問題作成・分析委員、学習指導要領実施状況調査問題作成委員、教科書の編集委員、NHK理科番組委員などを経験し、小学校理科の教師の指導法と子どもの学習理解、学習評価、ICT端末を活用した指導など、授業者に寄与できるような研究を中心に進めている。