子どもの質問力を高める環境構成の工夫とは|問いを生み出す「質問力」の育て方〈第5回〉
生成AIが普及していくこれからの時代では、「何を問うか」ということがますます重要になってきます。しかし、そもそも「問いの立て方」を十分に学ぶ機会がなかった私たちにとって、「問うことを教えること」は容易なことではありません。神戸大学附属小学校教諭の友永達也先生が、子どもの「問いを生み出す力」を育むための指導理論を解説する本企画、第3回は主に中学年の子どもを対象に、多くの質問ができるようになる、すなわち「問いを広げられるようにする」にはどうしたらよいか、について具体的な実践アイデアを交えながら紹介いただきます。
執筆/神戸大学附属小学校教諭・友永達也
シリーズ:問いを生み出す「質問力」の育て方
第1回:コミュニケーションに不可欠な3種類の問いとは?
第2回:低学年の質問指導「問いに親しむ」指導のコツ
第3回:中学年の質問指導「問いを広げる」指導のコツ
第4回:中学年の質問指導「問いを深める」指導のコツ
教室のコミュニケーションを豊かにするためには、お互いに質問し合って考えを広げたり深めたりすることが必要不可欠です。多様な社会を生き抜くこの「質問力」は、どのようにすれば身に付けられるのでしょうか。本記事では、問いを生み出す力をどうすれば子どもたちに育むことができるのかという指導理論について、具体的な実践アイデアも交えながら紹介していきます。
よりたくさんの指導アイデア、より詳しい理論的な説明が知りたい方は、執筆者が2025年に刊行した『対話を深め・問う力が育つ 質問力アクティビティ40』(東洋館出版)をぜひ手に取っていただけると幸いです。
目次
質問力を高める環境構成の大切さ
この連載では、子どもたちの質問力を高めるために低学年、中学年、高学年と、様々な実践のアイデアを紹介してきました。さらにそれらの実践アイデアは、子どもたちが段階的に質問力を高められるように、問いに親しむ、問いを広げる、問いを深めるというステップを踏まえたものです。このような教師の計画的な指導によって、子どもたちの質問力が着実に高まっていくことでしょう。
このような指導に加え、子どもたちの身の回りの学習環境に、質問力向上に向けた教師のねらいをとりいれた工夫を行うことで、子どもたちの質問力はさらに高まります。これが質問力向上を目指した環境構成ということです。
なぜ環境構成が大切なのでしょうか。それには大きく二つの理由があります。
一つ目は、子どもたちの問うことに対する意識を途切れさせないということです。授業の中で問う力を高める指導を実践することは重要です。その時間では、子どもたちは大いに質問することと向き合うことができますし、問う力を伸ばすことができるでしょう。
ただ、現場の先生方はよく分かると思うのですが、授業で学んだことが他の学習場面に生かされることは、かなりハードルが高いのではないでしょうか。試しに国語科で子どもたちが学んだ話し合う方法が、理科の実験で考察を話し合う場面に活かされているかどうかを考えてみてください。教科の学びが子どもの学習態度の変化につながるというのは、容易なことではないのです。
そこで学習環境の工夫として、常に子どもたちが問うことを意識できる環境を作ることができれば、子どもたちは様々な教科の中で、問うという意識を継続させることができます。それがやがて自然に問いを常に生み出そうとする学習態度の変化へとつながるのです。
二つ目は、自分たちの質問力の現状が可視化されることで、問うことに対するメタ認知を働かせられるということです。このあと本稿で紹介する環境構成のアイデアの一つに、自分たちの問いを整理した表を掲示する、というものがあります。例えばこのような環境構成を行うことで、自分たちがどのような問いを生み出すことができるのか、そしてその問いにはどのような効果があるのかと、問うことを客観的にとらえることができます。
大人でも、自分が普段どのような問いを発しているのか、その問い一つ一つにどのような効果があるのかと、分析してみた経験がある人はほとんどいないでしょう。ただ、実際に分析してみると、かなり幼い頃から子どもたちは問いを自然に発しています。幼い頃からそのような問いに分析的に関わることは、将来的に社会を切り拓く問い手として育っていくためには、重要なことだと考えています。
このように質問力を高めるうえで、環境構成を工夫することは非常に重要であると言えます。では実際にどのような環境構成の工夫が考えられるか、本稿では二つのアイデアを紹介します。
みんなの問いを数えまShow!
この環境構成は非常にお手軽で、明日からでもすぐに始められます。さらにすぐに効果がみられるという点でもおすすめです。取り組みとしては、「子どもの問いを数える」というシンプルなものです。
もう少し具体的に説明をします。ここまでこの連載記事を読んでくださった読者の方は「自分の教室の子どもたちの質問力はどれぐらいだろう」と気になっているはずです。そこで、一回の授業で子どもが質問するたびに、黒板の端に正の字で記録していくのです。そうすることで子どもたちが質問した合計回数が一目瞭然です。それだけで子どもたちは、もっと正の字を増やそうと質問するために、学習に一生懸命向き合うようになります。
数字の力はすごいですね。さらにその質問回数の記録を、下表のようにいろいろな教科で毎日行うことで、自分たちの質問力の現状が分かってきます。一週間も続けると、「質問を多くするのはクラスの誰か」「どんな授業場面で質問が多く出せるか」など、子どもたちはいろいろなことに気づいてきます。この気づきが、学級全体で質問力を上げていく上では非常に重要になってきます。
| 4月20日(月) | |||||
| 1時間目 | 2時間目 | 3時間目 | 4時間目 | 5時間目 | 6時間目 |
| 算数 2回 | 国語 1回 | 理科 3回 | 理科 4回 | 音楽 1回 | 社会 4回 |
| 4月21日(火) | |||||
| 1時間目 | 2時間目 | 3時間目 | 4時間目 | 5時間目 | 6時間目 |
| 図工 0回 | 図工 1回 | 国語 4回 | 算数 2回 | 体育 0回 | 書写 1回 |
| 4月22日(水) | |||||
| 1時間目 | 2時間目 | 3時間目 | 4時間目 | 5時間目 | 6時間目 |
| 国語 5回 | 算数 3回 | 総合 8回 | 社会 5回 | 理科 5回 | 音楽 0回 |

