小6算数「多角形と対称」指導アイデア
執筆/埼玉県公立小学校教諭・播元和貴
編集委員/国立教育政策研究所教育課程調査官・笠井健一、埼玉県公立小学校校長・書上敦志
目次
本時のねらいと評価規準
(本時9/ 12)
ねらい
主な基本的な図形の対称性を調べることを通して、既習の図形に対する見方を深める。
評価規準
対称という観点から、図形を分類整理したり、性質を説明したりすることができる。(数学的な考え方)
問題
下の5つの四角形について、線対称な図形か点対称な図形かを調べましょう。

ア~オまでの四角形の名前を答えましょう。
アが台形、イが平行四辺形、ウが長方形、エが正方形、オがひし形です。
そうですね。今日は、これらの四角形を対称という観点で調べていきます。調べたことを表にまとめていきましょう。
本時の学習のねらい
これまでに学習した四角形を対称に着目して調べよう。
自力解決
どのように調べましょうか。
元の図形を写して、折ったり回転したりしてできそうです。
辺の長さや角の大きさを調べて、対称の軸が描けそうかを調べます。
対応すると思われる点どうしを結んで、交わったところが対称の中心かどうかを調べます。
A つまずいている子
・調べる観点が分からない。
B 素朴に解いている子
・図を写し取り、折ったり回転させたりして、線対称や点対称を確かめている。
C ねらい通りに解いている子
・具体物操作に加え、調べたことを図形の構成(ここでは辺の長さ、角の大きさ)や性質と関連付けて考えている。
学び合いの計画
ここでは、これまでに学習した四角形を「線対称」「点対称」という観点で調べ、図形の見方を深めることがねらいです。自力解決では、元の図形をトレーシングペーパーや透明シート等に写し取り、折ったり回転させたりすることが主な活動になると考えられます。一方で、辺の長さや角の大きさを意図的に設定しておくことで、折ったり、回転させたりするだけでなく、図形の構成に着目して考えることも、説明する際の根拠の1つにすることができます。
話し合いの際には、四角形の構成や性質(例えば長方形なら、全ての角が等しい、向かい合う辺の長さが等しいなど)と調べたことを結び付けて考えることで、「図形の見方を深める」というねらいが達成できます。ここでも、ただ発表してそれを聞くだけで終わることなく、友達の考えを基に折る、回転させる、測る、などという作業的・体験的な活動を取り入れて実感を伴った理解につなげましょう。また、誤答を意図的に提示することで、子供が図形の構成や性質を見つめ直し、考えの根拠をより深めることができます。
全体発表とそれぞれの考えの関連付け
(台形については、自力解決前に全体で確認済み)
C1(線対称について考えている)


C2(点対称について考えている)


C3(誤答)
・正方形の対称の軸が足りない。

・平行四辺形に対称の軸があると考えている(各辺の二等分線)。

など

線対称な図形、点対称な図形はC1、C2から表のようになりました 。
なぜ、線対称、点対称だと分かるのですか 。
線対称な図形には対称の軸があるからです 。
点対称な図形には対称の中心があるからです 。
(誤答を生かしたやりとり)
(C3の平行四辺形の図を提示して)平行四辺形にも対称の軸がありませんか。
この線で平行四辺形を折っても、ぴったり重ならないので、これは対称の軸ではありません。
対称の軸の性質を考えて説明できましたね。表を見て、気がついたことをまとめましょう。
平行四辺形は点対称だけですが、長方形、正方形、ひし形は線対称でも点対称でもあります 。
線対称な図形のうち、長方形、ひし形は対称の軸の本数は2本です 。
C1、C2の図を見て、気がついたことをまとめましょう。
点対称な図形では、対角線の交わっているところが対称の中心になっています。
線対称な図形では、対角線が対称の軸になっているものもあります。
評価問題
たこ形の図形は線対称でしょうか、点対称でしょうか。理由も説明しましょう。

子供に期待する解答の具体例

対称の軸があるので、線対称な図形です。

対称の中心がないので点対称ではありません。
本時の評価規準を達成した子供の具体の姿
図形の構成に着目し、対称の軸や対称の中心を根拠に図形の対称性について説明している。
ワンポイント・アドバイス
埼玉県さいたま市立大砂土小学校校長・書上敦志
本単元は、既習の図形を対称性という新しい観点から考察し、図形について理解を深めることをねらいとしています。線対称と点対称という観点を学習するとともに、これまで学習してきた平面図形についてまとめ、図形の見方を深め、感覚を豊かにすることができるようにします。ここでは既習の基本的な図形について対称性という観点から考察します。
ここでの誤答のように、見た目だけで判断してしまうつまずきが予想されます。自力解決の際に図形を写し取り、折ったり、回転させたりするなど、具体的な活動を取り入れて調べることが大切です。学び合いの視点として、友達の考えについて話し合う際にも、発表を聞いたり、見たりする念頭操作だけでなく、実際に具体物を操作することで実感を伴った理解へとつなげます。
イラスト/やひろきよみ
『小六教育技術』2018年4月号より