小2国語科「冬がいっぱい」全時間の板書&指導アイデア

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国語科 令和6年度版 新教材を活用した授業づくりー文部科学省教科調査官監修の実践提案ー
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文部科学省教科調査官監修「教科指導のヒントとアイデア」
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文部科学省教科調査官の監修のもと、令和6年度からの新教材、小2国語科「冬がいっぱい」(光村図書)の全時間の板書例、発問、想定される児童の発言、ワークシート例、1人1台端末の活用例等を示した授業実践例を紹介します。

 小二 国語科 教材名:冬がいっぱい(光村図書・こくご二下)

監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/埼玉県上尾市教育委員会学校教育部指導課指導主事・𠮷野竜一
執筆/埼玉県富士見市立針ケ谷小学校・川畑那由昂

1. 単元で身に付けたい資質・能力

本単元では、「冬」をキーワードに、身近なものを表す語句の量を増やしていくことを目指して学習していきます。冬について知っている言葉を思い出すことはもちろんですが、冬に関わる新たな語句の獲得を目指して授業を構成していくようにします。

ここでは、2年生以降の各学年に配置されている「季節の言葉」の単元の系統性も意識し、身近なものの中でも動植物を中心とした季節を感じるものに目を向けるようにしてきます。

2. 単元の評価規準

単元の評価規準

3. 言語活動とその特徴

本単元では、児童がこれまでの生活経験を想起し、身近な語句に目を向けるとともに、新たな語句の獲得を目指して学習を進めていきます。

そこで、「自分だけの冬のよさを伝える、冬カルタを作ろう」という活動を設定していきます。

小学校学習指導要領解説国語編(平成29年告示)において、第1学年及び第2学年では、身近なことを表す語句の量を増やすことに重点がおかれています。
ここで言う「身近なことを表す語句」とは、指導要領上では「日常生活や学校生活で用いる言葉、周りの人について表す言葉、事物や体験したことを表す言葉など」であると示されています。

生活科等との関連が図れる学習にもなるかと思いますが、児童にとって、季節の変化の様子に目を向けて、その美しさに感動するような経験を言語化するという機会はあまり多くないかもしれません。
教室に留まることなく、たくさんの物を実際に見たり、空気に触れたりしながら活動をすることを通して、五感で感じたものと言葉をつなげる力を育むことができるのも、小学校における学びの大きな意義だと考えています。

そこで、冬に関する言葉を集める際には、本やインターネットを見るだけではなく、実際に外に出て、実生活の中で冬を感じる場面に気付けるようにすることで、体験を通して新たな語句を増やしていくとともに、季節を豊かに感じる心を育むことができるようにしていきます。

自分が知らない言葉に出会うことや、知っていた言葉の価値について改めて気付くことで、たくさんの語句に触れ、使用する語句の量や範囲を広げることができるのではないでしょうか。

1人1台端末は、児童の活動の中で言葉を集めることだけでなく、それを表現することについても大いに役立つツールです。児童が実際に目にした物を記録したり、それを表現する際に活用したりすることができるようになることも目指し、活用を促していけるとよいでしょう。

今回のカルタについても、紙で作成する方法の他に、児童が端末上で作成した作品をプリントアウトする方法も、それぞれの児童の考えを表現できる選択肢の一つです。
また、カルタ作成をゴールにすることで、作成する数についても児童の思いに合わせて幅をもたせることができますし、今後の生活の中で自由にカルタ作りに取り組む児童も出てくるかもしれません。

こうした手立てにより、国語科での学習が生活の中に広がっていくことも期待しています。
ただ、年間指導計画の都合上、国語の授業内でカルタに取り組む時間を十分に確保することは難しいとも思いますので、生活科の昔遊び等との関連を図るなど、各学校のカリキュラムの実態に応じて実践していただければと思います。

4. 指導のアイデア

この記事を読んでいらっしゃる方は、どのようなことから「冬」を感じますか。そもそも冬はお好きですか。また、冬に関わる言葉は、どれくらい知っていますか。授業に入る前に自分自身の言葉と向き合うことも大切なことですね。

授業を考えたとき、どれくらいの語句が子供たちから出ることを想定していますか。そして、どのような言葉を集めたり、記録したりすることができていれば、「語彙を豊かにしている」状況であると評価できるのでしょうか。語彙の獲得については、目に見えるものではありませんが、どのような姿が現れていれば子供たちが語彙を豊かにしていると言えるのかについて、事前に想定しておくことも、とても大切なことだと感じています。

言葉をたくさん知っていることの価値とは何でしょうか。どんな場面で役に立つのでしょうか。改めて考えてみると、学習中の子供たちへの言葉がけの内容が変わってくるかもしれません。2年生とはいえ、学ぶことの意義について考え始めている子も多くいるはずですので、語彙を増やすことの価値や意義について子供たちと共に考えてみることでも、より目的意識が明確になった学習になると思います。

本アイデアでは、言葉を集めるだけでなく、「自分だけの冬のよさを伝える」という条件を追加して作品作りに取り組むように設定しています。そうした条件を少し追加していくことで、「他の子が書かないような表現をしてみよう」「他の子が気付かないようなよさを見つけよう」といった子供の意欲も喚起できるはずです。さらに、自分ごととして学べるよう、「児童が学習のゴールに向かうための活動を選択できるようにすること」も大切にしていきます。

導入ではまず、教科書に掲載されている冬の言葉を示し、本単元の学習のゴールを「自分だけの冬のよさを伝える、冬カルタを作ろう」とし、見通しをもてるようにしていきます。

教科書に掲載されている言葉を黒板に示しながら、そのほかに冬に関係する言葉で知っているものを追加していきます。その際、「なかまのことばとかん字」での学習を振り返り、それぞれの言葉を、「たべもの」や「いきもの」などの上位語でくくるような工夫があると、学びのつながりを感じることができます。先生が実際に街中で見つけた冬について、写真で紹介したり、そのよさについて紹介したりするなどしていくと、言葉を見つけるための具体的な観点になるでしょう。

さらに、学習のゴールでもある冬カルタについては、実際に先生が見つけた冬のよさについて表現したカルタを作成してモデルとして示します。カルタですので、読み札と絵札が必要になりますが、絵札については、絵を描くだけではなく、1人1台端末を使って実際に撮影した写真を使用することもできます。そうした例をいくつか示すことで、児童にとっての選択の幅を広げていきます。

展開の場面では、カルタの制作に向けた言葉集めの時間を設定します。
この言葉集めに、じっくりと時間をかけたいところです。その際、どのように言葉を集めるかについて、「本で集める」「インターネットで探す」「外に出る」など、いくつかの選択肢を示すことで、様々な方法から自分に合った学び方やペースで言葉集めやカルタ作成に取り組めるようにすると、より自分ごととして学習に取り組めるようになるはずです。
安全を確保した上で、そうした活動が十分に行えるように環境を整えられるといいですね。

終末では、児童が作成したカルタを、児童同士で見合う場を設定します。この際も、1人1台端末を活用し、作成したカルタを写真に撮るなどして共有することで、すべての児童がお互いの作品に触れることができます。
発表の形式にしてもよいかと思いますし、適宜児童の作品にフィードバックしたり、友達同士でよさを伝え合う時間を設けたりするなどして、児童の学びを価値付けられるようにしましょう。

冒頭でも述べたように、身近なことを表す言葉に着目していますが、それ以外にも児童からは様々な言葉が出てくることと思います。日本語の豊かさについて感じられるようにすることで、3年生以降の言葉の学習につなげることはもちろん、日本の伝統的な言語文化に目を向けられるようになるといいと思います。

振り返りの際には、よかった作品についてだけでなく、どのように言葉を見つけたのか、その言葉をどのように表現するとより気持ちが伝わるようにできたのかなど、自分たちの学習してきたことについても振り返ります。何を学んだのかという「内容」の面と、どのように学んだのかという「方法」の面、両方から振り返るようにできると、他の学習に生かすことができるようになります。

5. 単元の展開(2時間扱い)

 単元名: 自分だけの冬のよさを伝える、冬カルタを作ろう

【主な学習活動】
第1時
① 見通しをもつ
・教科書で紹介されている言葉から、「冬のことば」について想起する。
・「なかまのことばとかん字」の学習を振り返り、言葉集めの観点をもつ。
・学習のゴールを設定する。
・言葉集めの方法について検討する。

② 言葉集めをする
・図書室やインターネットの利用、さらには実際に外に出て探すことを通して、言葉集めをする。〈 端末活用① 〉
※ 端末の持ち帰りが可能であれば、授業以外の場面でも、自分が冬を感じる場面について写真で撮るなどし、言葉集めに取り組めるようにしていきたい。

第2時
③ カルタ作り
・自分が感じた冬のよさが伝わるようなカルタを作る。〈 端末活用② 〉

④ カルタの共有、学習の振り返り
・端末を活用し、全員の作品を共有し、交流する。〈 端末活用③ 〉
・互いの作品について、感想を伝え合う。
・単元の学習の振り返りをする。

全時間の板書例と指導アイデア

【1時間目の板書例 】

1時間目の板書例

イラスト/横井智美

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