小3算数「かけ算の筆算(×2けた)」指導アイデア《かけ算の筆算が簡単にできる工夫》
執筆/富山県公立小学校教諭・前田正秀
編集委員/文部科学省教科調査官・笠井健一、前・富山県公立小学校校長・中川愼一
目次
本時のねらい(本時12/13時 単元終盤の発展的な内容)
数量の関係に着目し、かけ算に関して成り立つ性質を活用して、簡単に計算できる工夫を考える。
評価規準
かけ算に関して成り立つ性質を活用して計算を工夫している。(思考・判断・表現)
問題
次のかけ算をひっ算でしましょう。
30×28
※ 30×28 を計算し、答えを確認した後で、これまでの筆算との違いについて尋ねます。
今までやってきた筆算と、違うところがありませんか。気付いたことを発表しましょう。
かけられる数の一の位が0です。
答えの一の位は、絶対0になります。だから、3×28 に0を付けると答えになります。
かけられる数とかける数を反対にすると、もっと簡単になるかも……。
どうやら、工夫するともっと簡単に計算できそうですね。今日は、かけ算の筆算が簡単にできる工夫について、みんなで考えていきましょう。
学習のねらい
かけ算のひっ算が簡単にできるように工夫しよう。
見通し
・答えの一の位は「0」になるはずだ。[結果の見通し]
・かけられる数の30 は、3×10 だから、3をかけることを考えればよさそう。 [方法の見通し]
自力解決の様子
A つまずいている子
空位に惑わされて、位を誤っている。

B 素朴に解いている子
部分のかけ算を4回している。

かける数とかけられる数を入れ替えている。

C ねらい通り解いている子
かける数とかけられる数を入れ替え、さらに(×1けた)のかけ算をして、後で積を10倍している。

学び合いの計画
学び合いの場では、みんなのやり方を比較します。比較するなかで、まず、かけられる数とかける数を入れ替えると簡単になることに、みんなが納得できるようにします。
さらに、0をかける部分の計算について、いちいち書かずに省略してもよいことに気付かせ、みんなでより合理的な方法を生み出すようにしていきます。
なお、計算の途中を省略することで、次の計算の位取りを誤りやすくなる子がいます。その対処法についても、話し合う場を設けるようにするとよいでしょう。
ノート例

全体発表とそれぞれの考えの関連付け

○○さんは、どんな工夫をしていますか。
かけられる数とかける数を入れ替えて筆算しました。
かけ算は、かける数とかけられる数を入れ替えても答えは同じだというきまりを使っています。
0×28 は、計算しなくても0だと分かるので、簡単になります。
△△さんは、どんな工夫をしていますか。
0のかけ算は0なので、28×3の答えに0を付けています。
かける数が10倍なら答えも10倍になるというきまりを使っています。
28×30 を、28×3×10 と見ているのだと思います。
学習のまとめ
- 30×28は、28×30にできる。(30×28=28×30)
- 28×30 は、28×3の答えを10倍すればよい。(28×30=28×3×10)
式の中に10があれば、かける数を[MATH]\(\frac{1}{10}\)[/MATH]にしてかけ算をして、後で10倍すればよい。
計算のきまりをうまく使えたら、簡単に計算できるね。
かける数に10がなくても、「2」と「5」があれば、うまく工夫できるかも!
【計算のきまり】
・かけ算は、かける数とかけられる数を入れ替えても答えは同じ。
・かける数を[MATH]\(\frac{1}{10}\)[/MATH]にして、後から10倍しても、答えは同じ。
評価問題
30×16
子供に期待する解答の具体例

本時の評価規準を達成した子供の具体の姿
なん十に着目し、かける数とかけられる数を入れ替え、さらに一けたのかけ算をした後で積を10倍にするなどの工夫をしている。
進んだ子のためのチャレンジ問題
- 14 × 15
- 22 × 25
- 28 × 25
子供に期待する解答の具体例
- 14×15 → 7×30 → 7×3×10
- 22×25 → 11×50 → 11×5×10
- 28×25 → 14×50 → 14×5×10 → 7×10×10(7×100)
感想例
- 計算のきまりをうまく使うと、簡単に計算することができて、気持ちよかったです。
- これからも、計算を簡単にすることを考えながら、計算の工夫をしていきたいです。
- 式の中から10を見付け出すことが、計算の工夫のポイントではないかと思いました。
イラスト/小沢ヨマ、横井智美
『教育技術 小三小四』2022年2/3月号より