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小3算数「余りのあるわり算」指導アイデア《割り切れない場合の計算の仕方》

特集
文部科学省教科調査官監修「教科指導のヒントとアイデア」
小三算数科 余りのあるわり算_タイトル

執筆/埼玉大学教育学部附属小学校教諭・下村怜史

監修/東京都国立教育政策研究所教育課程調査官・加固希支男、三郷市立立花小学校教頭・神谷直典

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単元の展開(各時の主な学習活動内容)

第1・2時 割り切れない場合の計算の仕方(包含除) 14÷3
第3時 (本時)割り切れない場合の計算の仕方(等分除) 16÷3
第4時 割り切れない場合の除法の答えの確かめ方
第5時 問題に応じた商の処理の仕方(余りを考える問題)
第6時 まとめ

本時のねらい

余りのある等分除と包含除を、「余りのある除法」として統合的に捉えることができる。

評価規準

割り切れない等分除と包含除の違いを、既習の除法の仕方を基に考え、説明することができる。

本時の教材のポイント

子供たちは、除法について乗法九九を1回用いて商を求められることを学習しています。また、除法には〈1つ分〉の大きさを求める場合が等分除で、〈いくつ分〉の大きさを求める場合が包含除という2つの意味があることを理解しています。そして、等分除と包含除の2つの問題場面を比較する活動を通して、2つの場面を除法として統合的に捉えてきました。本題材の、余りのある除法においても、等分除と包含除の2つの意味を統合的に捉えることで、理解を深めていくことが重要であると考えられます。

そこで、本時の授業では、前単元で学習してきたときと同じように、余りのある「等分除」と「包含除」の問題場面を比較する学習を取り入れていきます。そうすることで、子供たちは単に計算するだけでなく、具体的な場面を想像し、具体物や図を用いながら問題解決に取り組むことで、余りのある除法にも、「等分除」と「包含除」それぞれの意味があることを再認識し、除法として統合的に捉えることができるようになります。

余りのある除法においては、包含除の場面のほうが、その意味を子供たちが理解しやすいです。例えば、「10個のクッキーを3個ずつ袋に入れると、何袋できて何個余るか」という包含除の場面では、余った1個のクッキーの処理を図1のように3つに分けて考えてしまうのは問題の題意に合っておらず、除法において、余りが出てくることを容易に理解できます。

3つに分けたクッキー
図1

一方で、等分除の場面、「10個のクッキーを3人で分けると、1人何個ずつで何個余るか?」という場合、余った1個のクッキーを図1のように分けるなど、子供たちが日常生活の経験に基付いて工夫して解決しようと考えることができます。これは、現実の場面に即して思考している価値ある姿ではありますが、余りのある除法において、余りの意味を曖昧にしてしまう可能性があります。そこで、本時の授業では、分割してしまうとそのもの本来の価値が失われてしまうような素材を扱うことで、等分除の場面においても「余り」が出てくることを理解することができるようにします。

このように問題場面を比較する活動を取り入れ、等分除においても余りが出てくることに必然性がある問題場面を提示したりしていきます。そうすることで、子供たちは単に計算するだけでなく、余りのある等分除が用いられる場面の数量の関係を、既習の除法の考え方を基に具体物や図などを用いて考えていくことができます。

本時の展開

問題①
16このビーズがあります。3こずつ使ってアクセサリーを作るとき、アクセサリーは何本できてビーズは何こあまりますか。

前の問題と同じように考えられるよ。

3×5=15、16-15=1になるから、式は、16÷3=5余り1。アクセサリーは5本できてビーズは1個余るよ。

そうですね。前回と同じような考え方ができますね。もう1問出します。

問題②
16このビーズがあります。3人で同じ数ずつ使ってアクセサリーを作るとき、1つのアクセサリーにビーズは何こ使えて、何こあまりますか。

さっきの問題と似ているけど、少し違うところがありそう。

式は、16÷3=5余り1になるよ。

同じ式になっていいのかな。

それでは、2つの問題の似ているところや違うところを説明していきましょう。

学習のねらい
2つの問題の似ているところや違うところを説明しよう。

見通し

どのように説明していきますか。

ブロックを分けていき、分け方の違いを説明したいです。

図や式に表すと違いが見えてくるかもしれないよ。

それでは、自分なりの方法で説明してみましょう。

  • ブロックなどの具体物を用いて説明する
  • 式に表して説明する
  • 具体物や式を用いて説明する

自力解決の様子

A つまずいている子

・問題場面と具体的な操作や図が結び付かない。包含除の問題場面と同じように考え、余りが除数よりも大きくなってしまう。


B 素朴に解いている子

・問題場面から具体的な操作や図を用いて似ているところや違うところを考えている。しかし、等分除と包含除の問題場面になっていることには気付かない。


C ねらい通り解いている子

・問題場面から具体的な操作や図を用いて似ているところや違うところを考えている。乗法の式や図に表し、それぞれの問題場面が〈1つ分〉と〈いくつ分〉のどちらを求めているか理解している。

ノート例

B 素朴に考えている子

A つまずいている子

全体発表とそれぞれの考えの関連付け

それでは、2つの問題について、みなさんがどのように考えたのか、似ているところや違うところを説明していきましょう。

問題①は昨日と同じように考えていくと、余りが1個になります。問題②は、3人に3個ずつ分けると、7個余ります。問題②の余りのほうが大きくなります。

同じ数ずつ分けられているけれど、余りの7はまだ分けられます。

同じ数ずつ分けると、1人1個でも、2個でも、4個でも、同じ数ずつ分けられているから。何でもよくなってしまいます。

これを式に表すと、16÷3=3余り7になってしまって、割る数より余りのほうが大きくなってしまいます。まだ分けられるので余りは割る数より小さくしたほうがいいと思います。

昨日の勉強と同じだね。

そうですね。同じ数ずつ分けるときは、分けられなくなるまで考えていきましょう。そのように考えた人はいますか。

Aくんと同じように、問題①はブロックを3個ずつまとめていきました。1、2、3……と数えて、3個ずつを1つのグループにすると、5つのグループができました。そして、最後に1個だけブロックが余りました。問題②はブロックを3人に1個ずつ配っていきました。1個、2個、3個……と順番に配っていくと、1人5個ずつ配ることができました。最後は1個だけブロックが残って、もう3人には配れませんでした。2つの問題とも、ブロックは1個余りました。

なるほど。ブロックを分けていったのですね。図で表した人もいますね。

問題①は〇を16個かいて、3個ずつ線で囲んでいきました。そうすると、5つのまとまりができて、1個だけ〇が残りました。問題②は〇を16個かいて、3つの場所に1個ずつ〇を置いていくように線を引いていきました。そうすると、それぞれの場所に5個ずつ〇があって、1個だけ〇が残りました。

ブロックで分けたり図で表したりして、違いについて考えることができていますね。この2つの考え方を式に表すことはできますか。

16÷3=5余り1になります。

他の式に表すことはできますか。

問題①は3×5=15だから、5本できると思います。16―15=1なので1個余ります。

問題②は5×3=15だから、1人分が5個と求めることができます。16―15=1なので1個余ります。

問題①は、3のまとまりがいくつあるかを考える問題で、問題②は1つ分がどれくらいの数になるかを求めている問題です。

前のわり算のときも勉強したね。

では、どうして2つの問題は、違う場面なのに同じ式(16÷3=5余り1)になるのでしょうか。

問題①は3個ずつまとめて、問題②は3人に分けるけれど、どちらも「3」という数を使っているからだと思います。

なるほど。どちらも「3」という数が関係しているのですね。もう少しくわしく言うとどうでしょう。

問題①は「16の中に3がいくつあるか」を考えて、問題②は「16を3つに分けた1つ分がいくつになるか」を考えるけど、どちらも「3」を考えていると思います。

どちらの場面でも、余りは1個になりました。

1つ分やいくつ分を求めるときはわり算の式に表すことができたよね。

余りのあるわり算でもかけ算を使って答えを求められます。

どちらの問題も割る数より余りのほうが小さくなります。

そうですね。1つ分やいくつ分を求めるときはわり算の式に表せましたね。また、どちらの場面でも、余りは1個になりました。このように、余りのあるわり算でも2つの意味がありますね。

まとめ

  • 余りのあるわり算でも、1つ分を求める問題がある。
  • 1つ分を求める余りのあるわり算でも、余りは割る数より小さくなる。
  • 答えを求めるときにはかけ算とひき算を使って求める。

評価問題

えん筆が54本あります。8つの筆箱に同じ数ずつ分けると、1つの筆箱にはえん筆が何本入り、何本余りますか。この問題は、問題①と問題②のどちらに似ているでしょうか。自分の考えを説明しましょう。

感想例

  • 同じ式なのに、分け方が違うことに気付きました。最初はなんで同じ式になるのか不思議だったけれど、3つのまとまりで考えるのと3人で分けるときの違いを図に表すと分かりやすかったです。
  • 同じ数ずつ分けるだけだと、いろいろな答えが出てくることに気付きました。算数の問題では、余りの数が割る数よりも小さくなるまで分けないといけないことに気付きました。
  • 余りのあるわり算も、「1つ分」や「いくつ分」を求める計算がありました。どちらも九九を使うと答えを求めることができました。だけど、2つの問題はかけ算の式が違うことに気付きました。

ポイント&アドバイス

構成/桧貝卓哉 イラスト/横井智美・やひろきよみ 図版作成/永井俊彦

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