小3国語「ありの行列」説明文を読む3つの力でメリハリ授業

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大幅に削られた授業時数の中でも、国語と算数については、特に慎重に指導をしたいもの。二学期の授業内容の精選や組み方を工夫して、子供たちの「積み残しゼロ」をめざしましょう。ここでは小三国語について、メリハリある授業のポイントをご紹介します。

執筆/山口県公立小学校教諭・宮野大輔

説明文の学習で育てたい3つの力

今年度はコロナ禍への対応で、どの学校でも行事の削減や夏休みの短縮などが行われ、なんとか授業時数の確保がされていますが、今後、何が起こるか予測が難しい状況です。

そのような状況だからこそ、当該の教材を通して、どんな力を育むために何を指導するのかを、もう一度整理してみることが必要です。育てたい力が明確になれば、一つの単元の中で、どこが重要なのかが明確になり、いちばんの山場に向けて、「この部分は家庭学習でやってもらおう」とか「ここはみんなでじっくり話し合って考えさせたい」というように、メリハリのある単元構成ができるのです。

例えば説明文の学習では、私は次の三つの読みの力を育てたいと思っています。

  • 確認読み…「何が書いてあるか」確認する
  • 解釈読み…「どのように書いてあるか」解釈する
  • 評価読み…「どこがどのようによいか」評価する

筆者の書きぶりを解釈、評価していくことができるようになれば、他の説明文を読んだり、自分で説明文を書いたりすることができるようになります。

そのような力を身に付けていけるよう、私は読みの方法を工夫しています。その読み方で読むことによって、「あれっ、これは…」と子供自身が気付いて実感するようにし、それを基に、「これは実は…だよ」と明示的に教え、読み取り方を身に付けていけるようにしていくのです。

そうして、子供自身が他の文章の読みにも活用できる力を身に付けていけば、一つの教材の読みにかける時間も短くなり、それでいて学びの中身は濃いものになっていくのではないでしょうか。

読みの工夫で、文章構造の読み取り方を身に付ける

「劇化読み」で具体的にイメージする

さて、そのような気付きを子供たちに与えていくための読みの方法について、「ありの行列」を使って説明していきましょう。

この説明文を読むとき、まず何が書いてあるのか、「確認読み」ができていない子がいます。例えば、ウイルソンの実験について、ありの行動が具体的にイメージできていない子がいたりするのです。まず、それを学級全体で共有する必要があります。

そこでありの行動を劇化する「劇化読み」を行います。子供たちは劇をやりたいと思い、そのためにどんな役は何人必要で、それぞれどんな行動をとるのか、読んで確認をしていくのです。

「教材文をよく読んでみて」と言っても、子供たちはなかなか読みませんが、劇をしたいという思いや必然性があれば、自ら読んでイメージをふくらませていくのです。

「か・よ・ね読み」で問いの文を見つける

「劇化読み」を通して内容が確認できたら、筆者の書きぶりを評価する、「解釈読み」に入っていきます。この教材では、私は「か・よ・ね読み」という音読を行います。

これは、文章の最後に「~ですか?」「~ですよ」のように、助詞「か」「よ」「ね」を文末に付けて読んでみる方法です。この方法で読むことによって、

文末の「か」がしっくりくる→「問いの文」
文末の「~ですよ」がしっくりくる→「具体例を説明する文」

と、文の役割がはっきり分かってきます。ちなみに、「問いの文」には、その後の文章を読むうえで重要な『道しるべ』の役割もあるため、まずこの方法で見付けていくのです。

さらに、投げかけたり同意を求めたりする「よ」「ね」を付けて読んでみることで、筆者が顔の見えない冷たい人ではなく、書き手として読み手を思いやり、向き合おうとしている人だということを意識させたいとも考えています。

「博士・助手読み」で答えの文を見つける

「問いの文」が分かったら、それに対する答えとなる文章を見付けていくために、「博士・助手読み」という音読をします。

これは助手が博士に問いを投げかけ、博士が助手に説明をするように、叙述を読んでいく読み方です。例えば、「博士! 博士! なぜ、ありの行列ができるのでしょうか?」と、まず助手役が「か・よ・ね読み」で見付けた問いの文を読みます。

それに対し、博士役が「『はじめに、ありの巣から少しはなれた所に、ひとつまみのさとうをおいた』んじゃ」と博士になって、文章を読んで答えてみるわけです。ただし、これではしっくりきませんよね。

次に「『においをたどって、えさの所へ行ったり、巣に帰ったりするので、ありの行列ができるというわけ』じゃ」と読んでみると、しっくりきます。これで子供たちも実感をもって「この文が問いに対する答えの文だ」と答えることができるわけです。

ゆさぶりをかけて気付きを促す

ここまで読みの工夫を通して読んできたところで、1段落の序論にある「問いの文」、本論の中にある具体例、9段落の結論にある「答えの文」といった文章全体の構造が読めるわけです。

教材「ありの行列」の資料
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そこで私は「問いの文が1段落にあって、答えは9段落にあるんだよね。じゃあ、2~8段落は要らないんじゃない?」と本論の必要性について問いかけ、ゆさぶります。

すると子供たちは「絶対に要る」と言います。「最後に『このように、においをたどって』とあるでしょ。2~8段落がなかったら、『どのように』かが分からない」とか、「2~8段落がなかったら、ウイルソンが調べたことが分からないよ」など必死になって理由を答えます。

このようにゆさぶることで、本論の「具体」例が、問いと答えにある「抽象」的な考えを支えていることに気付かせます。こうした、読みの工夫を行うことで、序論、本論、結論といった文章構造やそれぞれのもつ意味、それを読み取るための方法を身に付けさせていくわけです。

説明文の構造が典型的で分かりやすい三年の学習だからこそ、こうした読み取り方を身に付けさせたいものです。そうすれば、高学年で出合う長く複雑な説明文を読むことも、決して苦にはならないはずです。

「メリハリ授業のヒント」関連記事 →小3算数「比較・抽象・概括」メリハリ授業のヒント

取材・文/矢ノ浦勝之

『教育技術 小三小四』2020年9月号より

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