国語の構造的板書④ ~イメージマップで考えを広げる~
連載|ayaya先生のすてきやん通信
Instagramでは1万人超えのフォロワーに支持され、多くの女性教師のロールモデルにもなっている樋口綾香先生の人気連載! 今回は、イメージマップを使った、国語の「構造的板書」の紹介です。
執筆/大阪府公立小学校教諭・樋口綾香
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■国語の構造的板書① ~子どもの気づきを引き出す~
■国語の構造的板書② ~二段対応表で比較する~
■国語の構造的板書③ ~逆Yチャートで考えを広げる~
目次
イメージマップで思考を拡散
前回に引き続き、今回も、「考えを広げる構造的板書」についてお話します。
国語の授業において、思考の拡散と収束は大変重要です。
授業者は、発問によって広げた思考を、さらなる発問によって収束させたり、揺さぶったりしながら児童を深い学びへと誘います。
この、思考を拡散する場面で使いやすいのが、イメージマップを使った板書の構造化です。
「おとうとねずみチロ」には、兄さん、姉さん、弟の3匹のねずみが出てきます。弟のねずみにだけ「チロ」という名前があり、それが題名にもなっています。つまり、チロというねずみが弟であるということが、とても大切な物語であると分かります。
題名に人物名がくる物語は、他の種類の題名よりも、一層丁寧に人物の特徴を読んでいく必要があります。小さな気づきが、大きな発見、深い読みへとつながっていくため、題名に着目したり、手法を工夫したりしながら、児童の意欲を掻き立てます。
そこで、人物のイメージを豊かにする、イメージマップを使った構造的板書を紹介します。
人物イメージマップを使った授業
学習の流れは次の通りです。
①「チロの特徴探しをするよ」と伝える。
②「特徴って何だろう」と投げかける。
私はいつも、自己紹介の時に話すこと、と伝えています。「自分の名前」「住んでいるところ」「得意なこと」「苦手なこと」など。「誕生日」はあまり物語には出てきませんが、「見た目」や「家族関係」はよく特徴として描かれます。「自己紹介のときに、みんなはどんなことを伝える?」と聞いて、物語の人物の特徴と合う事柄を確認していくとよいでしょう。
③本文を読み、チロの特徴を探す。
チロの特徴は、お話のはじめにたくさん出てきます。「先生が読むので、チロの特徴が書いてあるところに、線を引きましょう」と指示を出します。
④線を引いた場所を近くの児童と確かめ合う。
何が人物の特徴なのか、まだ捉えられていない児童も多くいるでしょう。少しでも不安が解消されるように、ペアやグループでの確認を入れながら、スモールステップを意識して学習を進めます。
⑤ノートの真ん中に「おとうと」と書き、イメージマップの説明をする。
いよいよイメージマップを使って、考えを広げていきます。「『おとうと』とノートの真ん中に書きましょう」と言っただけで、「え?チロじゃないの?」とつぶやく子がたくさんいます。「名前も特徴なんだよ」と伝え、さっそく枝をつけて、「名前はチロ」という丸囲みを増やします。「こんな風に、『おとうと』の周りに特徴をたくさん書こう」と拡散型の発問をし、活動をスタートさせます。
⑥すぐに書き始められた児童のノートを電子黒板に写しながら机間指導をする。
すぐに書き始められる児童と、そうではない児童がいます。分かっていても不安で書き進められない児童のために、いくつか書き始めた児童のノートを写真に撮り、電子黒板で大きく映し出します。イメージマップはきれいに書く必要はありません。また、縦書きでも横書きでも問題ありません。児童の思考ができるだけスムーズに書き出せるように、「こう書いたらいいよ」「こんな書き方もあるね」という意味も込めて提示します。
机間指導中は、「よく気づいているね」「しっかり読めたんだね」と内容面をほめることと、「もう3つも書けたんだね」「丁寧に書いていて見やすいね」という量や丁寧さをほめることの両方を意識してしています。児童一人ひとりの特長や興味関心にできるだけ幅広くアプローチし、意欲へとつなげる意図があります。
⑦児童の意見を全体で共有する。
イメージマップにどんなことを書いたのか尋ね、出た意見を板書していきます。このとき、自分のノートにないことが出てきたら、書き足してもよいことを伝えます。このように伝えると、自分の考えと友達の考えを比べながら聞く児童が増え、「すべて写しましょう」という指示よりも注意深く聞きます。
⑧「どの特徴がいちばん大事だろう」と問う。
様々な特徴が出てきた後、「これだけたくさんの特徴があるけれど、どれがいちばん大事かな」と問うことで、お話の中で事件や事件の解決につながる大事な人物の特徴に気づく力をつけます。これが、収束型の発問です。
収束へ向かうときには、色チョークを使い、児童の考えの深まりを視覚化します。
ここで児童は、「字が書けない」という特徴に注目しました。もし字が書けていたとしたら、このお話の中で2度に渡ってチロからおばあちゃんに送られる「声の手紙」がなくなってしまいます。そして、私は「チロは何才くらいだろう」と追発問をしました。お話に浸り、人物の心情を想像しやすいように、より人物のイメージを広げてほしかったからです。収束型の発問で深まった児童の考えを、さらに拡散したのです。
このような児童の思考の流れを板書の中に残しながら、振り返りでは、チロについて読み深めたことを書いて、授業を終えました。
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人物イメージマップの良さ
人物イメージマップは、どの学年でも使用することができます。
マップには「本文に書かれていることを書く」ということを基本にして、そこから想像したことも区別して書くと、考えが広がっていきます。
さらに、イメージマップとXチャートやマトリクスを組み合わせて、書く内容をカテゴライズすれば、より気づきを与える板書にもなるでしょう。
考えを深めるポイントとして、収束型の発問と組み合わせたり、中心人物と対人物の共通点や相違点を見出すようにすると、一面的であった人物関係に奥行きが出て、児童が主体的に読み深める授業を組み立てることができます。
人物イメージマップを使った板書例
次回は、考えを整理する構造的板書について、お話します。
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■「板書」の基本① ~見やすい文字の書き方~
■「板書」の基本② ~低学年の板書のポイント~
■「板書」の基本③ ~児童の意見を広げるポイント 前編~
■「板書」の基本④ ~児童の意見を広げるポイント 後編~
樋口 綾香
ひぐち・あやか。Instagramでは、ayaya_tとして、♯折り紙で学級づくり、♯構造的板書、♯国語で学級経営などを発信。著書に、『3年目教師 勝負の国語授業づくり』(明治図書出版)ほか。編著・共著多数。