小6算数「データの活用」指導アイデア
執筆/埼玉県公立小学校教諭・齋藤礼乃
編集委員/文部科学省教科調査官・笠井健一、浦和大学教授・矢部一夫
目次
本時のねらいと評価規準
(3時間を通して1つの問題に取り組みます。本時は3/3時)
ねらい
目的に応じたデータから、データの特徴や傾向を分析し、問題に対する結論について、根拠をもって考察することができる。
評価規準
家族にお願いするおこづかいの金額をいくらにすればよいか、その根拠を表やグラフから考えることができる。
前時まで
第1時、第2時では、「翔平さんも毎月おこづかいをもらえるようになりました。いくらもらうように家の人にお願いすればよいでしょう。」という問題場面を提示し、友達がもらっているおこづかいの金額を調べ、平均値や中央値、最頻値などを求めたり、度数分布表や柱状グラフを作成したりしました。
問題場面
クラスのみんなのおこづかいを調べると、このような結果でした。
翔平さんは、いくらおこづかいをもらうようにお願いすればよいでしょう。
本時
前回の授業では、集めたデータを数値に表したり、表やグラフにまとめたりしました。
おこづかいの金額に散らばりがありました。一番多い人と少ない人では、900円も差がありました。(資料5)
一番多くの人がもらっている金額は、900円でした。(資料4、5)
今日はこのデータをもとに、翔平君が家の人にいくらもらえるようにお願いすればよいか、考えていきます。
おこづかいをもらっていない人については、どうすればいいですか。
前回と同様に、おこづかいをもらっている人のデータを使って考えましょう。
本時の学習のねらい
家の人にお願いするおこづかいの金額と、その理由を考えよう。
見通し
- どの資料が使えそうかな。
- おこづかいの金額の値の資料が使えそうです。平均を使って考えてみよう。
- 度数分布表や柱状グラフなら、どの金額が一番多いか一目で分かるので、家の人にうまく伝えられると思う。
自力解決の様子
A つまずいている子
たくさんある資料の中からどれを使えばよいか分かっていない。
B ねらいどおりに解決している子
クラスのおこづかいの平均は800円だから、800円がよいと考えている。
C 進んでいる子
最頻値や中央値、おこづかいをもらっていない子も含めた平均を求めるなど、様々なデータを活用して考えている。
学び合いの計画
自力解決では、資料をもとにお願いするおこづかいの額をいくらにすればよいか考え、自分なりの理由をノートに書くように指示します。どの資料を使えばよいか分からない児童には、例えば「最頻値900円という資料からどんな説明ができるかな」と個別に支援をします。練り上げでは、どうしてその資料を使ってお願いしようと考えたのか、理由を表やグラフを使って説明させます。さらに、自分たちの結論に対して批判的に考察をすることで、新たなデータの必要性や、複数の観点から考えて考察することの重要性に気付けるようにします。
ノート例

全体発表とそれぞれの関連付け
C1
クラスの最頻値 900円
おこづかいを900円もらっている人が一番多いから、900円がいいと思う。
C2 最頻値と比較
おこづかいをもらっている20人のうち、10番目と11番目の人の間の金額(中央値)は850円。なので850円がいいと思う。
C3
おこづかいをもらっていない人も入れてクラスの平均を求めると、16000÷30≒530(円)
550 円くらいがいいと思う。
お願いするおこづかいの金額はいくらがよいでしょうか。
度数分布表を見ると1200円は多いと思います。
クラスの中でおこづかいをもらっている人の最頻値や中央値を示すのがよいと思いました。850円~900円がいいと思います。
でも、C3さんはおこづかいをもらっていない人(0円)も含めて、クラス全体の平均を出していて、それを見ると約530円となっています。900円は多いと家の人に言われそうです。
でも、550円はクラスでも少ない方だよ。
それに、もらっていない人を入れると、最頻値が0円になっちゃうよ。
確かにそうだけれど、翔平君は今までおこづかいをもらっていなくて、これからもらえるように金額をお願いするのだから、もらっていない人(0円)は含めない方がよいと思います。
そうですね。この後、さらに説得力を高めるにはどうすればよいでしょう。
最頻値だけ言う、中央値だけ言うのではなくて、いくつかのデータを組み合わせて伝えてお願いするとよいと思います。
おこづかいの使い道を説明して、いくらほしいか、お願いするという方法もあると思います。
何か別の資料を用意するということですか。
みんながどんなことにおこづかいを使っているのか、1か月にいくら使っているのかを示すデータです。
なるほど、お願いの仕方はいろいろありそうですね。
学習のねらいに正対した学習のまとめ
- いくつかの資料を組み合わせて、自分なりの理由をはっきりさせれば、おこづかいの金額をいくらにしたいか具体的にお願いすることができる。
評価問題
翔平君はおこづかいを900円でお願いしたいと思います。あなたならどのような理由で家族にお願いしますか。
子どもに期待する解答の具体例
「クラスでおこづかいをもらっている人の最頻値が900円(資料3)。また、900円以上もらっている人は50%(資料4)。だから900円のおこづかいをお願いします、と言う」など、いくつかの資料を組み合わせて理由を説明している。
感想例
- いくつかの資料を組み合わせて説明することも大事だなということが分かりました。
- 私は平均の800円がよいと思ったけれど、530円という意見も出てきました。最初はびっくりしたけれど、理由を聞いてなるほどなと思いました。
『教育技術 小五小六』2021年12/1月号より