子どもの学びのつながりをつくる教材の工夫 【理科の壺】
新しい単元の学習が始まり、子どもたちが意欲的に取り組んでいたけれど、学習が進むにつれて、気持ちが離れていってしまった…。そんな経験はありませんか?
教師から学習問題や実験方法を提示することは簡単で、教師は授業の見通しをもちやすくなりますが、一方で子どもたちは学びのつながりを見いだしにくくなってしまいます。
「先生に言われたからやってみよう…」「教科書に書いてあるからやってみよう…」ではなく、子どもたちが自ら「やってみたい!」「確かめてみたい!」と思えるような学びのつながりは、どのようにつくることができるのでしょうか。教材の工夫の視点から考えていきましょう。優秀な先生たちの、ツボをおさえた指導法や指導アイデア。今回はどのような“ツボ”が見られるでしょうか?
執筆/神奈川県公立小学校教諭・有泉翔太
連載監修/國學院大學人間開発学部教授・寺本貴啓
「授業がつながらない! どうする?」以前に学んだ学習内容を生かした授業づくり ~4年「物の体積と温度」の場合~
(1)「金属について調べたい!」という気持ちをどうやって引き出すか?
4年「物の体積と温度」では、「空気」「水」「金属」の3つに対して温めたり、冷やしたりしたときの体積の変化について調べます。以前に学習した「とじこめた空気と水」の単元では、圧した時の体積変化について学んできていますが、そこでは「空気」「水」の2つを対象にして調べます。つまり、前の単元では「金属」について触れられていません。そのため、「物の体積と温度」で授業をする際には「空気→水→金属」の流れで、子どもから「金属の温度と体積の関係について調べたい」と言わせたいところです。しかし、前の学習では「空気」「水」について学習しているので、この2つについては「調べたい」と発言が出やすい一方で、「金属」についてはなかなか出ないという問題があります。そこで、以前に学んだ学習を「物の体積と温度」にうまく繋げる導入についてご紹介します。
(2)教材の工夫で「金属について調べたい」気持ちを引き出す
「空気」「水」と同様に「金属について調べたい」という気持ちや学習の見通しを子どもたちがもてるように、単元の導入で2つの演示を行います。 1つ目は、「金属」という素材に着目させる比較演示です。下図のように水を半分入れたペットボトルと缶ボトルを準備し、シャボン液で口に栓をします。ペットボトルは手で圧すと形が変わって空気が圧しだされ、シャボン玉が膨らみます。一方で、缶ボトルは手で圧してもシャボン玉は膨らみません。この様子を見た子どもたちは、素材が金属で硬いから手で圧しても形が変わらないのだと原因を考えます。
2つ目は、「温度」に着目させる比較演示です。下図のように先程の缶ボトルの側面を手で覆うように触れます。すると、缶ボトルは硬くて圧せないはずなのにシャボン膜が膨らみます。また、手を離すとシャボン膜の膨らみが元に戻ります。
この様子を観察したり、実際に体験したりすることで、子どもたちから「缶ボトルを圧していないのにシャボン玉が膨らんだのはどうしてだろう?」という問題意識が生まれます。そして、缶ボトルの素材である「金属」、中身に入っていた「空気」「水」、そして手でさわった時に膨らむことから「熱(体温)」に関係があるのではないか、と解決の見通しを立ててその原因を探っていきます。
今回は4年「物の体積と温度」導入場面における教材の工夫から、子どもの学びのつながりをつくる一例を紹介させていただきました。教師が子ども目線に立って学びのつながりをつくることで、子どもたちは自分の考えを確かめようと目的をもち、生き生きと学習に取り組むことが期待できるのではないかと思います。
「このようなテーマで書いてほしい!」「こんなことに困っている。どうしたらいいの?」といった皆さんが書いてほしいテーマやお悩みを大募集。先生が楽しめる理科授業を一緒に作っていきましょう!!
※採用された方には、薄謝を進呈いたします。
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<執筆者プロフィール>
有泉翔太●ありいずみ・しょうた 神奈川県公立小学校教諭。川崎市立小学校理科教育研究会常任委員。神奈川CSTおよび神奈川CST協会運営委員。下沼部小学校は令和5年に理科の全国大会を控える。
<著者プロフィール>
寺本貴啓●てらもと・たかひろ 國學院大學人間開発学部 教授 博士(教育学)。小学校、中学校教諭を経て、広島大学大学院で学び現職。小学校理科の全国学力・学習状況調査問題作成・分析委員、学習指導要領実施状況調査問題作成委員、教科書の編集委員、NHK理科番組委員などを経験し、小学校理科の教師の指導法と子どもの学習理解、学習評価、ICT端末を活用した指導など、授業者に寄与できるような研究を中心に進めている。