道徳は、自分の価値観の変化を自分の言葉で語り合うこと

愛知淑徳大学非常勤講師・柴田八重子さんは、著書『みんなで創ろう!主体的・対話的で深い学びのある道徳科の授業』の中で、「対話」と「中心発問」の重要性を説かれています。「中心発問の重層化」についての具体的なステップを紹介いただくともに、授業を通してのゴールはどこに設定すべきなのか、詳しくお話を伺いました。

柴田八重子

愛知淑徳大学非常勤講師
柴田八重子さん

授業の基本は中心発問創り

――著書では、「特別の教科道徳」 において「主体的・対話的で深い学び」を目指すとき、なぜ、「対話」や 「中心発問の重層化」にこだわるのかについて解説されています。

柴田 私は、道徳科の授業の基本は、 中心発問創りだと思っています。「ねらい」とする価値項目に対する今までの自分の価値観を改めて知り、級友の力を借り、自分の価値観の新たな高まりを実感する――。子どもたちとともに、すべてをそこに向けます。

中心発問では最初、教材世界の言葉を使い、率直な考え・思いを語り合います。語りながら、自分の価値観に気付き始めます。

「中心発問の重層化」とは

――「中心発問の重層化」とはどのようなことでしょうか。

柴田 一層目の段階では「こういうことだな」「言葉にできるぞ」と思えたら、そっと立ち上がります。クラス全員が立てたら、誰かから発言をし始めます。よく聞いていて、自分も内容が同じだと思ったら、発言者と一緒に座ります。全員座るまで聴き合い、クラス全体でどういう意見が何種類出ているか確認し、議論の準備をします。

自分の位置、みんなの位置がわかったところで、次の段階に入ります。
A〜Eまでの5種類の意見が出たら、なぜその意見に至ったのか、根拠と理由を言う二層目に入ります。

始めは教材内の状況言葉で「そうか!」「いやそれは許せん!」等の意見が出てきます。教材内の議論です。そのうち、教材内言葉が自分言葉になり「わかっているけど、でも ……。」「私たちってほんとに○○の大事さがわかっているかなあ?」と価値観が出てき始め、「○○ってこと、俺は難しいよ」と人間の弱さとみんなで真向かいし、○○の難しさと意義が対話で深められ、◎◎が見えてきます。

授業の3層目までいくと、自分の変化成長が言えるようになります。「俺、嫌になってきた。今まで浅はかだった。A君の意見を聞いて、ああ、そうかと思った」という振り返り感想を出してくれます。「今すぐこうしますとは言えないけど、Bさんの意見を聞いて、自分が恥ずかしくなった」など、価値観がどう変化 してきたかを自分の言葉、次元で言います。お互い励まし合いながら。

話合い
写真/大庭正美

授業のゴールはどこにあるか

――50分の道徳科の授業のゴールはどこにあるとお考えですか?

柴田 現実の生活の中にはいろいろな価値が混在しており、一つの価値観が授業を通して変化しても、それが現実の生活にすぐ反映できるわけではありません。道徳科の授業を通し、新しい生き方や価値観を感知し始め、 自分ごととして大事にしたいと思うようになってほしいと思います。

先生方も「わかったか」でなく、 いかに友達のもっているものを「吸収しようとしたか」、「放っておけない自己課題として捉えたか」を同行者として評価し励ましてほしいです。


柴田八重子先生の著書
『みんなで創ろう!主体的・対話的で深い学びのある道徳科の授業』
柴田八重子・著  定価:本体1400円+税 ISBN:978-4-09-1050779
https://www.shogakukan.co.jp/books/0910507
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道徳科の定番教材である以下の作品: 「はしのうえの おおかみ」「ヒキガエルとロバ」「私たちのために地球という星があるわけではありません」「美しい地球、生命宿る地球」「ロレンゾの友達」「銀の燭台」「ネット将棋」「二人の弟子」を例に、この教材の特徴、授業前、本時、展開、学習指導案を例に、対話と中心発問などについての図解イラストを多数掲載。若い教師にも、ベテラン教師にもわかりやすいように解説している。


インタビュー/EDUPEDIA まとめ/出浦文絵

●これと関連したインタビュー記事が「EDUPEDIA」でも配信されています。

『教育技術 小三小四』2019年6月号より

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