小１国語「はるがきた」京女式板書の技術
今回の教材は、「はるがきた」です。小学校に入学して初めての国語の授業が本単元になります。絵の中にあるものを文字に置き換え、話し言葉を文字にすることにより、文字に命が吹き込まれます。絵に命を吹き込み、楽しく言葉にしていく板書の工夫を紹介します。
監修／元京都女子大学教授
元同附属小学校校長・吉永幸司
執筆／京都女子大学附属小学校教諭・松下祐子
教材名 「はるがきた」（光村図書出版）
目次
単元の計画（全３時間）
- １場面（p.0-1）の挿絵を見て、言葉を集めたり、絵の中の人物になりきって話したりする。
- ２・３場面（p.2-5）の挿絵を見て、想像したことを言ったり、絵の中の人物になりきって話したりする。
- ４・５場面（p.6-8）の挿絵を見て、想像したことを言ったり、絵の中の人物になりきって話したりする。
板書の基本
〇小学校に入学して初めての国語の授業は、「はるがきた」という絵話です。９ページにわたって楽しい夢が広がります。ストーリーを追うだけであれば、１時間で十分指導できます。しかし、詳しく絵を見ていくと、次の要素があります。
・５つの場面でできていること。
・絵の中の子供が話している声が聞こえそうであること。
・空を飛んでいく紙ひこうきに乗るという想像を広げることができること。
・中心となる２人の子が絵の中で活躍していること。
そして、
・まわりにちりばめられた木や雲、花などの名前をもっているものがたくさんあること。
このように、これから１年間、国語の勉強をしていく過程で大切なものがいろいろと目に付くようになっています。
〇５枚の絵は子供たちをわくわくさせ、夢の世界を広げます。「ぼくも行きたい」「乗ってみたい」「一緒に遊ぼう」「先生、見て、見て」など、つぶやきにすればあふれるほどの言葉が生まれます。絵の中にあるものを文字に置き換え、話し言葉を文字にすることにより、今まであまり興味をもたなかったであろう記号としての文字に命が吹き込まれます。
〇板書においては、絵に命を吹き込み、言葉にしていくことを大切にしたいと思っています。
板書のコツ（１／３時間目前半）
板書のコツ①
黒板に最初の場面の絵を貼ります。絵を貼ることの意図は次のことです。
・学習の始まりとして、みんなで同じものを見て考えるということを教えます。
（子供たちの中には、「知っている」と教科書を持ち出す子もいるかもしれません。「みんなで、これで考えるのです」と「みんな」を教えます）
・一つ一つ確認していきます。例えば、「この人は、せんせいです」「これは、ちょうちょうです」「絵をかいている人がいます」など、正しい言い方を指導します。
これらは口頭作文の始まりですから、文が２つになってもよいことにします。言える子だけに指導するのではなく、全員の子が正しい言葉で話すことができるようにします。安心して発表できる教室づくりの始まりです。
板書のコツ（１／３時間目中盤）
新しいことを次々と出すのではなく、一度言葉にしたものを文字にして示します。
・ちょうちょうがいます。
・ちょうちょうがとんでいます。
カードに「ちょうちょう」と書いて、貼ります。
同じように、「くつ」「はな」「かえる」などを書いていきます。文字が読める子も読めない子も「ちょうちょう」「かえる」と声に出して言えるようにします。
学習に参加していることが大切なので、「読める人はいますか」というような問いは控えました。「これは『ちょうちょうです』『ちょうちょうがとんでいます』」と先生の言ったことを繰り返して読ませます。ここまでで、絵を文字にする活動に慣れさせます。
板書のコツ（１／３時間目後半）
板書のコツ①
お話の始まりとして、人物について話を進めます。
「男の子、女の子という言い方で進めますか」
「名前を付けてあげよう」
と誘いかけ、２人の人物に名前を付けます。これには、２つの方法があります。
１ クラスで１つに決める。
２ 好きな名前をそれぞれが付ける。
「クラスで１つに決める」のは、みんなで学習するうえで大切ですが、自分の好きな名前を付けたいと思う子は残念に思うかもしれません。
「好きな名前をそれぞれが付ける」では、自分の好きな名前の子であれば、発表するときにそれぞれの子が主人公のような気持ちになって聞くことができます。
どちらにしても指導の意図をもつことが大切です。名前には「○○さん」を付けることもいいことです。そして、クレヨンを持っていることに気付かせ、自分も絵の中の１人になっていくことにして、「わたしもかきたいな。」「いっしょにかこう。」と吹き出しに書いて、黒板に貼ります。何も書いていない吹き出しも貼り、どのような話をしているのかを自由に考えさせます。
このような方法で、イメージを広げ、２場面、３場面の学習に進めます。
構成／浅原孝子
