小3特別活動「スッキリそうじ~みんなのためにきれいに~」指導アイデア
前文部科学省視学官監修による、小3特別活動の指導アイデアです。2月は、学級活動(3)イ「スッキリそうじ~みんなのためにきれいに~」の実践を紹介します。友達と力を合わせて清掃し、自分のためだけではなく学級のために働くことのよさを学びます。学級や学校のみんなが気持ちよく過ごすことができるようにするための清掃の方法や工夫を考え、一人一人がよりよく意思決定できることをめざします。
執筆/神奈川県川崎市立小学校教諭・筒井俊
監修/帝京大学教育学部教授(前文部科学省視学官)・安部恭子
日本体育大学教授・橋谷由紀
目次
年間執筆計画
4月 学級活動(3) ア 3年生になって
5月 学級活動(1) 係を決めよう
6月 学級活動(2) ウ ぼうさいマスターになろう
7月 学級活動(1) なかよし集会をしよう
9月 学級活動(3) ウ 家庭学習パワーアップ大作せん
10月 学級活動(1) 係活動発表会をしよう
11月 学級活動(1) クラス運動会をしよう
12月 学級活動(1) がんばったね集会をしよう
1月 学級活動(2) エ よくかんで食べることの大切さ
2月 学級活動(3) イ スッキリそうじ~みんなのためにきれいに~
3月 学級活動(1) ありがとう集会をしよう
学級活動(3)イの指導について
学級活動(3)「イ 社会参画意識の醸成や働くことの意義の理解」は、学校や学級のために力を合わせて働くことの意義を理解し、工夫しながら自己の役割を果たすことができるようにすることなどを通して、社会の一員として、責任をもって主体的に行動しようとする態度を養うことを内容としています。
子供たちが働くことの意義を理解することや、力を合わせて働いたり、学級や学校の生活の向上に貢献したりする喜びを実感することができるように、学校での話合いを生かして自分に合った目標を立てられるようにしましょう。
扱う題材によって、学級活動(2)ア「基本的な生活習慣の形成」と混同してしまうことが考えられます。しかし、学級活動(2) ア「基本的な生活習慣の形成」は、生活習慣や節度ある生活の大切さを理解することを内容として扱っています。「掃除の上手な仕方」についての指導などは、上記に示した学級活動(3)イ「社会参画意識の醸成や働くことの意義の理解」の内容とは異なるため、注意しましょう。
学校行事や総合的な学習の時間との関連について
「学習指導要領解説 特別活動編」には、多様性を認め合いながら、他の児童と力を合わせて働くことの大切さや自分のよさを生かすことについて考えることができるようにするとともに、自分の仕事に対して工夫しながら役割を果たすことができるようにすることが大切であると示されています。
本題材で、友達と力を合わせて清掃し、きれいにするだけではなく、学級のために働くことのよさを学びます。そこで、学校行事の勤労生産・奉仕的行事、総合的な学習の時間などで行うボランティア体験などと関連させて指導し、学校全体や地域などの多様な集団においても、他者と力を合わせたり、工夫して自己の役割を果たすことについて考えたりすることも大切です。
学級活動(3)の一連の学習過程について
一連の学習過程については、「学習指導要領解説 特別活動編」には、「①問題の発見・確認」「②解決方法等の話合い」「③解決方法の決定」「④決めたことの実践」「⑤振り返り」、そして「次の課題解決へ」と示されています。簡易的に示すと次のようになります。
また、意思決定に向けた本時の学習については、特別活動指導資料に「つかむ」「さぐる」「見つける」「決める」の4つの段階の学習過程の例が示されています。子供たちが自己の成長やよさを認め合ったり、学級で話し合う場を設けたりすることで個々の考えや可能性を広げ、強い決意をもって実践できるようにすることが大切です。
【つかむ】……課題の把握
➡︎アンケート結果をもとに、これまでの清掃活動に対する課題を捉えられるようにします。
【さぐる】……可能性への気付き
➡︎課題の原因や解決する必要性などについてさぐります。
【見つける】…解決方法等の話合い
➡︎みんなで話し合うことを通して、多様な解決方法に気付き、個々のよりよい意思決定に向かっていけるようにします。
【決める】……個人目標の意思決定
➡︎学級での話合いを生かして、強い意思をもって自分に合った具体的な解決方法やめあてを決めるようにします。
事前の指導
これまでの清掃活動に対するアンケートを行います。清掃活動に対する自分の考えや取り組み方について考え、課題意識を高められるようにします。
【資料1】スッキリそうじ〜みんなのためにきれいに〜 アンケート
本時のねらい
本題材では、学級や学校のみんなのために清掃活動に一生懸命取り組むことの大切さを理解し、実践することをねらいとしています。
中学年からは、学校によっては特別教室などの清掃の担当が始まり、自分たちが主に過ごしている教室周辺だけではない場所の清掃をするようになります。より様々な人が利用する特別教室や階段などを清掃するには、学校や学級のみんなのために行うことの意識をより一層高めていく必要があります。そこで、本題材の実践を通して、清掃をすることの意義やよさを理解しつつ、学級や学校のみんなが気持ちよく過ごすことができるようにするための清掃の方法や工夫を考え、意思決定できるようにしましょう。
本時の指導
つかむ
今までの自分の清掃活動への取り組み方について振り返り、課題をつかむ
① 事前にとったアンケートの結果をもとに、清掃活動における自分たちの課題に気付く
事前にとったこれまでの清掃活動についての取り組み方を振り返るアンケート結果を提示します。アンケート結果から、「協力して掃除できている」「丁寧に清掃をしている」「てきぱき掃除して2年生の時よりも早く終わることができるようになった」「それぞれが清掃で頑張っていることがある」ということなどに気付くことができるようにします。
また、自分たちの清掃中の様子や清掃前後の様子の写真を提示し、自分たちの清掃活動の現状について把握したり、清掃活動の取り組み方への意識を高めたりすることができるようにしましょう。
アンケート結果を見て、自分たちの掃除の仕方について気付いたことはありますか?
頑張って取り組んでいる人が多いね。
ほうきの扱い方に気を付けている人もいるよ。
時間を意識しながら取り組む人も多いね。
掃除の場所をもう一度見直す人もいるんだね。
みんなの普段の掃除の様子や教室の様子の写真です。気付いたことはありますか?
(大型テレビに映し出す)
小ぼうきを使って、細かいところまで掃いているね。
みんなで列になってごみを残さないようにしているね。きれいになると気持ちいいものね。
意外とドアのところは汚いな。
教室のすみにほこりがたまりやすいよね。わたしも気を付けて掃除しよう!
さぐる
清掃することのよさについて考える
① 清掃することのよさや協力して取り組むことのよさについて話し合う
これまでの清掃活動を振り返り、一生懸命に清掃することで感じたことを伝え合います。子供たちから「気持ちがすっきりする」や「集中して授業に参加することができる」などの意見が出されることが予想されます。しかし、そのような気持ちになるのは、清掃に取り組んだ自分だけでなく、学校や学級のみんながそのような気持ちになるということに気付けるように、問い返すことが大切です。自分の取組が他者のためになっていると感じられるようにしましょう。
また、今までの清掃活動の中で友達と協力しながら取り組み、清掃場所がよりきれいになったことも想起できるように教師が問いかけ、協力して取り組むことのよさに気付けるようにすることも大切です。
② 学校用務員の方のインタビュー動画から、清掃に取り組むときの思いや清掃方法などを知る
学校内をすみずみまできれいにしている学校用務員の方の思いや清掃方法等を知ることで、ねらいによりせまることができるようにします。みんなが過ごしやすいように取り組んでいることや清掃の際に気を付けていることなどが子供たちに伝わるように、学校用務員の方と事前にしっかりと打合せを行いましょう。また、学校全体のために活動する機会が多い高学年にインタビューを依頼することも考えられます。その場合は、どんなことを話してもらいたいかなど、事前によく打合せをすることが大切です。子供たちの実態に合わせて提示する資料を検討しましょう。
見つける
みんなが気持ちよく過ごせるためにはどのように掃除をすればよいかを考え、話し合う
具体的な個人目標の意思決定につなげるために、みんなのためにどのように清掃に取り組んでいくとよいかを話し合います。具体的な目標をもつことができる手立てとなるよう、「場所」「清掃の取り組み方」など項目を提示し、整理しながら板書することがポイントです。
みんなが気持ちよく生活できるように清掃するためには、どのように取り組むとよいでしょう?
ぼくは、特別教室のような広い場所を掃除するときは、時間内に終わるように、どこを中心に掃除するかを決めてから始めるといいと思います。
決める
清掃活動時に意識するめあてを決め、ワークシートに書く
「見つける」で、学級で話し合ったことなどをもとに、自分のめあてを考え、学習カードに書きます。自身のこれまでの清掃の取組の様子を振り返り、「さぐる」で確認した「しっかりと清掃することは、みんなのためになる」「きれいになるとすっきりして、みんなが気持ちよく過ごすことができる」ということなどを意識しながら、自分に合った具体的なめあてを立てるとよいことを伝えましょう。
【資料2】スッキリそうじ〜みんなのためにきれいに〜がんばりカード
板書例
事後の指導
振り返る
実践を振り返り、必要に応じて自分の決めためあてや実践方法を修正する
一定の期間継続して実践し、帰りの会などで振り返りの場や機会を設定します。本題材では、自分の決めためあてを達成できたかどうかを確認し、めあてを意識して取り組んだことでみんなが気持ちよく生活できるようになったことが実感できるような振り返りとなるようにしましょう。互いのがんばりを学級で共有することで、実践の継続やさらなる意欲の向上につながります。
【引用・参考文献】
・『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説(特別活動編)』文部科学省 東洋館出版社
・『みんなでよりよい学級・学校生活をつくる特別活動 小学校編』文部科学省国立教育政策研究所教育課程研究センター 文溪堂
・『「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料 小学校 特別活動』文部科学省国立教育政策研究所教育課程研究センター 東洋館出版社
構成/浅原孝子 イラスト/小野理奈
監修
安部恭子
帝京大学教育学部教授(前文部科学省視学官)
埼玉県さいたま市の小学校に勤務後、さいたま市教育委員会、さいたま市立小学校教頭勤務を経て、2015年より文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官・国立教育政策研究所教育課程研究センター研究開発部教育課程調査官、2022年より文部科学省初等中等教育局視学官を務める。
特別活動の魅力をすべての教師に伝える本!
楽しい学校をつくるには、具体的にどのようにすればよいか。コロナ禍の新しい学校生活様式を踏まえた小学校での特別活動の基本がよく分かります。特別活動を愛する3人による、子供たちとの学校生活を充実させるための「本質」が語られています。
著/安部恭子 著/平野 修 著/清水弘美
ISBN9784098402106