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授業時間を子どもに預けて伸ばす!ポイントは五つの「かける」

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教師主導の一斉授業には大きな落とし穴が!? 子どもたち全員が有意義な活動ができる授業時間にするために、授業を子どもたちに預けるという大胆な実践を行う金先生に、その内容を紹介していただきました。

執筆/大阪府公立小学校・金大竜先生

授業時間を子どもに預けるイメージ
撮影/金川秀人

良い授業って何かを考えると・・・

あなたがイメージする良い授業とはどのような授業でしょうか。

・教師が設定したゴールに向かって、全体に投げかけた発問について、一生懸命考えたり、話し合ったりしている。
・学習規律や発表のルールがしっかり定着していて、それを子どもたちが生かしながら、主体的に全体で話し合いを深めることができている。
・教師の一つの発問に対し、子どもたちが自分達でつなげ合いながら、全体で話し合っている。

こんな風景が目の前に広がっていたら、良い授業でしょうか。僕自身、このような授業を目指し、今も取り組んでいますし、実際このような授業を行っています。これらが悪い授業だとは全く思いません。

しかし、こうした教師主導の一斉授業ばかりしていてはいけません。なぜなら、実は教室の何人かは、この話合いに参加しているフリを一生懸命しているだけで、主体的に学んでいるどころか、授業に参加できていないことがあるからです。そうした状況が1日に6時間、毎日のように続けば、教室のあの子はどんな気持ちで授業を受けるのでしょうか。

だから、子どもたちに授業を預けます。授業時間を子どもに預けることにはいろいろなメリットがあります。

・子どもが自分に合った方法、ペース、仲間を選択し、主体的に学べる。
・子どもが集中できなくなった時に合法的に立ち歩けるので、集中を持続できる。
・教師に時間ができるので、時間をかけてじっくり子どもと関われる。
・一斉授業では見えない子どもの姿が多く見られ、じっくり観察できる(一斉授業で活躍している子が戸惑う場面があったり、子ども間の人間関係が見えたりするなど)。

では、実際にどのようにしていくとよいのでしょうか。子ども自身が明確な課題を持っていたり、何についてどのように活動するのかを知っていたりすることは前提として、まず絶対的に、こうした場を多く経験できるようにすることです。1回や2回ではうまくいきません。何度も繰り返す中で、子どもが得ていくものがあります。

何事も
知識(知っているだけ)

技術(意識して使える段階)

技能(無意識に使える段階)
の段階を踏みます。

ただ、やはり回数をこなすだけでは、子どもは成長しません。今日の活動が自分にとって良かったのか、共に学んだ子にとって良かったのか、クラス全体として良かったのかを考える機会が必要です。

子どもたちが振り返る時には、いくつかの視点を与えてあげることが必要ですし、教師が見ていて良いと思った行動は価値付けをし、子どもたちと共有することが必要です。子どもたちが活動を振り返る視点の一つについて、大阪の福島哲也先生から以前、教えて頂いた「五つの『かける』」があります。

気にかける
目をかける
声をかける
時間をかける
願いをかける

まずは、あの子はどうだろうと、気にかけることから何事も始まります。そして、気になったら目をかけます。その子が一人でできそうなら声をかける必要はありません。「一緒にやる?」などと声をかけて、必要であれば、時間をかけて関わっていきます。こうした活動時には、クラス全員が伸びるといいなという願いをかけます。そうすれば、自分達が話す声の大きさも周りに迷惑にならない程度になっていくものです。

この順序は、子どもだけでなく、教師も同じです。いきなり「声をかける」のではなく、その前に、気と目をかけることが大切です。その辺りができるかどうかは非常に大切です。気と目をかける時に誰がどの段階まで進んでいるのか分かるよう、黒板に子どものネームプレートをはって、それぞれの進行度合いが分かるようにしています。

こうした活動は、班内の協働的な学習として取り組むこともありますが、多くは自分で自由に学び方を選択して行っています。その際は、大きく三つから選択するように伝えています。

①最初から最後まで個人
②個人→集団→個人
③集団→個人

「個人」というのは、一人でじっくり考えることを指します。「集団」というのは、ペアや複数人で学ぶことを指します。

「個人で考えることなく、いきなり人に聞いて学びになるのか?」という心配もあるかと思いますが、自分では全く手が出ないのであれば、それもありです。僕たち大人も自分でじっくり考えるために、まずは情報収集から始めることもあります。ただ、すぐ人に聞くことでその子が思考を止めていないかどうかは、ノートや話し合っている様子をよく観察し、声かけをしていく必要があります。

こうした活動を始めたばかりの時は、「仲良しのあの子じゃなきゃ」という感じで動く子もいましたが、先ほどの「五つのかける」も含め、自分も相手も伸びていくことを軸に振り返りを行っていく中で子ども自身が気付き、変容していきます。その変容は、たとえ小さな変容でも見逃すことなく、価値付けをし、「いつでも、どこでも、誰とでも学び合えるっていいな」という学級風土をつくっていきたいと考えています。

こうしたことも一度や二度で変容するものではありませんし、学習場面以外でも、子ども同士が安心して繋がり合えるムードづくりをしていく必要があります。不安によって、特定の子としか繋がれない場合がよくあることも事実ですから。

実際の場面ではどのように行うのか?

このような活動をする第一歩として、教師にとっても、子どもにとってもやりやすい場面を紹介します。やりやすい場面からスタートすることで、子どもたちもどのように学んでいけばよいのかを理解できますし、教師自身も落ち着いて取り組むことができます。

最初は算数の時間からスタートするとよいでしょう。その時間の練習問題や単元末の復習を行う時間を活用します。そうした時間であれば、教師も挑戦しやすいものです。

活動を始める前には、どのようなことに、どの順序で取り組むのかが、一目で分かるようにしていきます。解答は前においてありますので、子どもたち自身で丸つけも行います。ネームプレートを貼るところには「自由」というコーナーもつくっておき、この段階の子どもは何をしてもよいことになっていて、何をするのかを自分で考えます。

教室の後ろには様々なドリルが置いてあるので、それに取り組む子もいますし、その単元のことをノートにまとめている子もいます。また、他の単元を復習したり、次の単元を予習したりしている子もいます。もちろん理解できていない子のフォローをしている子もいます。何をどのように活動するのかを自分で選択することで、自分に合った学びの方法を見つけていけるようにしたいと考えています。

だんだんと慣れてくれば、問題提示をした後から授業終了まで、子どもたちが自分に合った学習方法を選択しながら進めることができます。どの授業時間でも可能ですが、僕個人は計算や図形を描く技能を習熟する時間を中心に取り組んでいます。

子どもたちはただ問題を解くだけでなく、どんな説明や図を描き加えれば相手に伝わるかを考えて、まとめるようになっていきます。もちろんこうしたことは、一斉指導の中で最初に指導します。

例えば、数式という抽象的なものを、その問題が分からない相手に説明するために、数直線や線分図などの半具体で表すと伝えやすいことや、この問題を解くときのポイントを文字でノートに書き込んでおくことなどについて、実際にみんなで書きながらその良さを味わえるようにしていきます。

それだけでなく、「ノートはどのように見せ、相手に説明すると伝わるのか」や「教科書などを一緒に見て学ぶ際には、それぞれが教科書を持つのではなく、1冊を一緒に見て考えることがよい」ことを、体験を通しながら子どもたちに指導していきます。

多様な考えに触れ、深める場面での展開例

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