理科の学習で使用する、植物の計画的準備のポイント 【理科の壺】

連載
理科の壺/進め!理科道~理科エキスパートが教える、小学校理科の指導法とヒント~

國學院大學人間開発学部教授

寺本貴啓

植物を育てる単元は、教科書によって載っている植物が異なるうえ、地域によって植える時期も異なります。授業をいつ行うかによって、逆算して準備する必要もあり、計画的に準備をしなければならない単元の1つです。また栽培方法においても、連作(繰り返し同じ場所で同じ種類を植えること)ができないものもあり、こちらも、1年前、2年前くらいまでどの場所で何年生が植えたのか記録し、種類によっては場所をローテーションするなどの工夫も必要になるかもしれません。今回は植物の育成のポイント。うまく育てられるといいですね。優秀な先生たちの、ツボをおさえた指導法や指導アイデア。今回はどのような “ツボ” が見られるでしょうか?

※連作障害=ナス科、アブラナ科、ウリ科などの特定の植物を同じ場所で何年も栽培していると、その植物が土壌の性質を変えてしまうことで、育ちにくくなる現象のこと。ジャガイモや白菜、大根、キュウリなどが有名で、種類によって1年〜4年休むことで土壌の性質が戻り、また栽培できるようになります。

執筆/福島県公立小学校教諭・鴫原卓
連載監修/國學院大學人間開発学部教授・寺本貴啓

理科の学習は子どもたちが「自然に親しむ」ことから始まります。

しかし、いざ植物を扱う単元になった際、事前に植物が準備されていなければ、子どもたちに自然を出合わせ親しませることはできません。今回は、学年ごとの植物を準備する時期や栽培のポイントと、植物栽培と学年のつながりについて述べていきます。

今回は筆者の勤務する福島県を例に紹介をしますが、本稿を参考にしていただきながら、地域やその年の気温や天候に合わせつつ、理科を担当する先生が楽しんで栽培していただきたいと思います。

また、新しく理科主任となった先生は、本稿を基に年間を見通した栽培計画を各学年の先生方へ伝えることで、先生方が見通しをもちながら植物を栽培するためのきっかけになれば幸いです。

1.4年生 ヘチマの栽培のポイント

ヘチマの実が結実しない、小さい実しかできないというお話をよく聞きます。次の視点で見直してみてください。

⑴ プランターでの栽培の場合

ヘチマは土の栄養を多く使用する植物です。プランター栽培の場合は、土に栄養が豊かであることがポイントになります。特にヘチマがよく育つ夏季に追肥を行うことで、より大きな実を結実することができます。

⑵ 畑での栽培の場合

畑でのヘチマの栽培は、マルチシートがけが断然お勧めです。マルチシートをかけることで畑の地温が上がり、肥料の流れ出しが少なくなるので、ヘチマの根付きが良くなります。さらに、水の蒸発を防ぐので、夏場の水やりもあまり必要ありません。防草シートの役割も持つので、雑草が生えてくるのを防ぎ、雑草に栄養を取られることなくヘチマを育てることができます。

マルチシート(ホームセンターなどで手に入ります)
このように、発芽する箇所以外の土壌を覆うようにして使います

⑶ 土は一年毎に土壌改良

ヘチマは土の養分をたくさん使って結実します。ヘチマを植えた後の畑や花壇、プランターの土は栄養不足になっていることが多いので、毎年冬になったら計画的に落ち葉や化成肥料を加えて土壌を改良し、次年度へ引継ぎましょう。

2.5年生 植物の結実のポイント

雄花・雌花のあるヘチマ(雌雄異花)と共に、一つの花の中におしべとめしべのあるアサガオ(両性花)も植えておきましょう。2種類以上の花の結実の仕方の違いを比較することで、子どもたちが植物の共通性・多様性について気付くことができます。

ヘチマの場合、雄花が先に咲きだし、その後気温が少し下がってから、雌花がヘチマのネット上部に咲きます。ぜひ子どもたちと一緒に確認してみてください。

3.次年度を見通した準備(3年生・4年生・5年生)

キャベツの種植えは、冬のうちににポッドに植えて、2年生の子どもたちにプレゼントしましょう。そうすることで、次年度に3年生となった子どもたちが新しく学ぶ理科への関心・意欲をもち、自分たちの手で育てたキャベツを使用して、モンシロチョウの産卵場・餌場にすることができます。

同様に、4年生が収穫したヘチマのタネを3年生にプレゼントすることで、次年度でヘチマを育てる必要性や意欲をもたせることができます。

5年生は、次年度6年生になったときに使う種イモを、2~3月のうちに準備します。種イモは食用のイモとは違いますので、必ずホーセセンターなどで購入してください。購入した種イモは、プランターに植えても良いですが、購入してきた土を袋から出さずに上部だけを開けて、そこに種イモを直接植えて育てることも可能です。その際は、袋の底に鉛筆で穴を5・6か所開けて、水切りができるようにして種イモを定植しましょう。

次に資料として、植物栽培の計画を整理しておきます。「植物の栽培の道は一日にしてならず」です。

子どもたちが自然に親しみ理科の資質・能力が育成できるよう、まずは先生方が植物の栽培に見通しをもち楽しみながら取り組んでみてください。

「このようなテーマで書いてほしい!」「こんなことに困っている。どうしたらいいの?」といった皆さんが書いてほしいテーマやお悩みを大募集。先生が楽しめる理科授業を一緒に作っていきましょう!!
※採用された方には、薄謝を進呈いたします。

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〈執筆者プロフィール〉
鴫原卓●福島県公立小学校教諭。中学校理科教諭として10年間勤務し、福島県教育研修センター長期研究員を経て、本校に勤務。小・中それぞれの理科の研究会に参加しながら、小・中学校理科教育の懸け橋になれるよう、日々実践研究を行っている。最近では特設SDGs部を設立し、子どもたちと共にゴミ拾いやアプリ開発等、子どもも学校も社会も元気になれるように活動をしている。小学校理科の全国学力・学習状況調査問題作成・分析委員を経験。コアティーチャー(福島県理数教育優秀指導教員)、SSTA会員。


<著者プロフィール>
寺本貴啓●てらもと・たかひろ 國學院大學人間開発学部 教授 博士(教育学)。小学校、中学校教諭を経て、広島大学大学院で学び現職。小学校理科の全国学力・学習状況調査問題作成・分析委員、学習指導要領実施状況調査問題作成委員、教科書の編集委員、NHK理科番組委員などを経験し、小学校理科の教師の指導法と子どもの学習理解、学習評価、ICT端末を活用した指導など、授業者に寄与できるような研究を中心に進めている。


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