プロがレクチャー!学級担任のためのリコーダー指導アイデア
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卒業生を送る会や新入生を迎える会、音楽会など、リコーダーは様々な場面で演奏する機会が多いものです。専科の先生による指導だけでなく、担任が子どもたちの技術差に応じてフォローすることがよい演奏につながります。今回はリコーダーのプロに指導のポイントを伺いました。
庄司祐子・しょうじゆうこ
神奈川県出身。学習院大学卒業。リコーダー及びティン・ホイッスル奏者として国内外で活躍するほか、リコーダー、ティン・ホイッスル教室を主宰。学習院女子中等科ブロックフレーテアンサンブル部コーチなど、各地で講師としても活動。
目次
息と指の丁寧な指導で苦手意識を改善
先生も一緒に楽しみながら、基本をじっくり指導
リコーダーの魅力は、誰でも簡単に音を出すことができることです。自分の体に近い場所で、自分の息で、歌うように演奏できる楽器です。しかし、得意不得意が分かれやすく、苦手意識を持ってしまっている子供も多いのではないでしょうか。
リコーダーを演奏する時大事なのは、まずは「息」です。つい指使いばかり意識しがちですが、息をまっすぐに伸ばせないと、指使いが難しくなった時に息のことを忘れて音が出なかったり、息が不安定なために、指が塞がっていても、よい音にならないことがあるのです。ですから、自然にのびのびとした息を、緊張せず、気持ちよく吹ける練習をすることが肝心です。
息を吹く練習も、指使いも、最初に基本を丁寧に指導することが重要です。ソラシならソラシだけでもよいので、子供が自由に基本の音を吹けるまで指導してから、高い音や低い音を出す練習に移らないと、苦手意識ができてしまい、「いい音が出ない。だから自分にはこの楽器はもうできない」となってしまいます。
リコーダーの基本を指導するときには、ちょっとしたコツがあります。スモールステップで一つひとつ、先生自身も楽しみながら、指導していただきたいものです。
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苦手克服!リコーダー指導のポイント
息の出し方の指導ポイント
●息を使い分ける
リコーダーで高音、低音を出す場合には、それぞれ吹く息を使い分ける必要があります。まずはリコーダーを使わず、手や指を使って、どのように吹くと息が変わるのか体感させて覚えさせましょう。
低音域の音を出す息の練習では、手の平を使い、手の平全体が温まるように、ゆっくりと温かい息を「ハ~ッ」と出します。「吹く」よりも「吐く」イメージです。
高音域の息の練習では、指先の一点に息が集まるように、「フ~ッ」と息を吹き付けます。指先にまっすぐ冷たい息を吹き付けるイメージです。
低音域では、手の平全体が温まるように、「ハ~」と「吐く」ことを意識させます。逆に高音域を出すときには、息のスピードも必要なので、指先に「フーッ」と息を「吹き付ける」練習をするとよいでしょう。
●息をまっすぐに伸ばす練習
リコーダーでは、指が塞がっていても、息が不安定だと音になりません。苦手な子は基本の「シ」の音だけでも、安定した音が出せるまで繰り返し練習しましょう。子供が息を伸ばすことに集中できる効果的な練習方法があります。
先生がリコーダーの孔の部分が下になるようにして持ち、子供に息を吹かせます。子供は息を吹くだけで、先生が指を動かしていろいろな音が出せるので、とても喜びます。
頭部管を反対側に回し、先生がシの音の孔を押さえ、子供に音を伸ばすように吹かせます。上手にできたら、先生が指を動かし他の音を出します。
●タンギングの練習
タンギングは舌で一旦息をせき止めた後に解放し、音の出始めを明瞭にする奏法。リコーダーを吹く前に、曲をすべて「トゥ」にして歌ってみると感覚をつかみやすくなります。内緒話のように小さく歌うのがポイントです。
指づかいの指導ポイント
●指を動かすトレーニング
孔が塞がらず、正しい音が出ない子も多いでしょう。孔が塞がらない原因の一つは、指をバラバラに動かすという動作を日常生活であまりしていないので、いざ動かそうとすると指や手がこわばってしまうから。指遊びで指を動かす練習をしましょう。
●孔をしっかり押さえる
指の腹でしっかり孔を押さえる練習。指で孔を押さえたら、反対の手の指で上からギュッと押します。指を外すと指に孔の跡が付くので、自分がどこで押さえていたのかわかります。
●指かけを使う
指の当たる場所が定まらない子には、「指かけ」を使うことをお薦めします。ちょっとでも場所がずれると孔は塞がらないので、先生がセッティングしてあげましょう。
●テナーリコーダーを使う
テナーリコーダーで指導するのもよいでしょう。ソプラノリコーダーより大きいので、指使いが見やすく、リコーダーの大きさや音の違いに対する興味も引き出せます。
アンサンブルの指導ポイント
●曲選びのコツ
高音域が多い曲を選ぶと、音程も合いにくく、ノイズも出やすくなります。みんなで吹くときは、音域が低い曲を選ぶと、きれいにまとまります。
●パートを分ける
全員が同じメロディを吹くことにこだわらず、苦手な子が必ず吹ける音を伸ばすような副旋律を作ると、きれいなハーモニーができ、盛り上がります。
●曲のイメージを話し合う
全員が同じイメージを持って演奏することは大切。「かっこよく仕上げる」、「リズムよく吹く」など、曲のイメージとなるキーワードを子供同士で話し合うとよいでしょう。
取材・文/出浦文絵 撮影/下重修
『教育技術 小一小二』2020年1月号より