小3国語科「お気に入りの場所、教えます」全時間の板書&指導アイデア

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国語科 令和6年度版 新教材を活用した授業づくりー文部科学省教科調査官監修の実践提案ー
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文部科学省教科調査官監修「教科指導のヒントとアイデア」
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文部科学省教科調査官の監修のもと、令和6年度からの新教材、小3国語科 「お気に入りの場所、教えます」(光村図書)の全時間の板書、発問、想定される児童の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。

 小三 国語科 教材名:お気に入りの場所、教えます(光村図書・国語 三下)

監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/神奈川県横浜市立東汲沢小学校校長・丹羽正昇
執筆/神奈川県横浜市立小田小学校・村井俊彦

1. 単元で身に付けたい資質・能力

本単元では、主に、「相手に伝わるように、理由や事例などを挙げながら、話の中心が明確になるように話の構成を考える力」と「話の中心や話す場面を意識して、言葉の抑揚や強弱、間の取り方などを工夫する力」の育成をめざします。

本単元の目的は、「3年生の生活を振り返って、いまの自分にとってのお気に入りの場所はどこなのかを、お家の方に紹介することで、3年生での思い出や学び等を伝える」として、家族に向かって口頭で発表する活動を設定します。

お気に入りの場所がなぜ自分にとって特別な場所なのかを伝えるために、どのような理由をどのような事例を用いながら語るとよいのを考えます。
また、どこを強く話したり間を空けたりするとよいか、話し方の工夫を考える学習を行います。

2. 単元の評価規準

単元の評価規準

3. 言語活動とその特徴

自分のお気に入りの場所について、画像を提示しながら口頭で紹介する活動を設定します。
学年末の授業参観等を利用し、お家の方を前に一人一人が発表します。3・4年生においては、「相手との親疎やその人数、目的や場の状況などを意識し、声の出し方や言葉遣い、視線などに気を付けて話す」ことが肝要とされていますので、相手の表情や反応を直接感じながら話すことができるような場を設定することを大切にします。

本単元では、ポスター発表のように、一つの会場に複数の発表場所を設けて、参観者に各グループを回ってもらう(1教室に二つの発表場所を設けて、それを複数箇所用意する等)ことにします。

こうすることで、一人の児童が複数回、相手に向き合って話すこと、自分の話す工夫を確かめながら話すことを繰り返すことができます。また、経験の浅い3年生にとって、大人数を前に一人で発表するよりも緊張が和らぎ、練習の成果を十分に発揮できるというメリットも考えられます。

発表の構成 〉

教科書で「発表のれい」として紹介されているモデルは、次のように構成されています。

【はじめ】
 〇お気に入りの場所がどこか、ということを明言する。
【中】
 〇理由が二つあると述べる。
 〇一つ目の理由(その場所で感じられること)
  ①理由を端的に述べる。
  ②場所の特徴A(芝生)と、感じること
  ③場所の特徴A(芝生)と、できること
  ④場所の特徴B(木や花)と、感じること
 〇二つ目の理由(思い出があること)
  ①理由を端的に述べる。
  ②共通の経験・思い出(合唱の練習)について投げかけ
  ③その思い出について印象的だったエピソードA(みんなの努力と成長)
  ④同じ思い出につながるエピソードB(本番で成功してほめられた)
【終わり】
 〇まとめ
  ①もう一度、ここがお気に入りの場所であると述べる。(双括)
  ②これからへの思い

「はじめ」「中」「終わり」という全体の構成について、どのような順で話すとよいか検討することも可能ですが、短い発表の中では、基本的な構成は大きな違いとしては表れにくいものです。
むしろ、「中」の二つの理由について、どのような体験、思い出、自分の感じたことや学び等を選び、どのような順で語るかを考えるときに、「(イ)相手に伝わるように、理由や事例などを挙げながら、話の中心が明確になるよう話の構成を考える力」が発揮されると考えられます。

そこで、本単元においても、基本構成は教科書のモデルと同様にし、全体の構成を捉えつつ、理由部分の構成を子供たちが思考できるようにします。

「時間の中で、一人一人が多くの人に聞いてもらえるといいね。」と子供と相談して、一人の発表時間は3分程度とします。加えて、理由は二つ挙げることを条件として設定します。時間と理由の数に条件を付けることによって、お気に入りの理由としてぴったりのエピソードや事例を吟味する姿につながります。

〈 話し方 〉

口頭で発表する際は、ICT機器とモニター等を接続し、画像を提示しながら話します。

本単元では、三つの画像を用意することとします。一つ目の画像は、お気に入りの場所が分かるもの、二つ目は、一つ目の理由を表すもの、三つ目は、もう一つの理由を表すものです。

これを発表に合わせて【はじめ(1つ目の画像)】⇒【理由①(2つ目の画像)】⇒【理由②(3つ目の画像)】⇒【終わり(1つ目の画像)】の順で提示します。
画像を用いることによって、子供自身が話の構成をとらえ、お気に入りの場所はどこで、どのような理由で気に入っているのか、意識して学習することにつなげます。
画像には、話を相手にとってより分かりやすくする効果がありますが、「発表を補足する効果的な資料の吟味」は、高学年の指導事項となります。ですから、本単元では資料選びに多くの時間をかけないようにしましょう。

〈 画像と発表内容のイメージ 〉

画像と発表内容のイメージ
子供たちの発表場面を描いたイラスト

4. 指導のアイデア

【単元構想・課題の設定】

子供自身の「話したいな」という思いを大切にします。「話したいな」「うまく伝えたいな」という思いが、「何を話すとよいか」「どう話すとよいか」という資質・能力につながる課題意識を醸成します。

発表内容である「場所」は、具体的なイメージがもちやすく、自分との関わりも想起しやすい題材だと言えます。ただ、3年生の子供たちにとってのお気に入りの場所は、様々であると考えられます。
学校内の場所よりもっと気に入っているところを伝えたいと思う子供もいるでしょうし、お気に入りの場所と言われてもしっくりこない子供もいるかもしれません。

そこで、本単元の課題は、「3年生の生活を振り返って、いまの自分にとってのお気に入りの場所はどこなのか、お家の方に紹介することで、3年生での思い出や学び等を伝える」とします。そして、場所から思い出や気持ちを連想してもよいし、思い出や気持ちから関連する場所を想起してもよいようにします。

また、本教材は多くの場合、学年末に位置付けられることが多いと思います。社会科や総合的な学習の時間で出合った場所や、そこで学んだこと、特別活動や行事、クラスや学年での様々な経験など、どのような場所に、どのような思いを重ねてきたのかを振り返る時期です。
そうした思い出や成長をお家の方に伝えたいな、という意欲も自ずと高まりやすいことでしょう。

【学ぶこと・学び方の具体的なイメージの共有】

発表の場や方法についても、子供たちと具体的にイメージを共有することが大切です。

いつ、どのような場で、どのように発表するのかを教師だけでなく子供たちと十分に共有することで、何を学ぶべきかをイメージし、自分は何ができて、次は何を学ぶべきか、自分の言葉に自覚的になり、めあてを具体化し、自ら学習を調整していく姿が期待できます。

そのためにまず大切なのは、子供と一緒にモデルを分析・共有することです。教師自身が実際に発表して見せることも効果的です。また、複数のパターンのモデルを用意すると、児童の伝えたい思いが反映されやすくなり、効果的です。

具体的なゴールに向かってどのような学習をどのくらいの時間で行っていくのか、より詳しいクラスの学習計画を子供と確認・共有する時間が大切です。

【理由や事例を挙げる】

本単元では、「(イ)『話すこと・聞くこと』において、相手に伝わるように、理由や事例などを挙げながら、話の中心が明確になるよう話の構成を考える力」の育成を目指しますが、ぴったりの理由や事例を挙げるためには、自分とその場所との関わりについて十分に掘り下げる過程が必要になります。

そのための方法として、教科書ではウェビングが例示されています。ウェビングは自由に連想していくことができる思考法ですが、自由ゆえにうまく想起できなかったり、広げるばかりで深められなかったりする児童もいるかもしれません。
本単元では、「その場所にはどんなこと・ものがあるか」と広げていく思考と、「どうしてそれが印象的なのか」と深めていく思考が整理しやすいように、ウェビングのデザインも工夫します。

また、この理由や事例を考えていく過程では、友達と対話して想起・整理したくなる児童がいると考えられます。ウェビングに書き込む、付箋紙で整理する、友達と何があったか・何が印象的かを対話して整理する、モデルをじっくり読んで自分に当てはめて振り返るなど、複数の学習方法を紹介し、児童が自らに合った学び方を試行できるようにすることで、自分の成果と課題を具体化して、より主体的に学び続ける姿が期待できます。

【話し方の工夫】

話し方についても、具体的なモデルを提示・分析・共有することが大切です。

教科書では、2次元コードによって発表場面のモデルも紹介されており、「(ウ)『話すこと・聞くこと』において、話の中心や話す場面を意識して、言葉の抑揚や強弱、間の取り方などを工夫する力」を分析する際の参考にできます。それを基に教師自身がモデルとなって話して見せたり、その動画をいつでも確認できるよう、子供たちのICT機器に保存したりしておくと効果的です。

また、ここでも子供自身のめあてに応じて、学び方がいくつか分岐することが想定されます。
話し方の工夫を発表メモに書き込んで話す、動画を撮って自分で振り返る、友達に見てもらって工夫したところが伝わるか確かめる、モデル動画を見返す、本番と同様の場で伝わり方を確認するなどの学び方が想定されます。こうした学び方も子供と共有し、子供たち一人一人が自分のめあてに応じて練習することで、より自覚的に学びを深めていくことができます。

5. 単元の展開(8時間扱い)

 単元名: あの日、あのとき、あの場所で…3年生の思い出・気持ち・学びがつまった、私のお気に入りの場所、紹介します

【主な学習活動】
・第一次(1時2時
① 3年生の出来事を振り返って、お気に入りの場所を紹介しながら1年間の思い出や学びをお家の方に発表して伝える、という課題をもち、学習の大体を捉える。
② モデルを基に単元のゴールイメージをもち、学習計画を立てる。

・第二次(3時4時5時6時7時
③④ 自分のお気に入りの場所と、そこが印象に残っている理由について振り返る。その場所がお気に入りである理由としてふさわしいものを、大きく二つ選び抜く。理由に関係する画像を選ぶ。二つの理由の中で語る事例・エピソードを整理する。発表メモに整理する。
⑤⑥ 発表メモを基に、なぜそこがお気に入りの場所なのか、なぜ自分にとって素敵な場所なのかが伝わるように話し方を工夫しながら練習する。また、修正する。
⑦ 当日同じ場所で発表するグループでリハーサルを行う。

・第三次(8時
⑧ 発表会を行う。単元の振り返りを行う。

※今回は、「3年生の生活の中で思うお気に入りの場所」について、口頭で発表することにしていますが、学校や学級の実態に応じて、題材や発表方法を変えることも考えられます。総合的な学習の時間で関わった「まちの商店」や「地域の自慢」、「学校の自慢」「思い出の出来事」「お気に入りの写真」などについて、動画で撮影、披露する学習も考えられます。総合的な学習の時間と組み合わせた単元構想も効果的でしょう。

全時間の板書例と指導アイデア

【1時間目の板書例 】

1時間目の板書例

イラスト/明野みる、横井智美

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