小4道徳「和食」指導アイデア
執筆/山形県公立小学校校長・佐藤幸司
目次
教材を提示
教材1 和食の写真
▼朝ごはん
▼高級な料理
一般的な朝食の写真と料理店や旅館で出すような食事の写真を、それぞれ準備します。豪華さに違いはあるが、どちらも和食であることを確認します。
教材2 無形文化遺産 登録
提示用に、B4 の大きさの用紙(画用紙など)に書いて準備します。翌12月5日の新聞記事があれば、さらに効果的です。
教材3 ユネスコの説明
ユネスコ(国際連合教育科学文化機関、United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization U.N.E.S.C.O.)は、諸国民の教育、科学、文化の協力と交流を通じて、国際平和と人類の福祉の促進を目的とした国際連合の専門機関です。
ユネスコ憲章前文【目的及び任務…憲章第1条参照】
文部科学省ホームページより
教材4 農林水産省「和食」紹介リーフレット
※授業では、和食が無形文化遺産に登録された4つの理由として、「特徴①~④」を示します。
教材5 祝箸の正しい使い方
祝箸の正しい使い方は?
おせち料理は厄を払うといわれる柳でできた「祝箸」でいただきます。両方の先端が細くなっているのは、一方を年神様、もう一方を人が使い、年神様と食事をともにするという意味があります。
米俵のように中ほどが太めなので五穀豊穣、また「はらみ箸」と呼んで子孫繁栄も表します。祝箸は、使ったら自分で清めて(洗って)、松の内(1月7日まで)は同じ箸を使います。
紀文食品ホームページ「おせち料理のいわれ」より
実際の授業展開
タイトル
和食
指導目標
和食のよさを知り、日本人の習慣や文化を大切に引き継ぎ、伝えていこうとする意欲をもたせる。
内容項目
C 伝統と文化の尊重、国や郷土を愛する態度
準備するもの
・富士山の写真
・教材① 和食の写真 ①朝ごはんと②高級な料理
・教材② 無形文化遺産登録(提示用)
・教材④「和食」紹介リーフレット
・教材⑤ 祝箸の写真
・箸 祝箸と菜箸(または割り箸)
▼教材①②⑤はこちらからダウンロードできます
小四道徳学習プリント「和食」
▼教材④は下記からダウンロードできます。
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/ich/pdf/leaflet_jjpg.pdf
指導の概略(板書計画例)
導入
- 富士山の写真を提示して問う
① 富士山について、どんなことを知っていますか。
- 世界遺産であることを子供たちから引き出す。
展開1
② この写真を見てどんなことに気付きますか。
- 富士山と関連付けて、日本の代表的な朝ごはんであることを押さえる。
③ こちらの写真はどうですか。
- 品数や豪華さには差があるが、どちらも日本の食事(和食)であることを確認し、「和食」と板書する。
④ 和食が認められた理由が四つあります。何でしょう。
- 経験を基に、自由な雰囲気で発表させる。その後、資料④から4つの理由を知らせる。
展開2
- 「御節」と板書。読み方を確認したら、祝箸と菜箸(または割り箸)を提示する。
⑤ 祝箸の両端が細くなっているのはなぜでしょうか。
- 教材⑤を基に、その理由を伝える。
終末
- 2021年は東京オリンピックが開催されることに触れ、問う。
⑥ オリンピックのときに外国の人にすすめたい和食は何ですか。
- その和食を選んだ理由も発表し、和食のよさから日本のよさへと考えを広める。
ここがアクティブ!授業展開の補足説明
2013年(平成25年)12月、和食がユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化
遺産に登録されました。旬の素材、理想的な栄養バランス、美しい盛り付けなどに加え、年中行事に深くかかわる文化面も評価されました。
授業では、まず、富士山の写真を提示します。富士山の美しい風景の写真をカラーコピーなどして準備します。
ここから、富士山→日本の山→世界遺産→日本の食事→無形文化遺産とつなげていきます。導入段階で子供の発言をたくさん引き出し、それらをつなげて授業を展開しましょう。
実物の資料として、祝箸と菜箸を準備します。菜箸は割り箸でも代用できますが、できれば祝箸と同じように丸棒状の箸がおすすめです。これら二つを提示して、どちらがおせち料理のときに使う箸なのかを尋ねます。
祝箸の両端が細くなっているのには、理由があります。「料理を取り分けるときに反対側を使う」と考えられがちですが、そうではありません。これには、「反対側は神様(年神様)が使う」という意味があります。
和食のなかに、日本人の感性の豊かさや自然に感謝する気持ちを見いだし、伝統や文化を受け継いでいこうとする意欲を子供たちにもたせていきます。
授業をするうえでの注意点・ポイント解説
この授業では、和食とお正月と関連付けて、おせち料理を取り上げました。ですから、実施時期としては、年始休業明けの1月最初の週が最適です。
家庭によっては、お正月のおせち料理を食べない子供もいるかもしれません。そこで、子供の実態に応じてスーパーの広告などを準備して、おせち料理に対する共通のイメージをもたせるようにしましょう。
小3道徳「おせち料理を知っていますか?」指導アイデアのページでも、「おせち料理」を題材にした授業の指導案を掲載しています。そちらの資料も効果的に活用してください。
授業の目標は、「日本人の習慣や文化を大切に引き継ぎ、伝えていこうとする意欲をもたせる」ことにあります。おせち料理(そのほかの和食)は、そのための教材の一つです。
食材の豪華さではなく、そこに込められた願いや意味に注目させます。家庭の食生活の「格差」で悲しい思いをする子がいないように、十分配慮して授業を行うようにします。
『教育技術 小三小四』2020年1月号より