小3・4外国語活動:アクティビティを通した「思考・判断」の見取りのポイント
外国語授業のアクティビティにおいて、子どもはどのように思考・判断しているのかを見取るポイントとは? 小学校外国語科検定教科書の編集委員でもある神奈川県公立小学校の長沼久美子先生に教えていただきました。
執筆/神奈川県公立小学校教諭・長沼久美子
目次
Q1 友達と「何が好きか」をたずね合うアクティビティでは、どのような思考・判断が行われているのですか?
(『Let’s try1』P.21 アクティビティ2)
A. 相手によって質問する事柄や順番を変えたり、質問の答えにどのように反応するかを考えたりする中で、思考・判断しています。
慣れ親しんだ単語「Like」を使って、友達と「何が好きか」を聞き合う活動です。
教科書には、食べ物や色についての表が用意されています。1番右は空欄なので、ほかのものを入れてみるのもいいでしょう。もし、いろいろと聞いてみたい子どもがいるようならば、空欄の表を用意する方法もあります。
どの順番に聞くかを考えるのも、思考・判断となります。
〇〇ちゃんに、好きなテレビについて聞いてみよう
というように、相手に合わせて質問を選んでいれば、思考・判断を伴っています。
しかし、好きな食べ物ばかりを聞く子もいるでしょうし、好きな色ばかりを聞く子もいると思います。この場合、相手に応じた思考・判断が十分に行われているとは言えません。
「Like」を使ってどんなことが聞けるか、相手によって聞きたいことが変わったりしないか等を子どもたちに確認しながら、バリエーションが増えるように支援してみてください。
子どもが思考・判断している様子を見取るには、
どうして、その質問をしたの?
質問の順番で工夫したことはあるかな?
と子どもに問いかけてみましょう。
また、人数が多い場合は全員に聞くことは難しいので、やり取りで工夫したことを振り返りカードに書いてもらうことなどでも可能です。
Q2 音声を聞いて、誰の筆箱の中身なのかを考えるアクティビティでは、どのような思考・判断が求められるのでしょうか。
(『Let’s try 2』P.20 レッツリッスン)
A. ここでは、聞き取れた語や数から情報を取捨選択して、絵の中から適切なものを選ぶという思考・判断が求められます。
この活動は、文房具の名前を聞き取ったり、数を確認したりすることで解くことができます。
とてもシンプルな活動なので、思考・判断する場面がないように感じられるかもしれませんが、ここでは、あらかじめ写真によって提示されている情報を頼りに、どのような表現になるのかを考えながら聞く活動が想定できます。
例えば、1⃣の筆箱には、鉛筆が4本、消しゴムが1個入っています。
この場合、
鉛筆は、pencilだった。4個だからfourになるのかな
と考えたり、
持っているのだから、I have かな
と、どのようなフレーズになるのかを予想したりします。これが、思考・判断です。
音声を聞く前に、どのような言い方になるのか、考える時間を確保してみるとよいでしょう。
また、音声を聞く場面では、メモを取ることも思考・表現のきっかけになります。何をメモに残せばいいのか考える時、重要な言葉を選ぶことになるからです。
筆箱の中身だから、文房具の名前と数が重要だ
と、判断することで、メモのポイントがはっきりします。
このように、一見単純そうに思える活動にも、思考・判断が求められる場面はたくさんあるのです。
Q3「文房具セットを作り、友達と伝え合おう」のアクティビティでは、どのような思考・判断が行われているのでしょうか。
(『Let’s try 2』P.21 Let’s play 2)
A. 目的に合わせた質問を考えたり、質問を理解した後で状況を判断して答え方を検討するといった「思考・判断」が行われます。
このアクティビティはペアで行います。AがBに持っているものを伝えてBがカードを並べる活動や、BがAに“Do you have…?”のフレーズを使って尋ねて同じものを作るなどの活動ができます。
“Do you have…?”は、実生活で使うことが多い表現です。例えば、何かを借りたいときに「消しゴムを持っていますか」と聞いたり、買い物をするとき「レモンは売っていますか」と尋ねたりする場合に、この表現で伝わります。
この表現が使われるとき、話し手には、聞きたい目的があることになります。
このアクティビティを通して、話し手は、目的に合わせて、“Do you have…?” を使った質問を考えることで、思考・判断しています。
一方、聞き手は、聞かれたことを理解して、持っているのか、持っていないのかを思考・判断します。持っている場合は、すぐに渡せるか、どこにあるか考えたり、持っていない場合、どのように答えようかと考えたりもします。
このように、“Do you have…?”の表現を使う場面では、話し手も聞き手も、思考・判断が求められます。
暗記したフレーズを繰り返すだけの形式的な活動では、思考・判断の機会は失われます。子どもが実感をもって質問を考え、答えを探せるような活動としていきましょう。
- メールアドレスだけで、カンタンに投稿できます。
- いただいた内容を一部引用、要約してサイトに掲載させていただくことがあります。
- 全ての質問にお答えできるわけではありません。予めご了承ください。
長沼久美子
神奈川県公立小学校教諭。小学校英語教科書CROWN Jr. 編集委員。
(イラスト/本山浩子)
イラスト/横井智美