小3国語「三年とうげ」京女式板書の技術
今回の教材は、「三年とうげ」で、本単元の学習内容は、言葉や組み立てに着目して、登場人物の行動や気持ち、その変化を捉え、おもしろいところを見付けることです。本時では、行動や気持ちを表す言葉に着目して、登場人物の気持ちの変化を捉えることを目指します。そのため、2段組の表や心情を表す矢印などを活用して気持ちの変化を捉えやすくした板書の工夫を紹介します。
監修/元京都女子大学教授
同附属小学校校長・吉永幸司
執筆/京都女子大学附属小学校教諭・古垣内千鶴子
教材名 「三年とうげ」(光村図書出版)
目次
単元の計画(全6時間)
- 民話や昔話を紹介するという学習課題を理解し、学習の見通しをもつ。
- 登場人物の行動や気持ちなどを、叙述を基に捉える。
- 行動や気持ちを表す言葉に着目して、登場人物の気持ちの変化を捉える。
- 文章を読んで理解したことに基づいて考えをもつ。
- 読んだ本について、言葉や組み立てに着目して、登場人物の行動や気持ち、その変化を捉え、おもしろいところを見付ける。
- 選んだ民話や昔話を紹介する文章を読み合い、一人一人の感じ方などに違いがあることに気付く。
板書の基本
〇民話のおもしろさは、それぞれの土地に伝わっている話を後世の人が分かりやすく伝えているところにあります。教材「三年とうげ」も話の筋が分かりやすく、それに人物の気持ちを加えていけば、どんなことが伝えたかったかがよく分かります。人物の行動や様子を理解できることが、この教材のポイントと考えました。
〇板書においては、人物の変化を軸にして、変化する前と後の様子を比べることを大切にしました。行動と様子という分かりやすい読む視点を定めること、そして「変化する前」「変化させたもの」「変化した後」という3つの場面の構造で理解していきました。
板書のコツ(3/6時間目前半)
板書のコツ①
〇日付、題名を板書した後、「めあて」を次のように子供に示しました。「おじいさんの行動や様子がわかる言葉を見つけ、おじいさんの変化とそのきっかけを読む。」特に、「行動」「様子」が分かる言葉に着目することを説明しながら、板書をしました。
板書のコツ②
〇黒板を上下2段に分け、上段に行動、下段に様子を示し、物語の前半、つまり、おじいさんが変化する前として、「ところがたいへん。あんなに気をつけて歩いていたのに、おじいさんは、石につまずいて転んでしまいました。」の部分を音読し、出来事の始まりにして、「転んでしまいました。」を板書しました。この板書から始めることにより、「ふるえました」「泣きました」の言葉を見付けることができました。
〇様子を表す言葉として、「真っ青になり」「がたがた」 をみんなで確認した後、「おいおい」と板書し、おじいさんのその時の様子を考えました。
板書のコツ③
〇学習場面をトルトリが来たところに移し、病気を治す方法ということを簡単にまとめ、「トルトリがみまいに来て、おじいさんの病気をなおす方法を言う。」と板書しました。
〇本時の学習が行動と様子であり、トルトリを含めておじいさんや登場人物の気持ちを考えることより、叙述を丁寧に読み取ることにしました。
〇トルトリの登場により、物語が大きく変化する場面では、おじいさんの行動や様子を表す語や文を見付けることはそれほど難しくないので、話し合って共通理解を図りました。板書に太矢印で書いたのは、変化を意識付けたいと考えたからです。
板書のコツ(3/6時間目後半)
板書のコツ①
〇変化を表す場面として、「ふとんからはね起きると、ひっくり返り転びました。」から始まる場面を取り上げました。「転がり落ちてしまいました。」「うれしくなったので」「けろけろけろっとした顔」など、変化する前と比べると想像を広げる言葉が多く出ていることに気付かせるよう板書を工夫しました。
板書のコツ②
〇授業の後半には、板書全体を読み返すという活動を展開しました。民話という教材の特性から、おじいさんの行動や様子が板書から理解できているかどうかの見直しをさせたいと考えたからです。
〇板書をもとに、グループでおじいさんの変化がよく分かる言葉を含めて、話し合いをさせたところ、
①場面分けをしっかりしたこと
②矢印で変化を見える化したこと
が印象に残ったようです。
この2つをもとにして、行動や様子を表す言葉を自分の力で確かめるように導きました。
構成/浅原孝子