【教科調査官に聞く】新学習指導要領 理科-改訂ポイントと授業改善の視点ー

学習指導要領の改訂にあたり、そのポイントや授業改善の視点などをテーマに、文部科学省・鳴川哲也教科調査官と東京都公立小学校・田村正弘校長に対談していただきました。

田村正弘(たむらまさひろ):東京都出身。埼玉県公立中学校教諭(理科)、東京都公立小学校教諭(この間「キト日本人学校」へ3年間派遣)、東京都中野区教育委員会指導主事、東京都公立小学校副校長、中野区教育委員会統括指導主事、東京都公立小学校校長を経て、現在、東京都足立区立千寿桜小学校校長。文部科学省「学習指導要領の改善に必要な専門的作業等協力者」(2016~2017 年度)、国立教育政策研究所「学習指導要領実施状況調査結果分析委員会」主査(2014年度)。

改訂ポイントは、大きく3つ

田村正弘校長
田村正弘校長

田村 小学校学習指導要領の改訂ポイントを、聞かせてください。

鳴川 改訂ポイントを、大きく3つ示します。1つめは、育成を目指す資質・能力が「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力等」「学びに向かう力、人間性等」という3つの柱で整理されたということです。これは、すべての教科において共通の改訂ポイントです。

2つめは、見方・考え方です。見方・考え方については、物事を捉える視点や考え方として整理されましたが、小学校理科では、現行の学習指導要領の目標の中に、「科学的な見方や考え方を養う」という言葉を使ってきましたので、ここの捉えが大きく変わることになりました。

3つめとしては、学習内容が多少変更になった点です。新しい内容として、3年に「音の伝わり方と大小」、4年に「雨水の行方と地面の様子」、6年に「人と環境」が追加されました。

知識の質を高めるために、新しい内容を追加

田村 新しい学習指導要領で新たに設定された内容である3年の「音の伝わり方と大小」、4年の「雨水の行方と地面の様子」、6年の「人と環境」について、追加した理由や指導の視点について教えてください。

 鳴川哲也教科調査官
鳴川哲也教科調査官

鳴川 今回の改訂では、 知識の理解の質を高めることが重要視されています。これは、個別ばらばらの知識を個別に理解するだけではなくて、それらを相互に関連付けて理解することが重要になるということです。小学校だけでなくて、小・中・高という学びのつながりのなかで、理解することが大事です。

音については、今までは中学1年で学習していました。「音」は、小学校の段階で体験できる部分であり、それを小学校で学んでおくことにより、中学校の学びを深くします。

「雨水の行方と地面の様子」についても、今までは5年と6年に関連する単元がありましたが、それを4年でも学習することによって、5年、6年の学びがより深く、豊かになることを願っています。また、防災教育の視点も入っています。

「人と環境」については、 人を中心に据えて、地球環境を見るという学習が、中学校での学びにつながっていくようにしました。新しく入った学習内容だけを見るのではなく、その学習が、次の学習にどうつながっていくのかということを意識して、その学習を指導してほしいと思います。

田村 この移行期、学校現場ではどんなことを留意して、授業を進めればよいのでしょうか。

鳴川 現場は、見方・考え方を働かせることを目的のように考えていたり、主体的・対話的で深い学びの実現が最終目的のような研究テーマを掲げていたりするところが見受けられます。今回の改訂では、いくつものキーワードが出てきますが、「資質・能力」の育成が目的です。その目的を達成するために、「見方・考え方」を働かせます。その子供たちの様子を教師が見る時に、「主体的・対話的で深い学び」という授業改善の視点で見るということです。キーワード相互の関係性をしっかり理解して、日々の授業を構想することが大事だと思います。

取材・文・撮影/浅原孝子

『教育技術 小五小六』2019年5月号より

*この対談は、教育技術MOOK『何が変わるの? 教科等の要点が簡潔にわかる! 新学習指導要領 ここがポイント』からの転載です。

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編/小学館「教育技術」
定価 本体1400円+税
発売日 2019年3月18日
発行 小学館
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