小1道徳「じぶんの よい ところ」指導アイデア
執筆/追手門学院小学校・多賀一郎
目次
内容項目
個性の伸長
自分のよさを生かし伸ばすことを重視して「自分の特徴に気付くこと」。
趣旨
本単元(東京書籍 一年)は、くすのきしげのり作 『ええところ』という絵本から抜粋してつくられています。自分にはよいところなど一つもないと悩むわたしに、友達のともちゃんがよいところを見付けてくれるという内容です。
教科書ではどうしてもページ数などの縛りがあって、割愛せざるを得ない部分ができてしまいます。しかし、そのために一年生の子どもには理解しにくいことが出てきてしまうのです。
例えば
- よいところを聞かれたともちゃんが、ためらって考え込むことや、そのために「わたし」が家で泣くことがカットされているので、「わたし」の悲しみの深さが伝わりません。
- クラスのみんなが「わたし」の手を握りにくるのは、ともちゃんが自慢のように言ったことによるのに、その場面もないので、ともちゃんの思いが伝わりません。
- なぜ「わたし」が「ほかのこのええところをみつけてあげるねん。いっぱいみつけて、いっぱいいうてあげるねん。」と決めたのかがカットされているので、唐突な感じがして、「わたし」の思いが伝わりません。
以上から、この単元についてはもともとの絵本そのものの読み聞かせが必要だと考えます。それほど長くはありませんから、五分くらいで全部読めます。
ただし、教科書の本文もそうですが、
「ええところや(いいところだよ)」
「…やろ(でしょ)」
「いうて(言って)」
「いうた(言った)」
「きめたんや(きめたよ)」
※( )内は標準語に直したものです。
などは関西弁で、関西ではない地域の子どもたちには違和感があるかも知れません。関西弁になじみのない地域では、言葉の意味を解説しながら読まないと、内容が伝わらない可能性があるので、要注意です。
※「…ねん」は、強く言う時の言葉です。
本時の展開
①自分のよいところ、友達のよいところをワークシートにできるだけたくさん書き出す。
一年生だから、割と素直に書いていくでしょう。しかし、人のよさを見付けていくには、その観点が必要です。観点の少ない子どもはなかなか書けません。「やさしい」という漠然とした言葉しか出てこないといったことが起こります。
そこで、「友達のよさって、どんなことがありますか」と問いかけ、対象の名前を出さずにいくつか発表させて、観点として示したいものです。
②「ともちゃんは、最初は私のどんなところがよいところだと言っていたのですか?」
と、問いかけて、手が温かいという身体的な特徴であることを押さえます。教科書の挿絵がヒントになります。ここで、最初はよいところを見付けてもらって「うれしかった」だけであることを強調します。
③教科書では、最後の三行の前は一行だけブランクになっています。絵本ではそこには、ともちゃんがいちばんやさしいという「わたし」の言葉が入っています。
そこを読み聞かせした後、教科書の最後の段落(三行の文)を模造紙に書いて黒板に貼り出し(もしくは電子黒板で示し)、全員で音読します。
そして、何を「きめたんや」と言っているのかを確認した後、「最初はうれしかっただけなのに、どうしてちょっと変わったのかな?」と、尋ねます。隣同士でどうしてなのかを話し合ってから発表させます。
・もっとうれしいことを言われたから。
・いいところを見付けるのが大事だと思ったから。
等の発言が出てくるでしょう
④ 「もっとええところが見付けられないかを、考えて書きましょう」
と言って、もう一度ワークシートに書き加えさせます。
⑤「ええところカード」を配って、「もっといろんな友達のよいところを見付けようと思ったら、このカードに書いて封筒(大きな封筒を用意する)に入れてください。
と、これからのことを話します。カードの書き方を説明して、まずは、自分のよいところについて、もう一度考え直して書かせます。
▼ええところカード
評価
・提出した「自分のよいところ」が具体的に書けているかどうか。
・自主的に友達のよさを見付けて封筒に入れてくるかどうか。
イラスト/小泉直子
『教育技術 小一小二』2019年12月号より