保護者の心をがっちり!授業参観の魅せるテクニック

愛知教育大学非常勤講師

深見太一

授業参観で通常の授業を行うだけでは、手を挙げて発言する積極的な子どもの活躍しか見せることができません。保護者が見たい我が子の姿を見せられる、保護者からの信頼を得ることができる、そんな授業参観を実現するテクニックをご紹介します。

執筆/愛知県公立小学校・深見太一

1981年生まれ。愛知県公立小学校勤務。3児の父。クラス会議講師として、全国各地で講座を多数開催。著書に『対話でみんながまとまる!たいち先生のクラス会議』(学陽書房)。TwitterやYouTubeでは「たいち先生」として実践を発信し続けている。
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授業参観におすすめの活動

どんな授業を準備するのか?

若手の先生方、自分に子どもがいると想像してみてください。子どもの授業参観に行った時、どんな姿が見られたら、子どもは学校で頑張っているんだなと安心しますか? どんな授業が見られれば、この先生に担任してもらってよかったと感じますか?

まずは、そこから授業を組み立てるとよいかもしれません。単元の流れから、ここを公開しようとか、子どもが活躍しているところを見せたいから音読発表会をしようだとか・・・。それだと場当たり的になってしまい、あまりよい授業にならないかもしれません。

保護者に見せるためにやっているんじゃない! という声があるかもしれません。しかし、せっかく保護者に見てもらう貴重な機会に、「この先生、大丈夫かしら?」と不安を煽るより、「ああ、この先生ならなんとかしてくれそうだ」と安心感を抱いてもらえる方が、何百倍も子どもたちを伸ばすことができます。そういう意味でも授業参観に向けてしっかりと準備していけると、1年間安定した学級経営ができるのではないでしょうか。

動と静を繰り返す算数の授業で魅せる
一年生のたし算

1.「フラッシュカード」でテンポをつくる

フラッシュカード

「1+2=」「3+4=」と書かれた大きめの紙を20枚準備しておきます。授業開始の挨拶が終わり、座った瞬間からフラッシュカードを始めます。「お母さん来てるかな」となんとなく落ち着かない様子の子どもたちも、一気に算数モードに切り替わります。余裕があれば、「保護者の方も一緒にどうぞ!」と伝え、一緒に声を出してもらいましょう。

2.「フラッシュ暗算」で集中力を高める

テレビをネットに繫ぎ、「フラッシュ暗算」と検索するといくつか使えるもの(ウェブアプリ等)が出てきます。それを毎時2~3問解く流れをつくっておきます。声を出していた子どもたちが、静かに集中して暗算を始めます。毎時、算数の最初はフラッシュカードとフラッシュ暗算を行うようパターン化しておくのです。すると、スムーズに授業が始まり、自然とリズムも生まれます。

3.「算数じゃんけん」で 保護者と交流する

① 二人でじゃんけんをします。
② 0(グー)から5(パー)までの6つの数字ならいくつを出してもよいルールです。
③ 二人の指の数をたし、早く正解を出した方の勝ち。
④ これも保護者に参加してもらいます。
⑤ 制限時間内に何人に勝てるかを競います。

時間に余裕があれば、ひき算をやっても面白いでしょう。

4.ノートにたし算の計算をする

ノートに足し算の計算をする

① 子どもは板書された数問のたし算の問題をノートに写して解きます。
② できたら保護者に丸つけをお願いします。
③ その間に困っている子のフォローをします。
④ 手が足りない場合は早く終わった子にミニ先生をお願いします。
⑤ 発展問題も準備しておきましょう。

5.算数カードを使って「たし算カルタ」

たし算の学習に使うリングでまとめられたカードを使い、ペアでカルタをします。最初はたし算カードの答え面を表にして並べます。先生がたし算の式を言ったら、答えのカードを取ります。慣れてきたら、たし算の式の面を表にして並べます。先生が答えの数字を言ったら、たし算の式のカードを取ります。時間に余裕があれば子どもが先生役をやったり、保護者にも一緒に参加してもらったりすると、緊張感が出て面白いでしょう。

活動のねらい

これらの5つの活動は、動と静の活動が交互に入り交じっているのにお気付きでしょうか。この二つの活動を交互に入れることで、自然と集中できる雰囲気ができあがります。アウトプットとインプットができる活動を繰り返すのです。5つの活動一つずつにかける時間は10分弱です。短時間でテンポよく進められると、授業にリズムが生まれます。普段からこのリズムを意識しておけば、子どもが飽きないうえに、一つの活動に乗り遅れても、次の活動から参加できるので、リセットするタイミングを確保できます。

もう一つのねらいは、保護者にも一緒に参加してもらうことです。授業参観に行って一番見たいのは、わが子の活躍している姿です。通常の授業スタイルだと、手を挙げて発言する子は数人。他の子は黙って聞いています。それでは見ている側は正直あまり面白くありません。だからこそ、「算数じゃんけん」や「たし算カルタ」などで、多くの子が活躍できる場をつくります。

時間的に余裕があれば、カルタの活動では保護者にも入ってもらって、より近くでわが子の学ぶ姿を見られる工夫をするぐらいの方が、一年生ではよいかもしれません。一人の子が負け続けないよう、ペアを途中で変える等の配慮ができると、さらによいでしょう。全員が活躍している姿を保護者に見てもらいます。兄弟がいて、授業の一部しか参観できない保護者にとっても、満足できるような配慮をします。わずかな時間の隙間を縫って見にきてくれている保護者からも、「この先生はいいな」と思ってもらえるのではないでしょうか。

物語文を演じる国語の授業で魅せる
二年生の『名前を見てちょうだい』(東京書籍)

音読発表会をするのですが、普通に読んでもあまり盛り上がりません。かなり練習をしたり、先生が読み方の引き出しを持っていたりすれば別ですが、なかなか全員が行うのは難しいもの。そこで、物語文を劇にして演じるのです。

『名前を見てちょうだい』(東京書籍)は、ファンタジーの要素が強い物語文ですが、劇として演じることの良さがたくさんあります。

『名前を見てちょうだい』を演じる

1.演じることが好きな子が多い

「劇の発表は好きですか?」と子どもたちに聞いてみてください。ほとんどの子が好き! と答えるのではないでしょうか。意外なほど自分を表現することが大好きな子が多いものです。入学までにごっこ遊びや劇遊びをたくさんやってきているからではないかと推測します。また、低学年のうちから、体を使って表現をすることに慣れておくと、よいことがたくさんあります。例えば、音読だと声だけの表現になってしまいますが、劇で演じると、表情や体を動かすことで、表現の幅が広がります。一年に一度の学芸会だけでなく普段の授業から演じることで、表現することに慣れる子を育てたいものです。

2.本文をよく読むようになる

細かいところまで表現するためには、細かい情景描写を読み取らないとできません。すなわち本文をよく読むようになります。たとえ一人では読み取れない子でも、グループでの発表となると、他の子から教えてもらえます。グループごとに練習を重ねることで、自然と本文の読み取りが進むのです。勝手に学び合いが始まります。上手に演じようとする気持ちや、親に見てもらいたいという思いが先行することで、本文の読み取りをする必然性が生まれるのです。

3.他グループの発表を見ることで理解が進む

他グループの発表から学ぶ

1クラス32人だとすると、4人×8グループをつくることができます。すなわち自分と同じ役の演技を他の子が7回してくれるわけです。簡単なワークシートを準備し、自分の演技との違いを書かせると、よりその登場人物に対する読み取りが進みます。他のグループの発表を見ることで、学びが深まるのです。

同じ発表を8回もやると飽きてしまうという場合は、本教材末尾に載っている『おふろだいすき』『天の火をぬすんだウサギ』『がちょうのペチューニア』の絵本を題材に授業参観を設定しても面白いでしょう。子どもたちも自分たちが選んだ題材であれば、さらに喜んで練習し、演じることができます。

4.時間が足りない場合

8グループも発表していると、1グループ5分だとしてもそれだけで40分になってしまいます。出入りの時間や振り返りのワークシートに書かせる時間を考えると、少し時間が足りないでしょう。ならばいっそのこと、教室の前・後ろ・隣の教室を使って三面展開してみましょう。先生の目が離れるリスクは少しありますが、保護者の前だといつもより張り切ってやれる可能性もあります。保護者にもあらかじめどの場所でやるかをお知らせしておき、より近いところから参観することができるようにします。そうすることで時間に余裕が生まれ、最初の10分間に漢字など他の指導をすることもでき、普段の授業に近い雰囲気を見てもらうことができます。

5.振り返りの工夫

普段の授業であれば、劇をもっとこうした方がよいというポイントを子ども同士に書いてもらい、次に生かしたいところですが、授業参観であれば、よかったところやキラリと輝いている子などを書いてもらった方が、書かれた方も嬉しいでしょう。

お互いの良さを認め合える関係を築けると、授業参観が温かい雰囲気に包まれます。保護者が友達とのやり取りを見ることができるのも参観の良さです。

振り返りでは、ワークシートを活用します。子ども自身に振り返りを書いてもらい、その日は家の人から一言コメントをもらってくるようにしておくと、子どもも喜びます。ただし、来られない保護者のコメントは先生が書くなど、ひと工夫することで、寂しい思いをさせる子が出ないようにしたいものです。

イラスト/麻宮しま

『教育技術 小一小二』2019年10月号より

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