小6国語科「宇宙への思い」板書例&全時間の指導アイデア
文部科学省教科調査官の監修のもと、令和6年度からの新教材、小6国語科「宇宙への思い」(東京書籍)の板書例、教師の発問、想定される子供の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した全時間の授業実践例を紹介します。
監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/熊本大学大学院教育学研究科准教授・北川雅浩
執筆/熊本県熊本市立月出小学校・田邉友弥
目次
1. 単元で身に付けたい資質・能力
本単元では、宇宙に関わる人々が書いた複数の文章を読み、それぞれの人が経験したことやメッセージについて考えることで、「これからの自分の生き方」について自分の考えをまとめる力を育てていきます。 また、子供たちが生み出した考えを交流することで、自分の考えを広げたり深めたりすることができるようにします。
2. 単元の評価規準
3. 言語活動とその特徴
教科書では、「宇宙や地球の未来について、考えたことを話し合う」という活動が設定されていますが、「宇宙」や「地球」と聞くとあまりにも壮大で、自分たちの生活との間に距離を感じてしまう子供たちも少なくないはずです。
また、「宇宙や地球の未来」というテーマが漠然としており、考えをもったり共有したりする際に、どんなことを考えたり共有したりすべきかを焦点化する必要があるでしょう。
そこで、子供たちが自分事として教材文を読み、自分の考えをもつ視点を明確にするために、本単元では、「これからの自分の生き方」について考えたことを話し合うという言語活動を設定します。
教材文の中には、国際宇宙ステーションで働く油井さん、宇宙食や生活用品に関わる仕事をされている込山さん、リュウグウの石や砂の分析をされている薮田さんの「仕事をする中で考えたことや気付いたこと」や「宇宙に対する思い」、「読み手へのメッセージ」等が書かれており、子供たちの今後の生き方の手がかりになりそうな見方や考え方が文章の中にちりばめられています。そうした言葉に出合う中で、これからの自分の生き方について考えるきっかけにしてもらいたいものです。
具体的には、今後の自分の生き方に生かしたいことを明確にして、300字程度の文章でまとめていきます。そして、各自がまとめたことをグループや全体で共有し、自分の考えを振り返りながら、さらに広げていけるようにします。
4. 指導のアイデア
まず、第一次では、既習教材「『永遠のごみ』プラスチック」の学習を想起させることで、学習の見通しをもてるようにします。
特に、筆者の主張やそれを支える根拠に立ち止まったり、複数の資料を読み比べたりしながら意味を捉えたり、自分の考えをつくってきたりした経験を想起させることで、本単元の学習の見通しや言語活動のイメージをもつことにつながるでしょう。
また、「『永遠のごみ』プラスチック」においても、本単元で取り扱う「宇宙からのながめが教えてくれること」で油井さんが述べている環境問題について述べられており、内容を関連付けながら読み、自分の生き方につなげて考えていくことが期待できます。
第二次では、三つの教材文を読む中でこれからの「自分の生き方」につなげたいことを見つける活動を中心に行います。教材と子供たちとの距離を縮め、自分事として読めるよう配慮しつつ活動を設定します。
一つ目の教材「宇宙からのながめが教えてくれること」では、地球について「美しい」と「もろい」という対比的な表現を用いながら、「環境を守らなければ」という思いを述べています。
また、複数の国籍の宇宙飛行士が集まるISSでの経験を通して「相手をよく知り、尊重し合う文化が地上に広がれば、いろいろな問題はどんどん解決して、地球はもっと住みやすくなるのではないか。」と地球上の多くの問題が相互理解や仲間との協力によって解決可能であることに言及しています。
こうした考え方は、「『永遠のごみ』プラスチック」や平和学習、社会科の学習等を通して、これからの自分の生き方について考え始めている6年生にとって、立ち止まってその意味を捉えたり、自分の生き方につなげたりしてほしいことの一つです。このように各自が立ち止まった箇所を広く認めながら、主体的に学習に取り組めるようにしていきます。
最後に、第三次では、二次の終わりにまとめた「自分の生き方」の中で、特に大切にしたいことをグループや全体で交流する活動を設定します。交流を通して、子供たち一人一人が自分の考えを広げていけるようにします。
5. 単元の展開(6時間扱い)
単元名: 自分の生き方について考えよう
【主な学習活動】
・第一次(1時)
① 既習教材「『永遠のごみ』プラスチック」の学習を想起し、自分の考えをもつためにどんな叙述に立ち止まって考えたかを振り返ることを通して単元の見通しをもつ。
・第二次(2時、3時、4時、5時)
②「宇宙からのながめが教えてくれること」を読んで内容を理解するとともに、自分の生き方につなげて考えることができることを見つける。
③「食品からつながる宇宙」を読んで内容を理解するとともに、自分の生き方につなげて考えることができることを見つける。
④「宇宙に生命の起源を求めて」を読んで内容を理解するとともに、自分の生き方につなげて考えることができることを見つける。
⑤ 三つの教材を読んで「自分の生き方」の考えの中心を明確にして、自分の考えをまとめる。
・第三次(6時)
⑥ 各自が考えた「自分の生き方」を友達と交流し、再度自分が考えたことを見直す。
全時間の板書例・端末活用例と指導アイデア
●「これからの自分の生き方」について考える活動への見通しをもつ
単元の導入では、子供たちがこれまでの学習とのつながりをつかむことが大切です。
そこで、本単元では、「『永遠のごみ』プラスチック」の学習で、筆者の考えや提示された資料をもとに自分の考えをまとめ、意見文として発信したことを想起することから始めました。
その際、実際に何人かの意見文を取り上げながら、筆者の主張に対して自分の考えをつくることや、複数の資料をつなげて考えることでより説得力のある考えが生まれてきたことを確認します。
その上で、本単元では、宇宙に関わる仕事や研究に取り組む三人について書かれた文章を読み、「これからの自分の生き方」について自分の考えをまとめ、友達と交流する活動に取り組むことを伝え、学習の見通しをもたせます。
イラスト/横井智美