実感を伴った理解を深める、身近な物を使った教材開発 ~6年「月の形と太陽」~【理科の壺】
今回は、月と太陽の大きさについて、子どもたちに実感をもたせる実践です。実生活でたまに経験する機会がある日食や月食。月と太陽の大きさと距離の関係で起こる「食」の仕組みは、大人には何となく頭の中で理解できることだと思いますが、小学生には実感をもって理解してほしいですね。学習指導要領としてはここまでやる必要はないかもしれません。しかし、子どもたちの理科の楽しさはこのようなところにあるのではないでしょうか。優秀な先生たちの、ツボをおさえた指導法や指導アイデア。今回はどのような “ツボ” が見られるでしょうか?
執筆/鹿児島県公立小学校教諭・牧 逸馬
連載監修/國學院大學人間開発学部教授・寺本貴啓
1.はじめに
理科の内容区分「B生命・地球」で扱う天体は時間的・空間的な尺度が大きいという特性をもっています。太陽・月・地球の大きさや距離を数字だけで提示しても子供達には実感がわきません。
そこで、大きさや距離を縮小して身近な物に置きかえて提示してみましょう。
身近なものに置きかえることによって実感を伴った理解を深めることが期待できます。
今回は6年生の「月の形と太陽」の指導を題材にして考えたいと思います。
2.13億分の1に縮小して大きさと距離感を実感する
太陽・月・地球の大きさや距離を数字で表すと次のようになります。
これでは、数字が大きすぎて、大きさや距離感を想像することができないです。
そこで、実際の大きさを13億分の1に縮小し、身近な物に置きかえて提示してみましょう。
地球を直径1㎝のパチンコ玉にすると他の惑星や月、太陽の大きさはどうなるのか提示します。
地球=パチンコ玉(直径1㎝)とすると
月=ビーズ(直径0.25㎝)
火星=BB弾(直径0.5㎝)
天王星=ピンポン玉(直径4㎝)
海王星=ピンポン玉(直径4㎝)
土星=ソフトボール(直径9㎝)
木星=砲丸投げの玉(直径11㎝)
太陽=大玉転がしの玉(直径109㎝)
このように身近な物に置きかえると大きさの違いが実感できます。
実際に太陽・地球・月の模型を黒板に掲示してみましょう。(上の写真)
太陽(ピンクの模造紙)は直径が約109㎝、
地球(パチンコ玉)は直径1㎝、
月(ビーズ)は直径0.25㎝になります。
いかに太陽が大きいかが、ひと目見ただけでわかります。
次に地球からの距離も13億分の1に縮小すると表のようになります。
地球から月までの距離が約29㎝になるので、これは、30㎝定規を使うとわかりやすくなります。30㎝定規または厚紙に月(ビーズ)と地球(パチンコ玉)を29㎝幅で貼り付けます。
すると地球と月の距離感がわかります。
(下の写真)
また、地球から太陽までの距離は、約115mになります。
実際に校庭で距離感を体感しましょう。115m先に太陽(ピンクの模造紙)を置きます。
こんなにも遠くに離れているのだと子ども達は驚きます。
次に、厚紙に貼り付けた地球(パチンコ玉)に目を近づけて29㎝先のビーズ(月)と115m先の太陽(ピンクの模造紙)を見ます。
すると月と太陽が同じ大きさになることに気付きます。
つまり地球から見た月と太陽の大きさが同じくらいであることがわかります。
3.日食と月食がおきる理由
この体感実験によって、日食と月食という現象が起きることも説明できます。 太陽と地球の間に月が入り込み太陽、月、地球が一直線に並ぶと月が太陽の光を遮り、地球から太陽の一部、あるいは全体が見えなくなります。これを日食と言います。
<日食/月食位置図>
また、太陽、地球、月の順に、これらが一直線に並ぶと、地球によって太陽の光が遮られ、月に太陽の光が当たらなくなります。すると、地球からは、月の一部、あるいは全体が見えなくなる。これを月食といいます。しかし、実際には地球の公転軌道と月の公転軌道には傾き約5度のずれがあるので、満月や新月のときにいつも日食や月食が起きるわけではないことも付け加えて説明した方が良いと思います。
※日食と月食に関しては、あくまでも発展的な学びですので、子供たちの興味関心に応じて指導をすればよいと思います。
イラスト/難波孝
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<執筆者プロフィール>
牧 逸馬●まきいつま 鹿児島県霧島市立陵南小学校教諭。理科専科。CST教員。ニックネームは鹿児島のガリレオ。理科を中心に日々実践研究を行う。理科の教材開発が得意で休日は材料探しに100均ショップやホームセンターを梯子している。SSTA鹿児島支部会員、鹿児島理科を語る会会員。親子自由研究相談会や各種研修会に講師として招聘される。
<著者プロフィール>
寺本貴啓●てらもと・たかひろ 國學院大學人間開発学部 教授 博士(教育学)。小学校、中学校教諭を経て、広島大学大学院で学び現職。小学校理科の全国学力・学習状況調査問題作成・分析委員、学習指導要領実施状況調査問題作成委員、教科書の編集委員、NHK理科番組委員などを経験し、小学校理科の教師の指導法と子どもの学習理解、学習評価、ICT端末を活用した指導など、授業者に寄与できるような研究を中心に進めている。