小6国語「生きる」京女式板書の技術
今回の教材は、谷川俊太郎の詩「生きる」です。6年間で身に付けた国語の力を振り返り、中学校へつなげるという学習活動です。生きるとはどういうことかを自問自答している詩を読み深め、生きることを考えていきます。詩を読み取りやすくするための板書の工夫を紹介します。
監修/京都女子大学附属小学校特命副校長・吉永幸司
執筆/京都女子大学附属小学校教諭・酒井愛子
教材名 「生きる」(光村図書)
目次
単元の計画(全5時間)
1 「中学校へつなげよう」を読み、6年間で身に付けた国語の力を振り返る。
2 「生きる」を書き写し、内容を読み取る。
3 「生きる」の詩を鑑賞する。
4 「今、あなたに考えてほしいこと」を読み、自分の考えをまとめる。
5 自分の考えを友達と交流し、再度自分の学習を振り返り、表彰状にまとめる。
板書の基本
〇「生きる」は卒業・進学を控えた6年生3学期として大事にしたい教材です。それは、「生きる」とは、どういうことかを自問自答しているからです。
音読を大事にしながら、第1連から第5連を通して、次のことを話題にして学習を進めてきました。おおまかにまとめると次のようになります。動物的に生きる(第1連)、真・善・美価値に生きる(第2連)、自由にして生きる(第3連)、いろいろな関係の中で生きる(第4連)、当たり前に見える平凡なことが本質であるということ(第5連)。
各連の大事な言葉をつなぎながら、「生きる」という詩を通して、それぞれの連を関連させて読ませることを意図した板書にしました。
〇黒板の右端と左端に詩の前半と後半を活用して、第1連と第5連を板書しました。それは、わかりやすい第1連から、深い意味がある第5連を意識させることを意図したからです。空白にしてある黒板の中央を活用しながら、第5連を深めさせたいと考えました。
板書のコツ(3/5時前半)
板書のコツ①
詩の全体を音読した後、感想や好きな言葉、印象に残る連の発表から授業を始めました。本時までに、詩を書き写し、各連の内容を話し合ってきた学習の経緯があります。そこで、本時の大事な連として、第1連と第5連を黒板の両端に板書しました。
板書のコツ②
第1連と第5連を対比して読み、「生きているということ」「いま生きているということ」と繰り返していることに続く言葉を改めて考えました。第1連では「のどがかわくということ」「木もれ日がまぶしい」の言葉から「体で感じる何気ない日常」とまとめました(板書の赤色のチョークの部分)。
板書のコツ③
第5連では、「鳥ははばたく」「海はとどろく」という言葉が象徴している意味を考えさせました。発問として効果があったのは「鳥と問われて、どんな様子を思い浮かべますか」という簡単に見える発問でした。「空を飛んでいる」という答えを得て、次に「では、海は」と、発問を続けました。まとめとして「本質」と板書をしました(板書の赤色のチョークの部分)。
板書のコツ(3/5時中盤)
板書のコツ①
第1連と第5連の学習を生かし、第2連では「それはミニスカート」「それはプラネタリウム」など、文化的なことと「生きる」をつないだものであることを理解させ、板書しました。習慣、科学、音楽、芸術、自然などに広げた板書です。
板書のコツ②
「泣けるということ」「笑えるということ」「怒れるということ」について、子供たちは「泣くこと」「笑うこと」「怒ること」と同じ意味に理解をしていました。少し難しい内容でした。読書が好きな子の「泣きたくても泣けないことがある」というつぶやきに気が付き、発言を求めました。その子は「おかあさんの木」(大川悦生)を思い出したという発言でした。「自由ということ」につなげる貴重な発言でした。「表現」とまとめたのも、「泣ける」「笑える」「怒れる」と「自由」をつなぐという意図がありました。
板書のコツ③
第4連は、「いま犬がほえるということ」「いま地球がまわっているということ」という意味はわからないという雰囲気でした。「いまいまが過ぎてゆくこと」と関連させ、それぞれに「いま、どこかで起こっていること」が、自分の生きることにつながっていることとしてまとめた板書です。
板書のコツ(3/5時後半)
板書のコツ①
板書全体から、気が付くことや「生きる」から学んだことを交流して、授業をまとめました。
最初の感想は、第1連の「あなたと手をつなぐこと」でした。それは、第5連の「あなたの手のぬくみ」とつながるという発言でした。板書では、赤色のチョークで大事なことであることを示し、理解を促しました。
板書のコツ②
「あなたの手のぬくみ」に続いて、「人は愛するということ」が大事だという考えを発表する子がいました。さらに、平凡が本質であるという意味の発言もあり、第5連の話題を通し、詩の鑑賞が深まっているという雰囲気になりました。
板書のコツ③
授業の終末段階では、音読・一言感想を述べるという方法で授業を進めました、感想を述べる言葉の中に、黒板に書いているどの言葉が印象に残っているのかを加えることを条件にしました。板書の語句は、子供が見つけ、考え、広げたものが多いため、終末の段階でこのように板書を活用しました。
構成/浅原孝子