授業づくりについて深く語り合えるような人がいないのですが…【教師の悩みにピンポイント・アドバイス 田村学教授の「快答乱麻!」#5】

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教師の悩みにピンポイント・アドバイス 田村学教授の「快答乱麻!」

國學院大學人間開発学部教授

田村学
授業づくりについて深く語り合えるような人がいないのですが…【教師の悩みにピンポイント・アドバイス 田村学教授の「快答乱麻!」#5】

先生方のご相談について、國學院大學の田村学教授にお答えいただくこの企画。今回は、授業改善に取り組みたい先生が、異動した先の学校の雰囲気に悩んでいるというご相談に対して「快答」していただきます。

Q 私は初任校が研究熱心な学校だったので、授業や単元づくりに精力的に取り組んできましたが、異動してきた学校はあまり授業研究が盛んとは言えない学校でした。そのため、学習指導要領を基にした授業づくりについて深く語り合えるような人がいません。そういう学校の雰囲気を変えていくには、どうすればよいのでしょうか?(小学校・20代)

オンライン研修会などに参加して、他地域の志ある人たちとつながる

 まず「学校の中に深く語り合える人がいない」というのは、校内研究会がそういう雰囲気になっていないとか、職員室がそういう雰囲気になっていないということではないかと思います。異動された初年度であれば、そういう場を通して学校全体のムードを感じているのでしょう。

しかし、個別に一人一人を見てみると、もちろんそういう意識があまりない人もいるかもしれませんが、いくらかはそういう意識がある人もいるのではないでしょうか。全員の場では何となく言いにくいムードがあってなかなか言い出せないけれども、心にはご質問をされた先生と同じような思いをもっていて、2人で話せば授業や単元づくりについて語れるような人はいるのではないかと思うのです。

確かに真剣かつ前向きに授業づくりを協議できる学校がある一方で、なかなかそんな雰囲気にはならない学校もあるのかもしれないが…。
確かに真剣かつ前向きに授業づくりを協議できる学校がある一方で、なかなかそんな雰囲気にはならない学校もある。

ですから、「校内に授業づくりについて深く語り合えるような人がいない」と最初から諦めるのではなく、そういう方がいらっしゃるのではないかと思って見てみることが大切でしょう。そういう目で見てみると、ちょっと話ができそうな先輩がいたり、同輩や後輩にも「もう少しいい授業をつくっていきたいな」と思っている人がいたりするのではないでしょうか。

ただ、たまたま学校の雰囲気がそうではないから言い出しにくいとか、プライベートな事情で十分に時間が取れないのだけれども思いはあるというように、何らかの事情がある場合もあります。ですから、うまく状況が整えば、同じ思いをもって語り合える人はいるのではないでしょうか。教師という仕事を選んだ方には、授業なんてどうでもいいとか、子供たちの成長なんてどうでもいいと、最初から思っている方はほとんどいないはずだと思います。そもそもみなさんは、「子供たちを育てていきたい」と思って教職を選んだのですから、根っこにはそういう思いをもっているはずだと思います。

そのような目で見直してみると、同じ思いをもって語り合えるような同僚を見いだすことができるのではないでしょうか。そういう人が1人でも2人でもいれば、少しずつ学校の状況は変わってくると思います。ちなみに私は、「同じ志をもつ人が3人いれば組織は変わる」と考えています。三本の矢ではありませんが、1人では無理だし、2人でもつらいけれども、3人いれば何とかなるということです。

実は、この「同じ志をもつ人が3人いれば組織は変わる」というのは私自身の経験則なのです。上越教育大学附属小学校に在籍していたとき、研究主任として学校の実践研究を大きく変えなければならない時期にあたりました。どうやって取り組み始めるか、いろいろと考えたのですが、当時教頭だった五島由美子先生と養護教諭の久保田智恵美先生という2人の理解と協力を得ることで、学校の校内研究を変えていくことができたという経験があったのです。この経験から、同じ志をもっている方を自分の他に2人見付けることができれば、学校や授業研究を変えていけると私は思っています。

ただし、「志のある人は必ずいる」「3人いれば何とかなる」と言っても、職場内だけでは思いを実現することが難しい場合もあるかもしれません。そういうときには、私のオンラインサロンもそうですが、今は本当に多様なオンラインの研修会や勉強会の場がありますから、そのような学びの場に参加してネットワークを広げ、他地域の志ある人たちとつながる機会を求めてみるのがよいと思います。

校種や自治体によって授業研究に取り組む姿勢や熱意は様々です。ですから、そういう枠を越えて共に学び合える仲間を探してみるのがよいでしょう。やはり、教師力を高めていくためには、どれだけ学びの場を求め、自身の学びのネットワークを広げていけるかが大切なポイントになると思います。

この連載では、読者の皆様からの「これはどうしたらいいのだろうか?」「こんなことで困っている」といった、お悩みやご相談を受け付けています。お気軽にお寄せください。

また、田村学先生に直接、ご相談のできる「オンライン田村サロン」は、次回、3月27日に開催予定ですので、ぜひご参加ください。

オンライン田村サロンURL https://kyoiku.sho.jp/211957/

【教師の悩みにピンポイント・アドバイス 田村学教授の「快答乱麻!」#6】は、こちらです。

執筆/教育ジャーナリスト・矢ノ浦勝之


「学習指導要領がめざす」子を育む!
『「ゴール→導入→展開」で考える「単元づくり・授業づくり」』
田村 学 著
ISBN 978-4-09-840226-7


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