小6算数「拡大図と縮図」指導アイデア
執筆/埼玉県公立小学校教諭・小田木香純
編集委員/文部科学省教科調査官・笠井健一、浦和大学教授・矢部一夫
目次
本時のねらいと評価規準
(本時1/8時)
ねらい
拡大図、縮図の意味や性質について調べ、説明することができる。
評価規準
図形を構成する要素及び図形間の関係に着目し、合同の意味を基に、拡大図や縮図の意味を考えている。
問題場面
○○小学校のシールを作ります。同じ形のまま大きくして目立たせたいと思います。

私たちの小学校のシールをもう少し大きくして同じ形のまま目立たせたいと思います。
大きくしますね。(横の長さを2倍にした(い)を提示する)
え? 待ってください。違います!
大きくしたんだけれど、何が違うの?
横に広がってしまって、もとのシールの形と違います。
そうですか。では、どうしたらいいですか。
縦に長くしてください。
縦に長くしますね。(縦の長さを2倍にした(う)を提示する)
え? 今度は縦に伸びてしまってもとの形と違います。
横に広げたり、縦に長くしたりしましたが、形が変わってしまいましたね。同じ形は作れないのでしょうか。
C1:横にも縦にも3マスずつ伸ばしたらどうかな。〔(え)〕
C2:横に2倍、縦にも2倍に伸ばしたらできるんじゃないかな。〔(お)〕
なるほど。C1さんとC2さんのように、横も縦も同じように伸ばしてみたら、同じ形のまま大きくできるというのですね。(C1とC2の反応を取り上げ、全体に提示する)
(え)は同じ形に見えるけれど違うみたいだなぁ。
(お)は(あ)と同じ形だと思います。
では、(お)が同じ形に見えるわけを考えましょう。
本時の学習のねらい
(あ)と(お)が、大きさは違っても同じ形に見える理由を考えよう。
見通し
図形のどこに注目して調べたらいいかな。
合同な図形の時に辺の長さに着目したので、対応する辺の長さに注目して調べてみよう。
合同な図形は角の大きさが同じだったので、対応する角の大きさに注目して調べてみよう。
自力解決の様子
A つまずいている子
辺の長さや角の大きさを調べた後、どうしたらよいか分からない。
B 辺の長さの関係に気付かない子
角の大きさは等しいんだけれど、辺の長さの関係はどうなっているんだろう。
C ねらい通り解いている子
対応する角の大きさがすべて等しく、辺の長さがどれも2倍になっている。
学び合いの計画
「何が同じだと同じ形に見えるのか。また、何が違うと同じ形に見えないのか」と問いかけて話し合いをさせ、合同な図形の際に着目した角の大きさと辺の長さに目を向けさせることにより、「同じ形に見える形どうしはどのような関係になっているか」を明らかにしていきます。調べて分かった数値や調べて気付いたことが見えるように板書にも話合いの内容を残します。
また、(あ)と(お)で成り立つ関係が、(あ)と(い)、(あ)と(う)、(あ)と(え)では成り立たないことも分度器や物差しを使って確かめていくことで、「同じ形」の概念を明らかにできます。
さらに本時の学習では、(お)の図形は、(あ)の図形に対応する辺の長さは1:2なので「2倍の拡大図」というように図形間の大きさを、割合や比を用いて表すことをおさえます。このような2量の関係の表し方につまずく児童が多いため、「もとにする図形(あ)の辺の長さを1とみたときに、(お)の対応する辺の長さは2にあたる」ということを丁寧におさえ、比で表しているC児の考えと結び付けていくことが大切です。
子どものノート例

全体発表とそれぞれの関連付け
C1
角の大きさに着目する
(あ)も(お)も角の大きさがすべて同じになりました。
C2
辺の長さに着目する
(あ)辺AB 3㎝ (お)辺DE 6㎝
(あ)辺BC 4㎝ (お)辺EF 8㎝
(あ)辺AC 5㎝ (お)辺FD 10㎝
形が同じ(あ)と(お)の対応する辺の長さは、(あ)から(お)にそれぞれ2倍の長さになっている。
C3
辺の長さに着目し比で表す
AB:DE 3:6=1:2
BC:EF 4:8=1:2
AC:FD 5:10=1:2
形が同じ(あ)と(お)の対応する辺の長さは1:2で、それぞれ比が等しくなっている。
C2さんの考えの「2倍」というのはどういう意味でしょうか。
例えば辺ABの長さを1と見たときに、辺DEの長さは2にあたります。
(あ)の三角形の辺の長さをもとにしたときに、対応する辺の長さがそれぞれ2倍になっている。
C2さんの考えと似ている考えはありますか。
C3さんは、比で考えています。対応する辺の長さを比で表すと、AB:DEは3:6で比を簡単にすると1:2になります。それぞれを比で表すと、すべて1:2で比が同じになります。
なぜ似ているといえるのですか。
(あ)を辺の長さを1とみると、おのそれぞれの辺の長さがどれも2にあたるところが似ています。
1:2ということは、(お)の辺の長さは(あ)の辺の2倍になっているということだからです。
1:2というのは、もとの(あ)の辺の長さを1とみると、(お)の対応する辺の長さは2とみられるということですね。では、大きさは違っても同じ形になるわけをまとめましょう。
対応するすべての角の大きさが同じで、対応する辺の比が同じだと同じ形になります。
だから、(え)は同じ形にならなかったんだね。
まとめ
対応するの角の大きさがそれぞれ等しく、対応する辺の比が等しいと、もとの図形と同じ形になる。
評価問題
形を小さくするときも、同じことがいえますか。

子どもに期待する解答の具体例
※図を調べて確かめる。
- 対応する角の大きさはそれぞれ等しい。
- 対応する辺の長さの比はどれも2:1で等しい。なので、図形を小さくしても同じことがいえる。
感想例
対応する角の大きさを等しくしたり、対応する辺の長さの比を等しくしたりすると同じ形になるのがすごいと思いました。三角形以外の図形も調べてみたいです。
『教育技術 小五小六』2021年8/9月号より